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コーヒーは日本にたどり着いてようやく完成したんです。・・「コーヒーの鬼がゆく」より

北欧など浅煎りを好む国があります。

しかしそれはあくまでその国の嗜好であり、流儀に過ぎないと私は思います。
にもかかわらず、日本の珈琲業界は欧米のトレンドを先進的と捉え、付き従おうとしているように感じます。

ここは日本です。日本人には日本人の嗜好があり、流儀が在っていいと思います。

私は、珈琲について日本よりも欧米の方が進んでいるなどとは露ほども思いません。
日本は、焙煎技術も焙煎機の性能も、抽出技術も抽出器具も、そして珈琲文化も海外に対して決して見劣りしない、恵まれた国だと思っています。

欧米は日本よりも珈琲飲用の歴史が長い、それは間違いない。

しかし歴史が長い=優れている、とは必ずしも言い切れないことは、日本の自動車産業がそれを証明しています。日本の自動車産業は欧米に70年近く遅れて始まったにもかかわらず欧米に肩を並べています。

ところで、私たち日本人は素材そのものの味を楽しむ文化を持つ、そしてだしの繊細な味を理解できる、味覚的センスに恵まれた民族です。
ぜひ、その自負をもって、海外のトレンドに惑わされることなく、良質で豊かな味わいの珈琲をつくり、そして賞味していきたいものです。

フリージャーナリスト嶋中労氏の著書「コーヒーの鬼がゆく」の中に、以下のようなくだりがあります。

エチオピアに生まれ、アラビア半島からヨーロッパに持ち込まれ、さらにはアジア、中南米へ広まっていったコーヒーの文化。標の弟子、森光は「コーヒーは日本にたどり着いてようやく完成したんです。」と言ったものだが、なるほどコーヒーは日本に来て初めてブラックで飲まれ、混じり気のない、コーヒーそのものの味が賞味された。
※「コーヒーの鬼がゆく」中公文庫 嶋中 労著 P255より抜粋

とても腑に落ちるくだりでした。

追記:森光=博多の名店、珈琲美美店主、森光宗男氏(故人)のこと。吉祥寺の名店「もか」店主、標 交紀氏(しめぎ ゆきとし、故人)のもとで修行した。

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