見出し画像

成功するための要素のうち、才能なんてホンの一部

フリーライター&イラストレーターの陽菜ひなひよ子です。

「うちの子の絵、どう思いますか?」
と言って親御さんから、子どもの描いた絵を見せられるのは「絵描きあるある」かもしれない。少なくともわたしは相当数、経験している。

それはたぶん、こんな流れだ。

「うちの子、絵が好きでよく描いてるわね。もしかして結構イケてるんじゃない?そうだ、イラストレーターの知人(わたしのこと)に見てもらって意見を聞いてみよう」


絵描きに子どもの絵の才能はわかるのか


絵のいいところは、一瞬で見られることだ。少なくとも原稿用紙100枚分の原稿とか、運動会のビデオみたいに何時間もかかるというものではない。だから、見る方も気が楽といえば楽だが、見せる方もつい気軽に聞いてしまうのだろう。

しかしただ見るだけではなく、何か意見を言わねばならないのは、なかなかにハードルが高い。

わたしに聞いたところで何の権威も権限も信頼感もない。どんな絵が売れるかががわかるくらいなら、わたしが自分で描いている!と思うし。

何が売れるか、モノになるかなんて、大抵の人にはわからない。そもそも、ほんの小さな子どもの描いた絵で、目を見張るようなうまい絵に出会うことはまれだ。

「才能の芽」を感じることはあるかもしれない。でもそれが、売れることのすべてではない、と思うのだ。


天才は後天的に作られる


幼少時にすごい絵を描いていないと「才能がない」とか「プロになれない」かと言えば、そんなことはない。逆に、子どもの頃すごい絵を描いていたら「必ず画家として成功できるか」と言えば、それも何ともいえないと思う。

「天才」は早熟な人が多く、20世紀最大の巨匠、パブロ・ピカソは15歳ですでに大人顔負けの絵を描いていた。息子の才能に舌を巻き、画家である父ホセが筆を折ったとも伝わる。

だからと言って、子どもの頃すごく絵が上手ければ、誰もがピカソになれるというわけではないのはわかるだろう。

パブロ・ピカソ15歳の作品『自画像』(1896年)


ピカソは多作な上に長生きだった(※1)。習作も含めれば、膨大な数の作品を残している。ピカソが唯一無二の存在になれたのは、先天的に才能があったことはもちろんだけれど、誰の追随も許さないくらいの圧倒的な努力があったからだ。

白い肌に優美な細い線で人気のレオナール・フジタ(藤田嗣治)も、どんなに遅くまで飲んで帰っても、必ず寝る前に絵を描いたそうだ。彼はテーブルが小さすぎて大きな紙を広げられず、仕方なく半分ずつ紙を巻いて、上半分とした半分を別々に仕上げたそうだ。広げるとキチンとつながった絵になったという。日々の鍛錬の賜物だ。

藤田嗣治「カフェ(部分)」(1949年)注:上記の上下別々に描いた絵ではない


といっても、ピカソやフジタ自身は「努力」とも感じていなかったのではないか。ただ好きだから描いていた、だから上達した。それに尽きるのだろう。

※2)ピカソは、1万3500点の油絵と素描、10万点の版画、3万4000点の挿絵、300点の彫刻と陶器を制作。最も多作な美術家であると『ギネスブック』に記載


パブロ・ピカソ『ゲルニカ』(Guernica)ドイツ空軍による無差別爆撃がモチーフ(1937年)


絵描きの現実


絵でプロとしてモノになるかどうかは、当たり前だけど、子どもの頃の素養以上に、その後「どれくらい好きで描き続けたか」が大きいのだ。

特に画家にしろイラストレーターにしろ、売れるまでの生活は大変だ(売れてからも大変だけど)。相当好きでなければ続かない。

100万部売れた漫画家さんなどを基準に考えてはいけない。絵など「基本は儲からないもの」と思っておいた方がいい。

それを踏まえても、親御さんの質問の意図はどこにあるのだろう?子どもをわざわざ苦労しそうな絵描きにさせたいのか、ただプロの目から見て「絵がうまい」というお墨付きが欲しいだけなのか、私にはよくわからない。

聞かれたら、こう答える


だから
「ウチの子の絵、どうですか?」「絵の学校に行かせた方がいいですか?」
と聞かれたら、ほぼ100%こう答える。

「本人が好きだったら、やらせてあげればいいんじゃないですか」

本当にただそれだけ。

多少絵が上手くたって、本人が絵を描くよりサッカーやゲームやギターを弾くことが好きだったら、親が無理に絵を描かせようとしたって、モノにはならないよ。


おまけ:卵焼きのヒミツ


「好き」と同様に、必要に駆られる事でも能力は磨かれる

わたしは不詳の娘で、ほとんど母からほめられたことがない。でも今のオットとの結婚後、実家で母と同居していた頃に、珍しく母からほめられたことがある。
「よくそんなに薄く油を敷いただけで卵焼きがキレイに焼けるね」

わたしは笑って答えた。
「オット(※2)の闘病生活では油をできるだけ控えなくてはいけなかったので、少しでも油を少しで済むようにと毎日毎日工夫し続けたからかも。

働き盛りのオットや食べ盛りの子どもへの「栄養だけ」を考えていたら、もしかしたらこれは身につかなかったかもしれないね」

人は必要となればとんでもない力を発揮したり、すごく好きなことだからこそ夢中になってものすごい力を出したりする。

自分自身が心から願わなければ、そういう力って出ないものなんだよね。


※2)オットは重度のアトピー性皮膚炎で厳しい食事制限をしていた


もひとつおまけ・熟成下書き


本日の投稿、3年半も寝かしてたものだった!文が下手過ぎて、かなり修正入れたけど、自分が進化してるってことでよかよか。これぞ熟成下書き!

この記事が参加している募集

熟成下書き

もし、この記事を読んで「面白い」「役に立った」と感じたら、ぜひサポートをお願い致します。頂いたご支援は、今後もこのような記事を書くために、大切に使わせていただきます。