大学二年生、僕はずっとこの歪んだ社会に騙され続けていた。
楽しかった大学生生活、僕は女子として二年生になっていた。
相変わらず渋谷や六本木、横浜やディズニーランドなどへ女子として友達と行って遊びまわって毎日をエンジョイしていたが、時間もたっぷりあったので、学校の図書館にはよく行ってシェークスピアやヘミングウエイなど、世界の名著と呼ばれる本を沢山読むようにもなっていた。
そんな時、何となく社会科学のジェンダー論のところを見ていた僕に、ある一冊の本のタイトルが目に飛び込んできた。
「性の署名―問い直される男と女の意味」ジョン・マネー/パトリシア・タッカー著
何だろう? 本の題名に興味を持って、借りて読んでみることにした。
本を読み進めるうちに、衝撃の内容が書かれていることが分かった。
アメリカの双子の少年のうちの一人が、電気メスの事故でペニスが壊死してしまい、女性として育てられるというノンフィクションが描かれていた。
この事実は僕にとって、まさに青天のへきれきだった。
僕はずっと騙されていたんだ。なぜこれと同じことが自分の身に起きなかったんだろう…
春休みだったが、1週間寝られなかった。そして思った。
「僕は生まれてからずっと騙され続けてきた」そう思った。「生まれたときの外性器がすべてではない。僕は女の子で良いんだ」
僕はその後、チェックのミニスカートで学校に行ったりして、ますます女の子らしくなっていった。
しかし日本のその時代の現状はお寒いものだった。性同一性障害という言葉もまだない時代だった。~続く~
※この本の中で描かれた少年については、「ブレンダと呼ばれた少年」という本で、大人になり事情を知った彼女が最終的に男性に戻り自殺したと書かれている。でもそれは脳の性別がその人の性別を決めるという意味で性同一性障害を否定するものではないと思っています。
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