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乾いた人生に5色の薔薇を添えて⑦

今までだったらグループで新しく活動できる場が決まった時、5人へ平等に祝福する事ができた。ソロでのお仕事だって、グループの一人に興味を持ってもらえたら他のメンバーのことも調べてくれるかもしれない、将来の活躍の場を広げてくれてるんだと思うと感謝しても仕切れなかったし、さも自分がメンバーの一員であるかのように喜んでいた。

大好きな彼が活動休止してからもしばらくはそう思っていた。いつの日か戻ってきてくれるそのときに、ちゃんとお前の分も空けて待ってたんだからなとメンバーから歓迎される想像ができた。そういう気持ちで辛い状況の中でも奮い立たせて今も各々頑張ってくれているに違いない。

でも、私の心は次第に彼らの姿を見る事に耐えれなくなっていた。他のメンバーの名前は呼ばれるのに、なぜ彼の名前はそこにないんだろう。本当なら同じ舞台に立って、ここで他のメンバーから弄られて、ひと笑いが起きるのに。ここにいるメンバーのファンはいいよね、本人の姿が見られて。目に焼き付ける事ができて。声が聞けて。彼が歌うはずだったパートが他のメンバーに振られて、ソロで抜かれる場面が増えて。今日の推しカッコ良かったって盛り上がれて嬉しいよね。私もほんの少し前まではそうだったからわかるよ。でも推しを心から応援できるファンが羨ましく思い始め、そんな荒んだ自分の心が鬱陶しくて、彼らを見るたびに自分で自分の心を締め付けているように感じた。大好きな彼はそんな事を望んでいないのに。

彼がいない状態でのアルバムの発売が決定した。前述した通り、今までの私だったら何も考えず全形態を購入していた。今回は気軽にお迎えするのが憚れた。どのアルバムを聴いたって、どの映像を見たって、彼を探すことはできない。むしろ、今回のアルバムで心機一転、彼なんか存在しなかったかの如く楽しく振舞っているのかもしれない。お金を払ってまでそんな姿を見るべきなのか、悩みまくった。

いつも彼らのアルバムやDVDが発売するときは、妹に報告し、買ったら一緒に見ようねと約束していた。今回ばかりは私からの報告がなくおかしいと思ったのか、妹の方から声をかけてくれた。私の悩みを聞いてくれた妹は、

もし、聡ちゃんの面影が全くなかったら、このアルバムを彼らとの最後の思い出の1ページにすればいい。逆に少しでも聡ちゃんを感じる事ができれば、見て良かったと思えるし、買って損はないと思うよ。お姉ちゃんにとって少しでも素敵な時間をくれたんなら、最後だとしてもみんなに感謝はしないといけないよね。

と、どこぞの大人のお姉さんのような回答をしてくれた。

この言葉が背中を押してくれて、アルバムを迎える事ができた。

最後の思い出の1ページにするにしても、彼らとの出会いを感謝するにしても、「PAGES」はとても素晴らしいタイトルだった。


続く

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