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本当にあった怖い元カノ。①

その日、私は不機嫌であった。

夏の暑さのせいではない。
大学生であった当時の彼女と大喧嘩をして、別れを告げたところであったからだ。

喧嘩の原因は覚えていないが、彼女の浮気症な点から不満が募り爆発してしまったのだと思う。
当時の彼女は複雑な家庭環境や若さ故のことか、寂しがり屋であり感情的に物事を判断しがちであった。

私はとにかく彼女が大好きであった。
常に一緒に居たかったし、学生で金も無いのにやたらとプレゼントをしたり、食事代や旅費代など全て自分持ちである事が普通であった。
彼女しか見えておらず友人関係を蔑ろにしてしまったが故に失ってしまった友人もいるくらいだ。

今思えば、その歪んだ愛情も彼女にとっては負担だったのかも知れない。
そんな彼女に別れを告げたのだから、不機嫌に決まっている。

日が沈んで暫くすると彼女から電話がかかってきた。

「今から会えないかな?」

かなり悩んだが、彼女が大好きだった私は承諾して車で彼女の家に向かった。

家に着くと彼女が家から手荷物を持って出てきて、助手席に乗り込んだ。

私「なに」

彼女「ごめんなさい。」

私「…。」

彼女「別れたくない。」

私「…。もう無理だよ。」

彼女「やだ。」

こんな会話が数回続いた。
私自身、彼女の事は好きだったが彼女と一緒にいる自分は嫌いだった。
恋愛だけでなく全てが悪い方向に向いている気さえした。
しかし、いざ目を潤ませている彼女を目の前にすると平常心は失われる。

私は彼女をそっと抱きしめた。
その瞬間、彼女は泣き崩れた。

別れない事になり、これからまた新たに仲良くやっていこうと次のデートの約束をして解散する事になった。

私「じゃあ、またね!おやすみ!」

彼女「うん!ありがとう!仲直り出来て良かった…。」

次の瞬間、
彼女が車から降りると同時にドアポケットから出刃包丁を取り出した。
彼女が持ってきた手荷物は、新聞に包まれた包丁だったのだ。

テレビ番組でしか聞いたことのない刃の擦れる鋭い音に戦慄し私の身体は硬直した。

私「あぁ…。ははぁ。」

彼女「^_^」

彼女は家に戻って行った。
私は慌てて帰路に着いた。

あのまま別れていたら、彼女は本当に私を殺すつもりだったのか。
しかし、それも愛情の裏返しなのか?
それでも私は彼女が好きだ。

人は恋をすると判断能力がチンパンジー並みになるという研究があるが本当にその通りであると思う。

それからも、チンパンジーとメンヘラの恋は暫く続くのであった。

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