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【スケジュール作りのヒント】練習には様々な方法があります。

 子どもと関わる方は特に、生活面や学習面での様々な「習得」に対する支援をしているかと思われます。ここではそれを「練習」と呼ばせてもらいます。

 練習についてお部屋の環境やご褒美の準備など、日々設定について悩まれているかと思います。今回は練習自体についてもう少し掘り下げて知ることで、設定のアイディアを引き出しやすくなるのではと思いまとめようと思います。お遊戯会や運動会などの練習の前に知っておくと便利ですよ。

練習の方法の種類

練習の方法は3つあります。

・全習法(whole method)
・分習法(part method)
・累進的分習法

全習法とは

運動(課題)が一連の動作からなっている場合に、その全ての動作をひとまとまりにして最初の動作から最後の動作まで練習し、それを繰り返すこと。

100m走の練習で考えると、
 全習法はスタートからゴールまでの100mを走る練習をする。

分習法とは

運動(課題)が一連の動作からなっている場合に、その動作内の1つの動作を別々にして練習していくこと。

100m走の練習で考えると、
 分習法はスタート、腕ふりの練習、助走と加速などと分けて練習をする。

累進的分習法

全習法と分習法との組み合わせで動作をつなげていくこと。

100m走の練習で考えると、
 累進的分習法は、スタートから上体を起こしてから腕ふりを意識して走るなど動きの要素をプラスしていきながら練習する。

 漢字の練習も1つの文字として覚える前にへんやつくりに分けて書くことで最後に1つの漢字として書けるようになりますよね。

練習のペース

練習の方法がわかれば繰り返しを行うのですが、そのペースにも名前があります。

分散法(分散練習)
一定の練習毎に休憩を挟みながら練習を繰り返す方法。

集中法(集中練習)
休憩を挟まずに練習を連続する方法。

 分散練習の方が効果が高いと言われています。レミニセンス効果という現象があり、練習を終えて一定時間が過ぎるとパフォーマンスが上がるというものです。もともとは運動ではなく、記憶や学習にも使われている用語です。
 人は寝ることでいる記憶といらない記憶を整理すると言われています。記憶の定着には睡眠が必要で寝る前の30分前の学習は効果的と言われているように、レスパイト(休憩)は練習に必要な時間とも言えます。

繰り返した練習の先

 何度も練習を行い、習得したものはずっと繰り返しておかなければ忘れる物なのでしょうか?
 自転車や縄跳びなどは冬の期間に乗らなくとも、春になるとまた同じように乗ることが出来ます。始めは少し不慣れになってしまう方もいるかもしれませんが、自転車のサイズや種類が変わったりしても乗れるものです。
このように違う課題に対しても、それまで学習していたことが学習獲得の促進の役割を果たすことを正の転移と言います。
 逆にそれまで学習していたことが学習獲得の阻害になることを負の転移と言います。

 例えるとピザを10回言った後に「ひじ」が言えなくなるかのような、
野球選手が他の技の投球をすることでストレートがうまく投げられなくなった等がわかりやすいでしょうか。

学習への手助け

 練習を繰り返すなかでパフォーマンスが向上したり、そうでなかったりがあり、同じ動作でも「ただ繰り返しているわけではない」のが誰しも実感があるかと思います。
これは目標の動作があって、それに対する実際の動作との比較が結果として把握されることで、次の練習の際に改善をすることが期待できます。
1人で練習を行う際には身体や記憶の感覚からその結果を導いていくことができます。これを内的フィードバックと言います。
一方で他者が言葉などで結果を評価して、改善点を見出すことを外的フィードバックと言います。

 この外的フィードバックですが、与える情報として結果の知識パフォーマンスの知識というものに分けることが出来ます。

結果の知識はさらに、2種類の情報に分かれます。
「正解/不正解」「上手い/下手」などの質的な情報で与えるのが質的フィードバック、目標と実際の動作の違いを量的な情報で与えるのが量的フィードバックと言います。
 この2つの情報を使った研究では量的フィードバックを与えた方が、高い練習効果が見られたという。しかし、量的フィードバックの精度が高すぎると効果は見られないというのも知られている。質的フィードバックも同様で、細かく表現をしてしまうと練習を阻害する結果になるそう。
 そのため、関与している要因間のバランスに見合った適切なレベルで情報を与える必要があるようだ。

パフォーマンスの知識とは課題遂行のプロセスであり、動作や生理的状態の変化をビデオや他の記録物でみることで情報としてとらえることになります。上手な手助けができる人はこれを言語化して、練習者に伝えることで更なるパフォーマンス向上が期待されるでしょう。


まとめ

何かの練習・学習を行いたいときの計画時に注意する点は

・フィードバックする際の情報量を考えて、練習の方法の種類を選ぶ。
・習得したい目標のイメージを教える側とする側で共有しておく。
・内的フォードバックを聞いて、それに対するレスポンスとして量的フィードバックをしたり相互的な関係づくりができる環境を設置する。
・休憩をあらかじめ設定してレミニセンス効果を取り入れる
・トークンなどの報酬・ご褒美は質的フィードバックにあたるため、制度を高めすぎずに設定する。

 ややこしい言葉も多くあったかもしれませんが、知識として持っておくと振り返りやすいものです。
ぜひ、夏休みをレスパイトと考え、支援のパフォーマンスを向上させましょう。


お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。