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あなたのファンタジーは内から?外から?


小説を脚本化してネームを作る

 自作の物語を漫画にする。キャラクターにはだいたい手をつけたので、第一話のネームを作って、必要になる背景とか小道具とかモブを洗い出していこうと考えた。

 ネームを作るためには、小説をシーンごとに切り分けていく必要がある。全て文字で表現した情景やキャラクターの独白を、絵画表現として象徴的に落とし込んだり、ダイアローグとして起こしたりするのだ。

 さも知っているかのようだが、全てロバート・マッキー氏の受け売りである。マッキー氏が映画・脚本制作について言及したことを、全部「漫画」に置き換えている。マッキー氏の三部作の重要性は語り尽くせない。物語を作りたい人で、映画もよく観る、という場合はとてもおすすめできる。

 先ほどフィルムアート社のサイトを見に行ったら、2024年7月18日現在、三部作セット購入で20%OFFらしい……!

 脚本を書くにしても、ネームを書くにしても、ほとんど初めて取り組むことにはあまり根を詰めすぎないほうがいい。脚本化に三時間、ネームに三時間くらいの工数でざっくり作ってみた。

左が脚本、右がネームの前段階のラフなネーム

 第一話は、小説の第1章として2万文字弱書いた中の、4分の1を取り出した。ちなみに、物語は全部で32章まである。単純計算すると100話超えるね。

連載完了までの期間を概算してみたくなる。

1話・・・40p (第1話のネームから概算)
1章 x 4話 = 4 x 40p  = 1章に必要なページ数 160p
32章 x 160p = 全話に必要なページ数 5120p
【妄想】自分が新人漫画家だったとしての原稿料 一枚5000円
【妄想】漫画家として稼ぎたい想定給料 一ヶ月 40万円
【妄想】一ヶ月に仕上げなければいけないページ数 40万円 ÷ 5000円 = 80枚
【妄想】連載期間 5120p ÷ 80p = 64ヶ月(5年と4ヶ月)
……おお。なんかちゃんとした連載漫画家っぽい現実的な数字が出た。

 一ヶ月で80p描くということは、1日3p前後仕上げる必要があるということであり……次の話の脚本とネームも考え続けるということであり……。漫画家って大変だ。

進んでみて、わからなくなったら戻る

 ネームまで描いてみて、さらにもうちょっと詳細なネームを起こすところになって、なんだか描きにくいなと感じ始めた。ああ……、これは、第一話の事件が起こるお城全部の地図を把握しないと進まないやつだ。

 小説を書いたときは、描写に必要な方位とか高低差とかを考えればよかったので、スケッチ程度でよかった。今度は省いたところ全てとまでは言わないにしろ、ある程度説得力のある絵に起こす必要がある。最低限、迷いなく描き進めるだけの材料は整えたい。

 『薔薇の名前』のウンベルト・エーコは、小説を書くために、修道院の間取りを実際に歩いた時の距離感含めて詳細に詰めたり、船の模型を作ったりしたらしいから、背景設定はどれだけこだわってもこだわりすぎることはないのだろう。

地図を完成させる

 もうちょっと詳細なお城の地図作ってみますか? と考え始めたけれど、なんかまだちょっとモヤモヤする。そういえば、小説を書き始める前も世界地図を作っていたけれど、書き進めるうちに細かく設定が変わって、その分を地形に反映してなかったな……。なんなら、世界地図から直すか……。

 物語を作るにおいて、ファイルボックス2個分になった紙の束をふたたび紐解いた。最初期に作った地図たちが出てきた。

各地域の地図

 ちょうど一年前だ。地図を作ったのは。同じ季節に再び地図を作り直すことになっている。次は物語の付属資料として、人に見せられる精度まで完成させるところまで仕上げよう。

RPGの地図萌え

 ファンタジーを作る……ってことは地図か。という思考回路にまずなる。世界地図作成の精神的ハードルが低いのは、すでに作ったことがあるからだ。それも小学生くらいのときに。RPGの世界が好きすぎて、そこで生きたくて、攻略本に載っている地図を眺めるだけでは飽き足らず、自分でもいろんな地形を妄想したものだった。岬を竜の形にしたり……意味深な島を作ってみたり……。

 20年以上前のゲームは今ほどグラフィックも高精細じゃなく、没入感とかそういう単語さえなかったけれど、かえって空想が逞しくされた。間違いなく自ら積極的に没入しに行っていた。

テーマによって、世界観の出発点は変わる

 物語を作るとなったとき、「絶対にこうしたい」というものがあった。私が物語を作る本来の意味にまで直結しているものだ。これが成立していないともはや作る意味すらない……外堀を埋めるところから出発した。そこがまず私の創作態度を唯一無二にしているし、一方で「枯れて」もいる。ブレてはいけないし、他人に影響されてもいけない部分だと思う。

 だから、よりたくさんの人に読んでもらえるかもしれない設定とか前提はこの時点で大部分切り捨てられた。逆に、どんなに陳腐化されていようとも採用しなければいけない設定は何がなんでも使う必要があった。

 私が絶対に採用しなくてはいけない世界観とは、以下である。

  • 人類が最高潮に繁栄したのち、完膚なきまでに滅んだ世界

  • 人類の復興と同時に太陽が7つできた世界

  • 専制君主制

 上の条件が、私の物語を作る上での土台であり基準になっている。この条件を満たす世界とはどんなものか? そこで生きる人々はどういう人たちか、そこで生きるということはどういうことなのだろうか? 

 すでに知っているから書きたいというより、知りたいから作る、という感じだ。上の条件で言えば、太陽が7つある、というのが気候条件的にも人間生活的にも一番あり得ない要素だけれど、これがあるおかげで、ただの終末論的物語から一歩飛び出せる発想をたくさんもらえた。

外側の条件と、内側から湧き上がる思いで作る

 今にして思えば、ストーリーを小説のままにしておかないで漫画にするという試みはいい選択だった。再度制作の振り返りができ、ブラッシュアップができ、過程を発信することができるからだ。

 ありえない条件下で生きる人々のドラマを作りながら、割と常に考えていたことは、「人間性は世界環境によって完全に変化するのか?」ということだった。先に答えを、今風? に言えば「有り寄りの無し」なんじゃないだろうか。

 例えば男性を書く時、女々しさを肯定する表現をしたし、女性を描くときは自立を強調した。私が解釈するちょっと先の人間の姿を精一杯妄想した結果そうなった。マイノリティはマイノリティとして、今後劇的に男女の構成比を変えるかと言えば、必ずしもそうではないだろうという解釈も反映させている。
 必ず変化していくであろう部分を書くと、それでも変化しないであろう部分も見えてくる。

 ここで見方を変えれば、人間性に対する考察はどこからくるのか? ということだが、紛れもなく私自身の経験をもとにするしかない。
 外側にがっちりある世界観と、内側から湧いてくる「こうあってほしい」という思いのダブルブロックに揉まれながら創作は続く。


 何者でもないアラフォー女性、創作のステージはいよいよ漫画制作へ!

 作品を作り続けるための全努力をマガジンにまとめています。少しでも面白いと思っていただけたら、スキ&フォローを頂けますと嬉しいです。

▼導入記事

小説メイキング集(2024年2月リリースの記事)


ちょうど一年前に取り掛かっていた、物語を作る前段階の作業。

▼まだこの頃は、プロットとかしゃらくせえ! と思っていた。

▼執筆開始時の色々な不安と格闘した記事


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