冒険ファンタジーでも戦闘シーン、軍事作戦は回避したい
物語で描きにくいシーンをどう書くか
前の記事で「スランプ」は何種類かあると書いて、一度投稿した後、「本当はそんなシーン書きたくない」というケースも後から追加した。
私にとってのスランプについて自己分析してみたら、この第4の要素がそれなりに大部分を占めている。
書きたくないシーン、書けないシーン、書く技量のないシーンをどう書くかは、作者にとって大きな壁だと思う。この壁を乗り越える方法は人によって様々だが、私が思い浮かぶのは以下の4つになる。
勉強する・・・直球パターン。心底書きたいけれどまだ知識や描写力が足りていない場合は研鑽を積むしかない。
スケールダウン・・・物語を自分ができる範囲まで小さくしてみる。
視点を変える
見せない。想像させる
できることなら2は最後の手段にしたい。3と4については、案外このパターンで成功している名作は多い。というか、作者と読者の想像力がマリアージュした時には、作者が書いた以上のことを読者が「見た」気になるというのが、創作の醍醐味かもしれない。自分がそんな大作家かどうかは別として。
カズオ・イシグロは「見えない向こう側にある物語」を想像させる巨匠だと思っている。映画版はアンソニー・ホプキンスの存在感が全てを語っている気がする。
テンダー・マーシーは、主人公のバックグラウンドについて、回想シーンが入るわけじゃなく、セリフの端々に散りばめられているだけなのに、観終わる時には観客が彼について十分に「知ってる」気になる。
どう書くかよりも、本当に書きたいか
ここで言いたいのは、方法論はいくつもあるので、そもそも、書きにくいと思っているシーンを、自分が本当に書きたいのか、書きたくないのかを吟味するほうが、無駄な努力をしなくてすむ。自分が本当に知るべきことに注力し、創意工夫が活かされた妙にリアリティのある作品が作れるのではないかと期待する。
今日のテーマに戻る。私にとって書きにくいシーンとは、ファンタジーにおける戦闘、体術、武器、武力、軍事力、軍事作戦といった題材だ。
今回計画した物語を書くにあたっては、味方の勢力と対抗勢力とのぶつかり合いが必要になる。序盤1/3を書くなかで、ぶつかり合いを予見させる取っ組み合いのシーンを書くことになった。取っ組み合いなんて、小学生の時の姉弟喧嘩以来していない。戦記物もまるで読んでない。MARVEL作品もそそられない。「レ・ミゼラブル」の後半あたりに、長大な戦争シーンが描かれるのもほとんど白目を剥きながらやっと読んだ。ハリポタも主人公を襲う運命が苛烈すぎて途中で挫折した。
自分が取り組むときになって、薄々不安になってきた。この先もっと発展させた戦闘が書けるんだろうか……。
戦争、戦闘、軍事についてのごく浅いリサーチを経て、結論づけた。私はどんな美談であっても暴力は好きじゃないな、と。
冒険ファンタジーから戦闘を抜く。この決断は、アニメやRPGの世界に大きく影響を受けた自分には発想の大転換が必要だった。
リサーチのなかで読んだYahoo知恵袋の記事では、「ファンタジー作家になりたい」という質問者に対して、有無を言わせず各国の戦闘スタイルを網羅したHPのURLを教えている解答者がいた。つまり、ファンタジーとくれば戦闘とイコールで結びつける読者層は、確かに存在するのだ。
もっと裾野を広げれば、戦いばかりではないファンタジー作品も山ほどある。
ただ、ここでは私にとっての「戦闘」にあたる、書きたくないことを真っ向から回避した作品を書いていていいものか。激しい対立が約束してくれる盛り上がりを作れないのも、なんだか損をしている気がする。つまりは「2.書きたい世界観のスケールダウン」を極力避けつつ、自分にできることをしようと思った。
「書きにくいこと」の周辺にあるモチーフに着目してみる
私も拙いながらも巨匠たちを見習って、「3.視点を変える」「4.見せない。想像させる」という手法を探求することにした。
そのためには、ここでいう「戦闘」の周辺にある、「戦闘」が副次的に生み出すモチーフの中にキャラクターを置くことで、力のぶつかり合いを書いているように見せられないかと考えた。
調べていくうちに色々なキーワードを学ぶことになったし、今までとっつきにくかったテーマを扱った資料にも手を拡げることができた。例えば以下のようなキーワードである。
行軍(前線までの徒歩や車両による移動のこと。Wikipediaで調べるとなかなか奥が深い)
科学者にとっての軍事研究
外交(戦争は外交問題の発展形、最終手段だとも言われることから)
そもそも貴族って何?
煙、闇、炎(ぶつかり合うことによって生まれた効果で戦闘現場とキャラクターを阻むことで、暴力の描写は避けつつ緊張感を伝える)
今回の作品で全部のキーワードが拾えたわけではないが、戦闘を描かないファンタジー世界で極限状態をどう作り出すかは引き続き研究していきたい。
次回は、仕事を辞めたいと悩み始めてから、決心するまでのことを書きたい。
お読みいただきありがとうございました。
何者でもないアラフォー女性が、35万文字の物語を完成させるためにやった全努力をマガジンにまとめています。少しでも面白いと思っていただけたら、スキ&フォローを頂けますと嬉しいです。
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