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本と活字と紙の狭間で ~自費出版アドバイザーの独り言~(4)

(前回続き)

 自費出版を共同事業として持ち掛けた先は、地域の同業者組合。その例会に乗り込んだ。

 地域の限られた印刷物というパイを価格競争で獲りあっていては、いずれ共倒れになってしまう。新たな印刷物を開拓するのであれば、〝自費出版〟という手法を考えてみてはどうかという提案書というか企画書を提出したのだが、その場ではよい案だと言ってもらったものの、では参画しようという色よい返事をしてくれる同業者はいなかった。


 そもそも印刷会社の規模はまちまちで、ページ物(書籍など)に長けたところ、名刺やパンフレットなどのペラ(1枚という意)物を専門にしているところ、小型の印刷機で家族経営しているところ、シール印刷専門のところ、というように業務内容も多様だからだ。ましてや経営者が年配ともなると、新たなことに手を出すよりも経営の現状維持が精一杯だというのも理解できた。

 自費出版=書籍であり、印刷会社といえども多少なり編集を要するのだから、その分野を担える人材が確保できなければ無理な話でもある。

 いくら自費出版ネットワークの理事という肩書を持っていても、経営者でもない営業の、それも平社員の戯れ言と思われたのかもしれない。


 『……んなもんだよね。』と思ってはいたが、少し凹んだのは確かだった。

 実のところ、数年、いや数十年かけてもよいから、長野県の中信平を中心とした〝自費出版文化地域〟を作りたいなどという大それた野望も頭の片隅にあったのだ。ナンテ無謀な。

 でも、引き下がらないぜ! と、比較的若い経営者方に直接声をかけて(いや、巻き込み?)、松本市のアサカワ印刷さまと安曇野市の第一印刷さまと電算印刷の3社で「Book Cafe実行委員会」なるものを立ち上げることができたのが、約4年前。

 そういえばイベント準備の時、第一印刷さまの会長から「平社員からこういう声が上がってくることが素晴らしい。」というお言葉をいただいたのだが、『イエイエ、頭の片隅で単なる野望が吠えているんです。』とは言えなかった。

 自社の実行委員会メンバーには同僚の中でもイベント企画に長けたY氏と、印刷の神様のように色々な知識を持つN氏を指名し、松本市に隣接する山形村にある商業施設で、親子連れをターゲットにしたワークショップを客寄せの手法として、無料自費出版相談と日本自費出版文化賞の歴代入賞・入選作品の展示というイベントの開催にこぎつけた。


 複数の会社とそれぞれの担当者。やはり人数が増えるとアイデアも意見も活発に出てくるのが嬉しかった(コレだよ、コレ)。何よりも〝同業他社が協業する〟いや〝協業できる〟ことが一番嬉しかった。

 ライバル会社を蹴落とすばかりじゃなくて、印刷文化・印刷業界を守るために協力し合おうよ。組合とか儀礼的なことじゃなくてさ。……ずっとそう思っていたから(営業職の意識としてはポンコツかも知れないけど、しょうがないじゃん、DTPの現場あがりだし、本と活字のオタクだし)。

 協業というからには、イベントを介して受注した案件の利益はきっちり分配するのが決まりなので(年間の事業費は徴収するけれど)、今でも協業してくれる同業者がいれば、どんどんと名乗りを挙げて欲しいと思っている。

 残念なことに、イベントを陰から覗きにくることはあっても打診してはくれないのだよ、これが。


 そうして順調に数回のイベントを重ね、相談案件は100パーセントの受注率だったのだが、新型コロナウイルスに阻害されることになるとは思わなかった。

 集客するイベントの開催ができない間は自費出版セミナーの開催で凌いできたのだが(セミナーについてはまたその内に)、ようやくまん防が解除されたことで、2022年4月23日(土)に久々のイベント開催!


 ということで、イベント会場はいつもの山形村の商業施設なので、何処なのかわかる近隣の方は覗いてみてね。


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