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オフィスひめの通信 42号

執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2014年6月

ー攻撃の連鎖を止めるビタミンCー

 渇いた草原に火の手が上がったら次々に延焼して一面焼け野原になってしまいますね。でも、草原のところどころに防火のための空き地があったり水たまりがあったりすれば、そこで火の延焼を食い止めることが出来ます。
 体の中では火種にあたるのは炎症物質や活性酸素です。特に活性酸素は日常的な活動でいつも発生しています。
 活性酸素は非常に高いエネルギーを持ち、接触した物質の電子を奪ってラジカルという危険な物質に変えてしまいます。活性酸素に当たった細胞や細胞小器官の膜、たんぱく質は簡単にラジカルに変えられます。そしてラジカルになった分子はまた隣り合う分子をラジカルに変え、ラジカルが広がって  いきます。ラジカル連鎖反応です。
 体の中では、抗酸化物質や抗酸化ビタミンがラジカル消しの役割をしています。特にビタミンCは、攻撃され電子を奪われても自分自身はラジカルに なりません。残りの電子が協力し合って攻撃性を弱め、そこで連鎖反応をストップさせます。
 抗酸化物質や抗酸化ビタミンには、それぞれ得意な持ち場があり適材適所で攻撃から生体を守っています。

  • ビタミンE・・・酵素のたくさんある膜や脂質

  • カロチン・・・低酸素の膜や脂質(特に網膜!)

  • 尿酸・・・細胞外の水溶液中

  • ビタミンC・・・細胞内の水溶液中

  • コエンザイムQ10・・・ATP産生の場所(心筋や肝臓に豊富)

 活性酸素に出会って傷ついた抗酸化ビタミンたちは、他の抗酸化ビタミンに救護を求めます。そこでまた再生され任務に戻るのです。
 憎しみを憎しみで返し、攻撃を攻撃で返していたら攻撃の連鎖は止まりません。ビタミンCのような大きな愛で攻撃の連鎖を止めたいものです。

『憎悪は憎悪によって消え去るものではなく、
               ただ愛によってのみ消え去るものである』  

       (サンフランシスコ講和会議
            スリランカ代表ジャヤワルダナのスピーチより)


ー副腎疲労症候群とビタミンCー

 ストレス社会と言われる現代!私はストレスを感じていないと思っても、不規則な睡眠時間や仕事、深夜のスマホやパソコン・インターネット作業は体にとってストレスになります。
 慢性的なストレスや持続的なストレスはホルモン産生器官の副腎を疲労させます。副腎疲労が悪化すると、

  ● 疲れやすく、日常の生活がしんどい
  ● 朝布団から起き上がることが出来ない
  ● 立ちくらみがする
  ● 集中力や記憶力が低下・イライラしやすい
  ● 気分が落ち込む。会社や学校に行けない

などの症状につながります。風邪をひきやすかったり、花粉症やアレルギーがある人も副腎が弱っている可能性があります。検診程度の検査では診断がつかないので周囲からは「怠け」と言われ自分自身を責めたりしてしまいがちです。そんな弱った副腎をサポートするのがビタミンC!
 副腎には血液中の濃度の約150倍ものビタミンCが存在します。副腎が疲れているかなと思ったらビタミンCをしっかり補給しましょう。

宮澤医院「副腎疲労外来」より


ー検査値のここに注目! 尿酸値…高くても低くても要注意!ー

 お酒を飲み過ぎた翌朝に足の親指の付け根が痛くなって痛風と診断された方いませんか?痛風の原因となる尿酸はプリン体の代謝産物、そしてプリン体はDNAやRNAなどの核酸の材料になる物質です。
 プリン体の多くは再利用され一部は肝臓で合成されます。尿酸値が高い原因には代謝の異常・再利用の障害や尿中への排泄障害があります。尿酸濃度が急激に変化する時に痛風発作が起きやすくなります。単に食べ物からの摂り過ぎではなく複合的な要因です。

  • 代謝・再利用障害:インスリン過剰分泌やアルコール、ビタミンB12・葉酸欠乏

  • 尿への排泄障害:飲酒や運動による乳酸の増加など

  • 酸化ストレス:活性酸素の発生、抗酸化物質の不足

 健康のためにする運動も、急激に始めたりATPや酸素の供給が不十分な状態で続けると痛風発作の原因になるので要注意です。インスリンの過剰分泌も尿酸上昇の原因になります。個人差がありますが、糖質制限食により高かった尿酸値が下がった方もいます。尿酸値が高い場合、ただ下げるのではなく根本的な原因を解決することが大切です。
 他の動物が尿酸をさらに分解出来るのに対し、ヒトは尿酸を分解することが出来ません。ヒトがビタミンCを合成出来ないことと合わせて考えると面白い側面が見えてきます。尿酸には抗酸化作用があります。尿酸値を上昇させることによって酸化ストレスから身を守っているのでないか?と思われるのです。
 ですから、悪者と思われがちな尿酸値も低すぎる(目安として3未満)と要注意です。尿酸による抗酸化作用が不足している場合があります。尿酸値が低い方はビタミンCなどの抗酸化ビタミンをしっかり補って抗酸化作用を高める工夫をしましょう。


※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。

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