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第四十七話 チンピラのお仕事

私は最初に売人を始めた頃はどちらかというとカタギに近い感じであったが、自然と準構成員といった感じになっていき、色々な組の仕事をするようになっていた。一般的にチンピラと言われるヤクザの末端組員は何をしているのかを少し話していきたいと思う。私の場合は売人の仕事を上手くやっていて、上の人たちを稼がせていたので上の人たちからも可愛がられ、金回りも良く立場的にはいいポジションにいた。私と同じ年の組員もいたのだが、物覚えが悪くシンナーの売人もろくにできないいわゆる本当のチンピラだった。堅気に前ではカッコをつけているが、上の人にはいつも怒られていて、金もいつも持っていなかった。Ⅰさんの舎弟なのだがⅠさんが小遣いをやっても薬を買って金がすぐなくなってしまう。私もよく金を貸したものである。帰ってきたためしはないが。

そういった自分のシノギを持たない下っ端組員は組の雑用のような仕事をさせられる。組の幹部の人が経営しているキャバクラやスナック、風俗店で働いたり、シマウチの飲食店や風俗店にカスリ(みかじめ料の事)を集金しにいったり、何かトラブルの連絡があればとりあえず現場に向かったり、もちろん事務所当番だと掃除も隅から隅までキレイにしなければならない。あとは誰かの仕事を手伝って小遣いやバイト代を貰ったりもする。私も忙しい時は薬を売るのを手伝って貰ってバイト代を払ったりもしていた。そうすることはお互いにとってプラスなのである。

たまに報道番組などでヤクザのみかじめ料の問題が取り上げられることがある。みかじめ料は払ってはいけない等と言ってはいるが実情は99%の店が払っている。残りの1%はヤクザがやっている店だ。つまり100%の店がみかじめ料は納得の上で払っているのだ。払いたくないなどごねる店はまずない。

カスリ(みかじめ料)は店によって金額も違うが、ほとんどが数万円程度であった。売り上げが厳しい店などはカスリは大きな負担になる場合があるが、ほとんどの店はキッチリ集金日に払っている。カスリを払う理由は、その組のシマウチで営業させてもらうという意味と、用心棒代のような意味合いであった。もし店で酔っ払いが暴れだしたり、他の土地のヤクザや不良が来てトラブルになった時に話をつけて貰うためだ。

たまに出るカスリ問題は、実際には組と店の問題ではなく、組と組の問題なのである。A組のシマウチでA組が面倒を見ている店に、B組がちょっかいをかけてきてB組にカスリを払うように店を脅す。もちろんA組とB組の話合いになるのだが、話が決まるまでは店もB組から嫌がらせをされA組もあまりやりすぎると抗争に発展してしまうため慎重になる。すると店はどうにもならなくなり、警察に駆け込むといったことはたまにあった。ただその程度の事では警察も本腰を入れて取り組むわけではないし、パクられ要員の逮捕者を出して、それでこの件は上手くやれよといた具合になってしまうのだ。

こういったつまらない案件の場合のパクられ要員にもシノギの無いチンピラが行くことが多かった。もっとも私が世話になっていた組は大きな組織に属していない小さな組だったので、抗争のようなものは私は経験したことはなく逮捕者も薬物の使用・所持が主だった。そういった時にも留置場へ差し入れに行くのも下っ端の役割だった。面会は回数が決められているため、弁護士の先生や幹部の人が行くことになっていた。差し入れとは着替えや雑誌やタバコや現金である。今は変わってきたらしいが、当時は運動という時間があって一日2本までタバコを吸うことが出来た。あと留置場ではおやつを買うことが出来るので現金が必要になってくる。

私も何度か留置場にはお世話になったことがあるが、少年法があるので成人者と比べると罪が軽すぎる。私は薬物では捕まったことはなく、シンナーや、傷害、無免許くらいだったので、鑑別所や少年院に入ることはなく保護観察という処分で済んだ。月に一回保護司さんのところに会いに行き近況報告するのである。引っ越しなどは勝手にすることは出来なくて、手続きをして引っ越し先の保護司さんを決めてもらう必要があった。

今回はチンピラがどんなことをしているのかを簡単に書いてみました。当時16歳~18歳の頃の話ですが、金がどれだけ大切かという事を思い知らされた期間でもありました。金があれば好きな事が出来、女もいくらでも寄ってきて、金がない奴は年下にアゴで使われて惨めな思いをしていました。

次回は売人をやめるエピソードを書きたいと思います。若いながらに色々と悩んで出した結論でした。

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次回に続く

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