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受心した青年のこころ④アルバイト


夫は専門職の会社に勤めている。

お給料は残業込みの固定給。しかし普段から残業が多く、残業は社員によってかなり差がある職種だった。人のいい夫はつねに他人のぶんまで働いて残業してきた。

そのかわり、というわけではないけれど、週に2日まで(土、日も含めて)、休みの扱いにならずにアルバイトが認められていた。これも、行かない人もいれば2日ぶんきっちりとアルバイトに行く人もいる。

夫は平日1日と週末の数時間をアルバイトに行っていた。これはほんとうに家計的に大助かりだった。こどもたちの学費や塾代が嵩みバカにならないからだ。

かといって、それは恵まれているほうで、職種と同じ職業で好条件でアルバイトに行ける人は少なかった。

なので、アルバイト先の社長にはとても感謝している。


そこの社長から、息子に大学合格のお祝い金が届いた。

以前から、なにくれとことあるたびに気をつかってもらっていたが、お互いにお礼の電話もお返しもなし、ということにしましょうと言われていた。

それでもたまには電話でお礼を伝えても…  と思ったが、わたしは昔から『電話』が苦手だった。それは今でも。

普段から接触のない人と唐突に話すことに気持ちが追い付かない。言葉だけではなかなか内容が理解できないときがある。聞き間違いも多い、…からだと思う。

かといって無口なわけではなく、かなりおしゃべりなほうなので「電話がキライ」と言っても誰にも信じてはもらえない。


車のなかで不穏な空気を一瞬感じてから数日たっていた。

が、こころの受心はとくに感じてはいなかった。

さしあたって、じぶんの普段考えているようなこころのままでいるので、わけのわからない感情や想いにふりまわされることもなく過ごすことができていた。


けれども、夜の散歩のときにだけ感じる"人影"に関しては、あれ以来毎晩続いている。

後ろから、そっと警戒してついてくる気配だけの人影が気になってしかたがなかった。


↓つづく

↓受心とは