「山頭火全句集」を一章ずつ⑨⑩⑪

「山頭火全句集」を一章ずつ読んでいくこの試み。

なのですが、今回は「大正八年」「大正九年」「大正十年」の感想を一気に読んでいきたいと思います。

というのもこの三章、短いんですよ。

「大正九年」「大正十年」はそれぞれ一ページずつ。

「大正八年」は7句しかないんです。

何があったんですか山頭火さん・・・。

ではまず、「大正八年」。

上に書いた通り、七句しかありません。

全体的に冬の句が多いな、という印象です。

冬らしさを感じさせる語句としては、「一すぢの煙」とか「汽笛長う鳴るかな」とか。

この「汽笛」のがお気に入りです。

冬のピリッとした朝の空気の中だと音も澄んで響きわたるじゃないですか。

2月とか一番寒い時期の朝、新聞配達のバイクの音を聞くのが好きなんですよ。

この句の中にはっきり冬だと書かれているわけではないのですが、冬っぽいな~と感じていました。


続いて「大正九年」。

街中の句が多かったです。

というか、街中の句がほとんどでした。

こういう、人が多いところを詠んだ句が山頭火の句に限らず好きなので心躍る章でした。

お気に入りの句が選べません。

強いて選ぶとすれば、こちら。

       陽ぞ昇る空を支ふる建物の窓窓

ですかね。

この「窓窓」のところが好きです。

窓々じゃなくて、窓窓なんですよね。

「ど」を強く言う感じでしょうか。

「窓々」よりも強い感じで印象深いです。

山頭火の句って繰り返しが多いなと感じていまして。

十七音の中で繰り返しって、うまくいくとすごく印象に残るようになるけど上手くいかないとなんだかちぐはぐな印象になるようなイメージなのですごいなって思います。

繰り返しがある俳句って、なんだか音楽みたいですよね。

「赤とんぼ」とか「ふゆげしき」とかそのあたりの童謡を連想します。

「たんぽぽ」なんかが出てくる句が特に。


最後に「大正十年」。

このページにある全ての句が雑誌「市立図書館と其事業」1号に掲載されたもののようです。

「大正九年」の句のような句もありますが、田舎の暮らしが思い浮かぶ句が多かったと感じます。

           蚊やり線香のけむりますぐに子をおもふ

この句が好きです。

蚊やり線香のけむりますぐに子をおもふ。

蚊やり線香の・・・子を思う・・・かぁ。

って何度も味わってみたくなります。

というか、無意識に何度も繰り返しこの句を読んでいました。

山頭火の人間好きなところが出た句なのかな、と思ってみたりしていて、子どもを思う心がそのまんま伝わってきました。

「ますぐ」なのは蚊やり線香のけむり、山頭火の子を思う心。

その両方なのかなと思います。

「『山頭火全句集』を一章ずつ」バックナンバーはこちら
「山頭火全句集」を一章ずつ⑧|ひかり/読書ノート|note
「山頭火全句集」を一章ずつ①|ひかり/読書ノート|note



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