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「山頭火全句集」を一章ずつ⑧

「山頭火全句集」を一章ずつ読んでいくこの試み。

今回は「大正七年」の章です。

突然ですがこの章で、とても気になった句があるんですよ。

こちら、

「大きな蝶を殺したり真夜中」

句集を読んでいて、不意に目が離せなくなったのがこの句です。

言っていることが衝撃的だ、ということもあるのか、どうなのか・・・。

どうしてこの句に目が吸い寄せられたのか、自分でも分かりません。

歯切れの良いリズムなのでしょうか。

「草木塔」には少なくとも入っていなさそうで、山頭火の句としては異質なものだからかもしれません。

ざらつくような感触がありました。

と、どうしても気になったこの句をご紹介してきましたが、この章全体がそんな句であるというわけではないんです。


「日の光吸い足ればすこし動く葉よ」

この句はのどかで穏やかな句ですよね。

九月の穏やかな日の光を吸っている葉・・・。

「吸い足れば」「すこし動く」という言葉で、お腹がいっぱいになったら少し動いてもういらないけど日の光を浴びている葉っぱの様子が思い浮かびました。

気怠い感じの印象なのですが、どうでしょうか?

人間も、例えばチョコレートを食べていて、まだ食べられるけどもういらないな。っていうこと、あるじゃないですか。

あんなかんじかなと思うんです。

(人間と葉っぱとの見た目の違いはすごいのですが・・・。)

だから、人間からしたらただただ綺麗な風景ですが、葉っぱがどう思っているのかはわからないな、と思いました。

というか、山頭火さんには葉っぱが日の光を吸い足りて少し動いているように見えたんですよね、きっと。

それ自体が面白いですし、山頭火さんが見て感じたことがそのまま思い浮かぶような俳句って凄いと思います。

文章を長々と書いていても自分が思っている風景を浮かび上がらせるのって難しいじゃないですか。

それを十七音で表す俳句ってすごいなと思いました。

短くても記憶に焼き付くような文章ってどうやったら書けるんだろう・・・。


久しぶりの「山頭火全句集」お送りしました。
バックナンバーはこちら↓

「山頭火全句集」を一章ずつ⑦|ひかり/読書ノート|note

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