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色欲の夜

色情霊という幽霊がいるのはご存知だろうか。

その名の通り色欲の情念が強く働き、性衝動を引き起こす夢を見させる幽靈である。

1度取り憑くと睡眠中に現れ襲う。
男の霊が多いと思われるが、女性の霊も多く未婚既婚関係なく男性の夢に出ては襲う。

これからお話しするのは色情霊に憑かれた女性の話だ。


彼女の名はミズキという。
人との接点が多く男女ともに仲の良い友が多いため、付き合っている彼氏からはやや心配されていた。

彼氏の心配は的中し、たまに彼氏以外の男性と一晩過ごすこともあるけれどそれを彼氏に察知させなかった。

その中には当然肉体関係を結んだこともあるが、ミズキが淫乱ということはなく求められると断れない性格なのである。

しかし彼氏との交際は順調であり、ミズキの彼氏への好意は本物だった。
デートも重ね彼氏からもらった香水を毎日つけ、お返しにお揃いのアクセサリーを贈る。

ミズキに異変が起きたのはそんな時だった。

ある日夢を見た。
自分のベッドに横たわるミズキ、覆いかぶさるように見知らぬ女性に見つめられる。

恐怖で声は出ない。体も動かない。これが金縛りなのかもしれない。

女性の表情はよくわからないが、薄ら笑いを浮かべているように見える。

心の中でやめてと叫び続けると、女性が顔を近づけその瞬間パッと消える。
同時に目が覚め体も動いた。

夢か現実か区別がつかない感覚がひどく気持ち悪かった。

翌日、また眠りにつくと女性が覆いかぶさってきた。声も出ない、金縛りだ。

昨日はキスをされる直前に消えた。
今日もずっと見つめられ不快な気分のまま時が過ぎる。

しばらくすると消えたのだが、その直前女性の手がミズキの顔を撫でた。

日を重ねるごとに接触は増え顔、首、胸、腹、脚と全身隅々まで撫で回される。
はっきりしなかった顔もだんだんと認識できるようになった。彼女の顔は知らなかったがとてもキレイだった。

女性の霊と性体験を重ねる夜を続けていくうちに、友人から「ミズキ色っぽくなった」と評判だった。
彼氏からもより一層の愛を受け、周りからもカップルとして非常に良好に見えた。

いつものように女性から全身弄られていると「タカヒロ」とミズキの彼氏の名が聞こえた。
聞き間違いかと思ったが、やはり女性は彼氏の名を呼ぶ。
その日はより一層激しく、それまでにない快楽が夜中の間続いた。

モヤモヤした思いを抱えながらも彼氏とデートをしたり日常をおくる。
色気の増したミズキにタカヒロは我慢できず体を求める頻度が多くなった。

すっかり色情霊に快楽を植え付けられた体は生身の人間であっても感じてしまう。
何度かタカヒロと体を重ね、夜中も色情霊に弄られる。

ある時ミズキは違和感を感じた。

タカヒロと色情霊が同じようにミズキを責めるのだ。
触り方、感触、順番、どれをとってもまったく一緒なのである。

キスから始まり、服の上から触り、服の胸元から中に手を入れ胸を弄り、足へ手を伸ばし下半身の敏感なところまで。
全身の服を脱がすのも上、下、ブラ、パンツの順番で。

いつものように全身弄られる夜、「あなた、タカヒロなの?」と色情霊に聞く。

ピクッと動きを止めるとミズキをキッと睨みつける。
今までの優しい感触が嘘のように激しく、今までより強い快楽をもたらす。
常に夢か現実かわからないが、この日は特にその狭間がわからないくらい快楽に狂わされた。

その間女性は「タカヒロ、タカヒロ、タカヒロ」と叫び続ける。

いつ終わったのかもわからず朝を迎え起きる。
何気なく開いたSNS。彼氏の投稿した写真に見覚えのある女性がいた。

大学生で彼氏の友人に少し尋ね女性のもとへ行く。
写真の女性、そして毎晩ミズキをもてあそぶ女性。
それは大学生の先輩だった。

ミズキがその女性に声を掛けると彼女は知ってか知らずか「まさか会うとはね」と呟く。

「あなたとタカヒロくんはどういう関係なくなんですか」
ミズキの問に「友達よ」と当たり障りない答えをする。

じゃあ、と「毎日私に恥ずかしい思いをさせるのはなぜですか」
これには彼女も黙る。

「あなたが羨ましいから」と

聞けば彼女とタカヒロは体の関係があり、それは今も続いているらしい。これにはミズキもショックを受けた。

女性は意識的にミズキへ霊を飛ばした。
ミズキがタカヒロから感じる愛を自身も感じるためだという。
それは生霊であり、色情霊という形でミズキに影響を与えた。

なるほど、色情霊も感じたいのだ。

彼女がミズキを弄るさい、彼女も快楽の中にあったという。それはタカヒロとの時と同様に。

お互いの事情を知った2人はタカヒロのもとへ出向く。
さらに驚いたことにタカヒロはまだ他の女とも遊んでいたらしい。

愛想を尽かした2人は彼から離れることとなる。


それ以来色情霊が出ることはなくなったが、ミズキも他の女に霊を飛ばそうかなんて思うとたまに快楽が襲うという。

今度は襲われているのか襲っているのか。

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