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デジタルニッポン2020を読み解く 医療編【病院経営は聖域ではない】

デジタル庁創設の背景にある「デジタルニッポン2020」を読み解いていくシリーズです。このデジタル化戦略を抑えておくことで、日本政府(正確には自民党)がどういう方向に国を持っていきたいのかが見えてきます。

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今回は「医療」編です。

デジタルニッポン2020 医療編

まずは原本をコピペします。医療にはかなり多くのページが割かれていますので、特徴的なページだけを切り貼りします。

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様々なことが書かれていますが、基本的には、国民全体に、どこにいても適正な診断や処方を受けてもらいたいという大義ありきです。

特に注視したい点は以下です。

① 医療のデジタル化としてCustomer 360を進めていく
② Pay for serviceからPay for valueへ変えていく
③ Software as a Medical Device を診療報酬で評価

すこし深堀りします。

① 医療のデジタル化としてCustomer 360を進めていく

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DX界隈の用語で「Customer 360」という概念があります。データ設計の基本技法としてリソースデータとイベントデータとを分離することがありますが、その技法に類似した形で、「顧客(Customer)」を中心に様々なデータを紐付けて管理していくという概念です。

たとえば、

* リソース = 顧客
* イベント = 来店・決済・電子商取引・WEB検索・WEB履歴など

としたとき、顧客(リソース)を中心に来店履歴ほか(イベント)を紐付けることで、より効果的なマーケティングができるようになります。

具体的には、40代男性で楽天Payで決済していて「お金」という言葉でWEB検索する人にはこのクーポンを配るのが効果的だ、とかですね。最近では、誰に何が効果的なのかをAIが自動判定して一人ひとりにあったマーケティングを自動的に行うMA(Marketing Automation)などの手法が取られています。

Customer 360では、顧客を中心に、様々な行動データを紐付ければ紐付けるほど、ますます効果的なマーケティングができるようになります。GAFAMなどを中心にデータを集める潮流が生まれているのはこれが理由ですね。

このCustomer 360と同じように、デジタルニッポン2020の医療では、

* リソース = 患者
* イベント = 診断・紹介状・服薬指導など

といった形で管理するようになり、あたかも企業のマーケティングのように国民一人ひとりに合った適切な医療を提供していくことを考えているようです。個人情報保護だのなんだのと外野がうるさくなるかもしれませんが、患者を中心に様々な医療行動を紐付けていくことで、病気の治療のみならず、予防を含めた健康全体を向上させる仕組みが整っていくのでしょう。

となると、医者はマーケターを雇っておくと先行者利益にありつけるかもしれませんね。

② Pay for serviceからPay for valueへ変えていく

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Pay for SeirceとかPay for Valueとか、よく分からない単語が出てきましたが、つまりは「来院数」に応じた医療報酬から「治療完了数」に応じた医療報酬に変えるということだと思います。

医者というのは因果な商売で、国民が病気になって来院してもらえばもらえるほど儲かります。また、いつまでも完治せずに何度も来院してもらえばもらえるほど儲かります。逆に国民がみんな健康だとまったく儲かりませんし、すぐに病気が治っても儲かりません。

そんないびつなインセンティブ設計から生まれてくるのが、田舎の診療所がジジババの社交場になっていることなどです。現役世代の血と汗と涙の保険料を湯水の如く垂れ流してくれます。

来院数ではなく、病気を治し終わった数で報酬を払う形にインセンティブ設計を変えることで、この現状を是正していくことなのかなと理解しました。たしかにこれならジジババの社交場は利益相反になるので、保険料の無駄遣いは是正されていくのでしょう。これはいいですね。

③ Software as a Medical Device を診療報酬で評価

またよく分からない単語が出てきました。おそらくAI診断や遠隔医療などのデジタル技術を導入すると、医療報酬が上がるということだと思います。

Pay for valueもそうですが、医療ではインセンティブ設計を変えることで、医者自体に変わって欲しいという思惑が見て取れます。医者は今後、技術者と組んでいかないと未来がないのかもしれません。

さて、そんな感じで、あまねく国民に高度な医療を低価格で提供するための仕組みだったり制度だったりが検討されているようです。

僕はアナーキストなので医療報酬とかやめて市場にもっと任せたほうがいいのではないかと思いますが、現実面を考慮したとき、方向性としては良いのではないかと思いました。

オンライン診断の恒久化

んで、絵を書くのは簡単ですが、実行が難しいのがDXです。この方向性から具体的に出てきた話として「オンライン診断の恒久化」がニュースになっていました。

コロナで広がったオンライン診療を恒久化しようぜ、といったら日本医師会が猛反対しているようです。まるでハンコ屋ですね。

触診などができず対面より得られる情報は少ないとか、医師のなりすましによる健康被害・薬剤不正入手・健康保険不正使用などのリスクなど、色々文句をつけていますが、

ある日医関係者は「検査料やもろもろの管理料などが取れなくなるので収入が減少してしまう」と漏らす。オンラインだと通院距離に関係なく、評判の良い病院に患者が集中し、経営が苦しくなる病院が出かねないという懸念もある。会見で中川氏はこう言い放ち、政府をけん制した。

儲からなくなるからイヤだ、って本音まるだしじゃん。

コロナ禍で現場の方が必死になって働いていることを理解しつつも、だからといって病院経営は聖域ではないと思います。既得権益ではなく、患者を中心にゼロから考えた新しい経営を目指してほしいと思います。

おわり。

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