サクセスストーリーとホラーストーリー【それでも僕は夢を語りたい】
いきなりですが質問です。
あなたはあまり野菜が好きではないとします。
AさんとBさん、どちらの言い方が心に響くでしょうか。
Aさん「野菜を食べると健康になるよ！もっと野菜を食べよう！」
Bさん「野菜を食べないと病気になるよ！もっと野菜を食べるべき！」
AさんもBさんも主張としては「もっと野菜を食べよう！」なのですが、受ける印象が違うのではないでしょうか。
Aさんには「まあそうだよね・・」で終わりそうですが、Bさんには「ごめんなさい、いますぐ買いに行きます・・」となるかもしれません。なんだかBさんの言い方の方が説得力がある気がします。
① サクセスストーリーとホラーストーリー
プレゼンや企画、各種稟議書など、僕たちが誰かになにかしらの提案をするときには、2つの論法があります。
* サクセスストーリー : 成功体験から有効性を訴える論法 (Aさん)
* ホラーストーリー : 失敗体験から有効性を訴える論法 (Bさん)
AさんBさんのように、主張がまったく同じにもかかわらず論法次第で印象が違うということは、結果が違ってくることがあります。たとえば、DX提案などでしたら採用可否が変わるかも知れませんし、家庭内稟議でしたらあこがれのBMWではなくファミリー用軽自動車になるかもしれません。仕事でもプライベートでもあなたの主張を通すのはけっこう重要なことです。
さて、ではなぜホラーストーリーの方が説得力が強くなるのでしょうか。どうやら人間には現状維持バイアスというものがあるらしく、一般に3倍程度のバイアスがかかると言われます。
たとえば、ちょっとした賭け事を提案されて、サイコロを振ったときに、
* 偶数なら200円あげる、奇数なら100円ちょうだい → やだ
* 偶数なら400円あげる、奇数なら100円ちょうだい → ぜひぜひ
と思う方が多いのではないでしょうか。合理的に考えれば、期待値はどちらもプラスなのでどちらの提案もうけるのがベターなのですが、前者はどうにも乗り気になりません。人間心理の不思議なところです。
ホラーストーリーはこの現状維持バイアスを利用した提案方法です。なので、3倍程度強力になるので、あなたが誰かに提案するときはホラーストーリーで話をすると良いと思います。
・・・というのは嘘です。
伝家の宝刀なので、イザというときにしか使っちゃダメです。
② ホラーストーリーは自由意志を奪う
あなたは「説得力があがるならホラーストーリーを使えばいいじゃん」と思うかも知れません。それはそれで正しいのですが、ひとつ問題があります。
ホラーストーリーでの提案は、あくまで提案のはずなのに義務になってしまいます。病気になるから野菜を食べるべきだ、の「するべきだ」が提案を受けた方の自由意志を奪います。
たとえば、僕は以前、サクセスストーリーで提案しました。
Oracleが分かる人材に加えて、MySQLが分かる人材を育成しましょう！
すると様々な可能性が広がります！
Oracle・MySQLはデータベース製品で、ざっくりいえば、Oracleは高いけど高機能、MySQLは安いけど機能は少ない製品です。双方がわかる組織になり適材適所で扱う製品を変えられれば、コストメリットが出ます。
しかし、その提案を受けて、上司が上程した文言は以下の通りでした。
Oracleが分かる人材だけでは不足しており、MySQLが分かる人材を育成しなければならない。現在は様々な可能性を潰している状態である。
提案は通りました。通りましたが「なんでいままでMySQLが分かる人材を育成していなかったんだ！職務怠慢も甚だしい！」と叱咤されました。
えー？良かれとおもって提案したのに？なんで怒られるわけ？と、まさに不条理です。本来、提案が通って嬉しいはずなんですが、完全にモチベーションを叩き折られました。マジでやってられません。
ホラーストーリーは強い説得力をもつのですが、提案が義務に変わり、提案のモチベーションを叩き折ります。モチベーションが折られた中では気持ちよく仕事もできません。なので、平常時ではホラーストーリーは使ってはいけません。最終手段として扱う論法です。
いままでのIT業界の経験から、インフラ系や運用系の人たちはホラーストーリが大好きで、アプリ系や企画開発系の人たちはサクセスストーリーが大好きだと思います。なので僕はインフラ系には馴染めません。
まとめ
誰かに何かを提案するとき、成功体験から提案するサクセスストーリーと、失敗体験から提案するホラーストーリーの2つの論法があることを紹介しました。そして、ホラーストーリーは強力だけど、最終手段として使ったほうが良いことをお話しました。
僕はホラーストーリでは動けません。
夢を語りたいのです。
おわり。
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