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地方都市の新たな魅力に出会う ブロンプトンとローカル線の旅#10 満員御礼の「山線」と北の湘南①

6月の札幌は、初夏の花の季節。
大通公園は朝7時を過ぎたばかりというのに、もう多くの人達が散策を楽しんでいます。
やっぱりいいなあ、北国の夏。
大正15年に建築されたかつての控訴院、現在の札幌資料館の前にあるイングリッシュガーデンには、薔薇が咲き乱れていました。

▲ 朝の大通公園

ブロンプトンで、大通をさらに西へ。西14丁目で南へ一本下って南一条通、さらに裏参道を走りました。


◆ 札幌ポタリング

今から40年近くも前、私は学生時代を札幌で過ごしました。その後、前職で勤務していた時期もあり、札幌は第二の故郷のような街。
仕事で赴任していた頃は、札幌医大の近くに住んでいました。予定がない休みの朝は、よくこうしてブロンプトンに乗って、裏参道を走り、マルヤマクラスのスタバへ行って朝ごはんを食べながらブログを書いたり、本屋をぶらぶらして、その後スーパーで1週間分の食料を買い物したりしていたものです。
3年ぶりの札幌ですが、今回は、ここでの時間は僅か。馴染みの場所を再訪して過ごすつもりでした。

あの頃、週末の夜にいつも近くの店に集まって、たわいもない話をしながら家族のように過ごしていた皆んな、元気でいるかな。いつかどこかで、またみんなで顔を合わせられるといいな。

曇り空のせいもあるのでしょうか、朝から何となく感傷的になりながら、昔のように裏参道をポタポタと走り、マルヤマクラスのスタバへ。
通りに面したカウンターに腰を下ろしてソイラテを飲んでいたら、雲が切れ、陽が差してきました。

※ ※ ※

その一月程前のこと。仕事のストレスが限界に達して爆発寸前になり、京都で働き始めてから縁遠くなっている北国の空が恋しくてもう我慢ならず、衝動的に新千歳への航空券を購入しました。
諸事情で有休は取りずらい時期なので、金曜の夜、最終便で伊丹を出発する「2泊2日」の弾丸北帰行です。

2030年度末に予定されている北海道新幹線開業に伴い、函館本線の長万部~小樽間、いわゆる「山線」が廃止されることが決まりました。学生時代には、特急「北海」、急行「ニセコ」など優等列車も数少ないながら走っており、何度かこの路線を行き来したことはあります。しかし、それも昭和の昔のこと。
廃止前にもう一度乗っておきたい、という思いが強くなっていました。

しかし、これだけのために、高い航空運賃を払って行くのは如何にも勿体ない。そこで「北の湘南」の異名をとる伊達を組み合わせることとしました。
伊達は、北海道の中では温暖で雪も少なく、移住先として人気が高いエリアです。そんなこともあり、以前から気になっていました。2015年から2020年にかけてロードバイクで北海道一周した際、ここに一泊して酒場巡りなどしよう、と計画しましたが、天候不順や風邪などが重なり、結局は通過して終わりになってもいました。

「山線」プラス「北の湘南」。隣接する有珠にも立ち寄りたい場所があります。天気に恵まれたら、ブロンプトンで洞爺湖を一周するのも悪くない。
早速、札幌と伊達の宿を予約。6月の北海道は、朝晩は半袖ではまだ肌寒いことがあるので、大阪のカペルミュールで薄手の長袖ジャージーを1着奮発し、準備を整えたのでした。

※ ※ ※

さて、マルヤマクラスでの朝食の後、再び大通公園を都心へと走り、北に方向を転じて、北大のキャンパスへ。
構内には、ポプラの綿毛が舞っています。
中央ローンは濃い緑に包まれ、小さな花々が彩を添えています。
私の学生時代(昭和の最後期)から、札幌は大きく変化しました。鉄道が高架化されて開かずの踏切がなくなり、拓銀が消え、サツエキの「そごう」跡地に開業したESTAもまた、北海道新幹線開業に備えた再開発のため今年の8月に40年の歴史に幕を下ろします。札幌のランドマーク的存在だったセンチュリーロイヤルホテルもまた閉館が決まりました。

そのような中、北大キャンパスは昔と変わらずそこにあります。もちろん、実際は新たな研究所の開設など変化し続けているのですが、総体的な風景はそのままに、今でも私を迎えてくれます。メインストリートを多くの観光客や学生、それにランナーが行き来しています。
緑溢れ、生命の気配濃厚なキャンパスは、一年で一番美しい季節。ただ、残念ながら再び陽が翳り、また西から湿った空気が流れ込んでいるそうで、今日は初夏らしい爽やかさには欠けます。

メインストリートを、枝道に入り込みながら2往復。
さほど走った感覚はないのだけれど、サイコンを見ると、朝から既に18キロほどもポタリングしたことになります。
今日はここで、ランニングイベントか何かある様子。揃いのTシャツ姿の人々を多く見かけました。

◆ 函館本線の旅

9時47分 快速で小樽へ。
車内は、でかいスーツケースを持った観光客で満員。JR北海道は全路線が赤字と言うけれど、札幌近郊はこれでも利益が出ないのか。
札幌の次の停車駅は琴似。ここの駅近くの店のスープカレーが好きで、何度か食べに来ました、せっかく札幌へ来たのに、スープカレー食べないで帰るのは残念であります。

銭函から張碓にかけての海岸線をひさしぶりに堪能して、ふと思い立って南小樽で下車。小樽での乗り継ぎに余裕があるので、ブロンプトンでちょっとだけ小樽を走ることにしたのです。

▲ 張碓の海岸線

駅舎を出た途端、西からの強風に煽られました。輪行袋を畳むのも一苦労。

小樽まで本当に一駅だけなのですが、間には急傾斜のアップダウンがあり、湿気を帯びた強風を受けて結構汗をかきました。

▲ 小樽駅前

小樽駅へ到着し、倶知安行きの発車10分ほど前にホームへ上がっていくと、2両編成のディーゼルは、すでに7割方の座席が埋まっていました。早めに来てよかった。元々は、この列車にちょうど接続する快速に乗って来ようと考えていたのです。

その当初予定していた「快速エアポート」が向かいのホームに到着すると、通勤ラッシュ並みの人混みがホームに吐き出され、そのうちの相当数がこちらへ乗り込んで来ました。座席は全て埋まり、通路まで満員になって発車。

車窓から改めて見ると、小樽は本当に激坂の町。坂バカ向けに、励ましの坂をはじめ小樽の主な激坂を一日で制覇する激坂グランフォントとか、激坂スタンプラリーなどやってはどうでしょうか。私は出ないけど。

ただ、地球温暖化によって過去に例のない大雨が増えている昨今、このような急傾斜地では地滑りなどは大丈夫かと心配になります。

西からの強風に、新緑がざわざわと騒いでいます。
「青嵐だね」
通路向かいの初老の夫婦が話しています。

無人駅の塩谷にも蘭島にも、古びた木造の跨線橋が今でも現役で残り、上り口は半ばビニールシートで覆われています。その先はどこかの異世界に繋がっているんじゃないか、と想像してしまう。蘭島では、赤ん坊を背負った女性と、その母親らしきバックパックを背負った女性が薄暗い階段へ消えていきました。

人家が増え、11時17分 余市着。ホームの片隅に2本植えられているのは、リンゴの木でしょうか?ここで半分くらいの乗客が降りるかな、と想像していましたが、実際は七割ほどが下車し、車内は急に長閑な雰囲気に。

余市から仁木にかけては、リンゴ畑と葡萄棚が車窓に広がります。
ロードバイクでつぎはぎの北海道一周をしていた2020年の夏、積丹半島を周回してきて余市に泊まりました。夕暮れ時、長い影を落とす余市川畔の銀杏並木や、たおやかな周囲の山々を眺めながら、こんな穏やかで美しいスモールタウンでいつか暮したい、と思ったものでした。
汽車は山間部へ。

ここまでお読み頂き、ありがとうございました。「山線」の旅は続きます。よろしければ続きもまたお読み頂けると幸いです。

▼ こちらのマガジンで、ブロンプトンを連れて地方都市とローカル線を旅する記録を綴っています。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは主に旅の記録を綴っており、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、また海外旅行のことなども書いていきます。宜しければ↓こちらもご笑覧下さい。


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