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#塩野七生

【読書】『ローマ人の物語 ローマは一日にしてならず[下]02』【イタリア半島統一】

【読書】『ローマ人の物語 ローマは一日にしてならず[下]02』【イタリア半島統一】

ギリシア視察 それまでのローマの法は不文律の集成で、法律に通じているのは貴族階級に限られていた。
 これに不満をもった民衆が、成文化を要求したのである。誰でも読むことのできる客観性をもった形にすべきであるという、至極もっともな要求である。
 要求が妥当であるだけに、貴族側も無視できない。貴族の中の協調派も、この件では平民側と歩調を共にしていた。
 それで、成文法の先進国ギリシアに、視察団が派遣され

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【読書】『ローマ人の物語 ローマは一日にしてならず[上]01』【敗者同化路線】

【読書】『ローマ人の物語 ローマは一日にしてならず[上]01』【敗者同化路線】

なぜローマ人だけが大を成せたのか? ポリビウスの『歴史』は、ローマに眼を向けた、それも実証的な立場から焦点を当てた、最初の歴史作品になった。
 その彼が「なぜ?」という問いを発する。
 なぜ祖国ギリシアは自壊しつつあり、なぜローマは興隆しつつあるのか。

とは、ポリビウスが『歴史』の序文で書いていることである。

 ローマ人自身が認めている。
 周辺の多民族よりも自分たちが劣っていることを。
 そ

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【読書】『わが友マキアヴェッリ』第三巻【イタリア統一しかない】

【読書】『わが友マキアヴェッリ』第三巻【イタリア統一しかない】

考えることしかない 仕事が大好きであったがゆえに有能になり、有能であったがゆえに職場から追放される。
 皮肉以外の何物でもないが、仕事がなくなってしまったがゆえに、考えることしかできなくなってしまった。
 マキアヴェッリ、四十四歳から四十六歳は、最も失意の時期で、不惑どころか戸惑ってばかりであった。
 だからこそ『君主論』が生まれるのだけれども。

フランチェスコ・ヴェットーリ

 一五一三年、フ

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【読書】『わが友マキアヴェッリ』第二巻③【失職】

【読書】『わが友マキアヴェッリ』第二巻③【失職】

自分の国は自分で守ろう・・・・・とした 終身大統領になったソデリーニは、新税法案の理論的根拠作成をマキアヴェッリに命じる。
 新税を課さない限りフィレンツェ政府の財源は尽きていたからだ。
 だからといって新税が嫌われるのはいつの時代でも変わらない。
 したがって、誰もが納得する根拠を提示して、それで押す、しかない。
 そのマキアヴェッリの論文は、
『若干の序論と考慮すべき事情を述べながらの、資金準

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【読書】『わが友マキアヴェッリ』第二巻①【フィレンツェ孤立】

【読書】『わが友マキアヴェッリ』第二巻①【フィレンツェ孤立】

傭兵に頼って大失敗 「徴兵」制度に基づき、自前の軍事力を備えたとしよう。
 そうすると、仕事をするのに絶好の年頃の男たちが、生産活動に従事できず、消費するだけの戦争に出かけていく。
 それなら、自分たちは生産活動に専念して、戦争は「傭兵」に任せよう。
 こうして、この当時のイタリアは、戦争を傭兵に任せるようになる。
 これを傭兵隊長の立場から考えると、自分の部下である傭兵は立派な「資産」なのである

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【読書】『わが友マキアヴェッリ』第一巻③

【読書】『わが友マキアヴェッリ』第一巻③

 一四九八年五月二十三日、サヴォナローラ処刑。

失職したマキアヴェッリの想いは? これからマキアヴェッリの「現役時代」の話になるのだが、その前に「失職した想い」を想像するのは、順番が逆であるようように思われるかもしれない。
 しかし、「現役時代」のマキアヴェッリは、まさに八面六臂の大活躍なのである。
 それでいて「失職」してしまうのだということを念頭に置いておかないと、マキアヴェッリの想いに寄り

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【読書】『わが友マキアヴェッリ』第一巻②【サヴォナローラで大失敗】

【読書】『わが友マキアヴェッリ』第一巻②【サヴォナローラで大失敗】

跡継ぎが失敗する ロレンツォ・イル・マニーフィコの死後、息子ピエロが後を継ぐ―――――
―――――のだが、ピエロは、父ロレンツォさえもやらなかったことを始めてしまった。
 メディチ宮殿を政庁にしてしまったのだ。「自由」「民主政」を信じるフィレンツェ市民の疑惑を買ってしまう。
 父ロレンツォの子どもたちに対する評価

 息子ピエロは、次から次へと失敗を犯す。
 失敗の連続はサヴォナローラの台頭を許す

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