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ニューノーマルな店販

誰もが予期せぬ事態となった新型コロナウイルス感染拡大によって、生活様式だけでなく、ビジネスも大きく変化しています。私たちは今、ニューノーマルな世界に向けて大きく舵を切る必要に迫られています。

「ニューノーマル」とは何か?

新しい常態(ニューノーマル)、ひと言で言えば、『新しい常識・状況』といった意味で解釈できます。

ニューノーマルなビジネスとして代表されるのがリモートワークやテレワークです。働く場所は関係なく、出社せずに自宅やコワーキングスペースなどからオンライン(デジタル領域)で仕事をするようになりました。

また一部ではありますが、化粧品メーカーの美容部員の方がメイクの方法やお客様へのカウンセリングなどをオンライン上で行うなどの変化も見受けられました。

美容室も大半のサービスがリアルでしか提供ができません。その美容室にニューノーマルな変化があったでしょうか?入口に消毒液を用意する、セット面の間隔を以前より広げる(セット面を減らす)、クロス類の使いまわしを避けるなど変化はありましたが、リアルで行っていたものがデジタルに変化するようなことはあまり感じなかったです。

上記にも記載した通り、大半のサービスがリアルでしかサービスが提供できない美容室ですが、店販(小売り業界で言う物販)の部分に関しては、ニューノーマルな形へシフトしていくことが出来ます。

従来の店販

まずは従来の店販の考え方をまとめてみます。

店販の大前提として、買うか買わないかはお客様が決めることがあります。まずはマインドセットとして商品を販売するために説明するのではなく、あくまでもお客様のための情報提供、良い成分のシャンプーやトリートメントは今日の美容室での仕上がりを長く楽しんでもらうためのモノ。また、金額に関しても高いか安いかはお客様の懐事情に左右される部分なので、美容師側で判断しない。

そして、最後は必ずクロージングでお客様の背中を押してあげましょう。

多くの美容室が店販に対してこんな風に考えていないでしょうか?

商品を勧める際に必要な情報

お客様に商品を勧める際に必要な情報として、①商品の特徴(機能)②商品の使用方法③使用後のイメージ④金額の4つは必要です。

美容師とは国家資格を要するプロフェッショナルな職業ではありますが、販売に関してのプロフェッショナルではありません。その為、おすすめしたい商品のヘアスタイルに関連する部分①~③はお客様に話しやすいですが、④金額についてはヘアスタイルと直接関係ないこともあり話しづらいと感じてしまう方が多いのではないでしょうか?

話しやすい

クロージング時のマイナスな心理状況

販売のプロフェッショナルではない美容師の方は、実は金額についての他にも話しづらさを感じている部分があります。

それはクロージングです。

クロージングの時の美容師側とお客様側の心理状況をまとめてみました。

クロージング 心理

クロージングについては、一般的な営業職の方やアパレル、化粧品などショップの店員さんといった販売をメインの業務にしている方の中でも苦手意識を持っている方は多いです。

しかし従来の店販の部分でも記載しましたが、店販においてクロージングは必要不可欠と考えられてきました。

ニューノーマルな店販とは?

今記事のタイトルでもあるニューノーマルな店販とは一体何か?それは、ECを活用した店販です。EC(electronic commerce)とは、電子商取引と訳され、インターネット上でモノやサービスを売買すること全般を指します。「インターネット通販」や、「ネットショップ」といった、今日ではごく普通に使われている言葉を総称したものがECであると考えると分かりやすいです。

誤解のないように伝えたいのは、ニューノーマルな店販で活用するECは楽天やアマゾンのようなプラットフォームを利用して不特定多数の顔の見えない相手にも販売することではありません。

ニューノーマルな店販では、ECを美容室に来店してくれている目の前のひとり一人のお客様の満足度を高める為に活用する方法です。

新型コロナウィルスにおける消費行動の変化

企業のサービス(ここでは美容室に限定していません)をデジタルで提供している領域、フィジカルでしか提供できない領域、どちらでも良いがフィジカルで提供している領域の3つに分類したとき、新型コロナウイルスによって私達はフィジカルでしか提供できない領域以外を強制的にデジタルへの体験に移行させられました。私も漏れなくその内の一人です。

継続するか?

外出自粛期間中にオンライン(EC)で購入した商品をコロナ収束後もオンラインで購入を継続するか?という質問に対し、36%がオンラインで購入を継続する、54%がオンラインと店舗を組み合わせて購入を継続すると答えており、合わせて90%の人がオンライン(EC)購入を継続すると回答しています。

継続するか?②

オンライン(EC)購入の継続には、『配送してくれる』『商品の検索や比較をしやすい』『店舗に行っても在庫が無いことがある』『店舗に行く時間がない』といった理由が挙げられています。

継続する理由

一方、店舗での購入の継続には、『実物を確かめたい』『配送まで時間がかかる』『直接説明を受けたい』『店舗に行くこと自体が楽しみ』といった理由が挙げらています。

継続する理由②

こうしてオンライン(EC)と店舗のそれぞれの購入継続の理由は、オンライン(EC)では利便性、店舗ではフィジカルならではの体験といった違いがあることが分かります。

役割の明確化

美容室のサービスの中で、カットやカラー、ヘッドスパの技術メニューはフィジカルでしか提供できない領域になります。店販は、どちらでも良いがフィジカルで提供している領域に存在するサービスです。

上記のアンケート結果にあったように今後は『どちらでも良いがフィジカルで提供している領域』はデジタル領域に移行させる必要があります。

強制的ではありましたがデジタルの体験をした人たちが、100%以前の状態に戻ることはありえないと思います。逆に言えばデジタルへのリテラシーが高まり、今後ますますデジタル領域を求めていく傾向になると思います。

変化を求められることに不安を感じるかもしれませんが、僕はむしろチャンスだと思っています。

ニューノーマルな店販では、店舗で行うこととして美容師の方が話しやすいと感じていたブランドや商品の特徴や機能、使用方法、使用後のお客様の変化のイメージといった部分を説明し、実際に商品を使用する体験をお客様には提供します。

そして、美容師側もお客様側も双方にストレスを感じる危険性のあったクロージングの部分はECサイトに任せてしまうことができます。

美容室の中では、お客様に楽しい体験だけを提供すればいいのです。

役割の明確化

ニューノーマルな店販フレーム

最後にニューノーマルな店販をフレームにしてみました。従来の店販では、すべてがサロン内で完結していましたが、ニューノーマルな店販では比較・検討~購入の部分を自宅でECサイトを通じて行うようになります。

従来の店販では購入した商品が合わないと感じた場合、その商品をおすすめした美容師さんのせいとして考えるお客様も中にはいるかもしれません。

ニューノーマルな店販の場合、誰か(担当スタイリスト)に促されて購入するのではなく、自分で納得のいくまで比較・検討してから購入するので、購入した商品が自分には合わないと感じたとしても人のせいだと思う方は少なくなるでしょう。

フレームワーク

最後に

デジタルは冷たく、アナログは温かいという捉え方をする人もいるかもしれません。しかし、アナログ(リアル)でも冷たい印象を受けることはいくらでもありますし、逆にデジタルでもお客様の利便性を上げることを目的に作られたモノであれば温かさを感じます。

またニューノーマルな時代になっても、美容業界にデジタルがどんどん普及したとしても、美容室・美容師の方がやるべき当たり前なことは変わりません。(以前に『美容室が見直したい当たり前のこと』という記事も書いてますので、お時間あればこちらも併せて読んでもらえると嬉しいです。)

今記事が少しでも誰かの参考になるような事があれば嬉しいと思います。

今後とも少しでもお役に立てるような情報を発信していきますので、宜しくお願い致します。

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