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豊島観光:体験して記憶を重ねて生きていこう!

みなさん、こんにちは!11月末で豊島の「ストーム・ハウス」が閉鎖すると知り、夫を引き連れて大急ぎで旅に出た者です!

旅に出るまでの経緯については👇こちらを、

香川県高松市の観光をエンジョイしまくった記録は、👇こちらをご覧ください。

さて、今回はいよいよ本題である豊島観光に突入していきます。

ちゃんと起きられた!

前日、貸切露天温泉でしっかり英気を養った夫と私は「翌朝、寝坊したら豊島到着が数時間遅れて、全部の予定が台無しになる」という恐怖と戦いながら床につきました。

朝、幾重にも掛けたスマホの目覚まし音に揺り起こされ、脳みそが半分スリープ状態のまま、フラフラと食堂へ。

すると、前回の日記にも書きましたが、朝食予約のタイミングが良かったのか、眺めが素晴らしい窓際のお席をご用意頂いていました!

雲の後ろから隠しきれない朝日の輝きが!

これには夫もニッコリ。ご用意頂いた朝食が、これまた美味しくてニッコリ。気持ちの良い朝を迎えることができました。

蓋をあけた写真がないあたり、寝ぼけ具合がよく分かる

その後、部屋に戻って出発の準備。前日にホテルの方へご相談していた通り、指定した時間にタクシーがビシっと待ち構えていてくれました。

気持ちの良い対応と素晴らしい宿泊体験にお礼を述べて、タクシーに乗車。フェリー乗り場へと向かいます。

フェリーに乗る!

嘘みたいに青い空と海。昨日の荒波も嘘みたい。

タクシーに乗ってブーーーンとフェリー乗り場へ移動。心配していたフェリーのチケットも無事に購入できました。これで、この豊島旅行は完全に成功したといっても過言ではありません!

いざ、フェリーに乗船です!

運転席、たまらん

乗り込んだ途端、夫と私は運転席がよく見える席を速攻で確保しました。座るやいなや、二人で運転席を見ながらキャイキャイはしゃぎ始めます。
夫にいたっては、レーダー画面にかかれているメーカー名をネットで検索して機材の特定をしていました。

だって、このハンドルにレバー、各種レーダー画面に年季の入った座席などなど、全部グっときませんか?!

ちなみに、学生の頃、私が夫に送ったクリスマスプレゼントが「鉄騎」だった、ということを踏まえていただくとご理解いただけるかもしれません。

「鉄騎」ってこういうゲーム↓ かなり高かったけど頑張った。

幼い頃、丸い回転椅子(背もたれなし)をハンドルに、座椅子の上下に可動する肘掛けをギアに見立てて、バスの運転手さんごっこをしていた私ですが、未だに珍しい乗り物の操縦席を見ると興奮してしまいます。三つ子の魂百まで、ですね。

激しい水しぶき

乗船したフェリーはとっても早かったです!操縦席を見ながら話をしているうちに、豊島に到着していました。

豊島に上陸!まずは豊島美術館へ

実は、私は二度目の豊島訪問。前回は車での移動だったのですが、今回はレンタサイクルでお借りした電動アシスト自転車で移動します。

気持ちの良い風景

島の自然を見ながら、ビュウビュウ風を切って移動するのは、とても爽快なのでオススメです!

あと、電動アシスト自転車の想像を超えた力強いアシストに「うぁおっ!!!」となるのも楽しいので、体験してみてください。
初めて乗った時、漕ぎ始めようとペダルを踏み込んだら、予想を超えるアシスト力でグゥワーーンと前進したので「ヒェッ!」となって思わずブレーキかけちゃうくらい、力強いです。

電動アシスト自転車のグングンくるアシストに助けられて、まずは豊島美術館へ向かいます。

※豊島は坂道が多いので、よほど脚力に自信が無い限り、アシスト無しの自転車をレンタルするのは控えた方が良いかも。アシスト無しだと、旅が終わる頃に太ももがパンパンッになりそう。

なんて映えスポット

豊島美術館のそばには「海へ飛び込む道」と呼ばれている(らしい)インスタ映えスポットがあります。
写真で撮影しても美しいスポットなのですが、何より肉眼で見ると空と海が目の前にパァーと広がって清々しい気持ちになれました。

ただ、写真撮影する時には自転車や車がやってくるので、注意が必要です。私達も互いの前後を確認しながら、撮影させていただきました。

みかんが売られていてホッコリ

美しい海と空を堪能したら、いよいよ美術館へ入場します。
私は二度目、夫は初めての豊島美術館です。

豊島美術館は、一般的な「美術館」とはちょっと違うかもしれません。

「美術館」といえば、建物の中に様々なアーティストの作品が展示されていて、それを鑑賞する形式をイメージしがちです。でも、豊島美術館は「母型」と呼ばれる建物があるのみ。そして、この「母型」自体が作品なのです!

・・・・・・って、説明が難しすぎる!是非、Webサイトを見ていただければと思います。

嘘みたいな道。

「母型」へ入場するためには、敷地内にひかれた道を順路にしたがって歩いていく必要があります。

まるで絵に描いたような嘘みたいな道に導かれながら歩いていると、ふと「あの世ってこんな感じなのかも?」と思いました。

神社の神殿が長い参道の最奥部にあるように、茶室へ入場するまでに長い道があるように、浮世から幽世へ移行するための道なのかもしれません。もしくは、この世へ産み落とされた私達が胎内へ戻っていくための産道?

そんなことを考えているうちに、「母型」の入り口へ到着しました。
スタッフさんの誘導にしたがって、足音のならないスリッパに履き替えて、いざ入場です。

豊島美術館の「母型」は、一日を通して、いたるところから水が湧き出す「泉」です。ふたつの開口部からの光や風、鳥の声、時には雨や雪や虫たちとも連なり、響き合い、たえず無限の表情を鑑賞者に伝えます。静かに空間に身を置き、自然との融和を感じたとき、私たちは地上の生の喜びを感じることでしょう。

ベネッセアートサイト直島

「母型」の内部は撮影NGですので、写真はありません。

もしあったとしても、あの雰囲気は写真では到底伝わりません。

「母型」内部に響き渡る自然の音。
天井にはられた細い紐が、風に合わせてユゥラユゥラと優雅に動くさま。
床からじんわりと染み出した水の粒が、まるで一人では生きられない生き物のように、周囲の水玉を巻き込みながらコロコロと転がっていく様子。

なんて、言葉を重ねても、あの場所で体感した感覚は全然言い表せないので、諦めることにします。

私自身、豊島美術館のことは実際に訪問した人のお話を聞いていましたし、事前にWebサイトも拝見してどういう場所なのか把握していました。でも、生身の体で体験すると、受け取る情報量がぜんぜん違うというか、解像度がとんでもなく高いというか。

とにかく、行って体験してください!お願いします!!騙されたと思って!(うちの母がよく使う表現)

ちなみに夫は、床に座り込んでずーーーーっと水の動きを目で追っていました。予想外の動きをする水の流れを見ているのが、楽しかったようです。

夫の心臓音をアーカイブしよう

豊島美術館を堪能した私達は、再び自転車に跨って移動します。

次に向かうのは「心臓音のアーカイブ」という施設です。

ここは天国??

絶景ポイントで自転車を止めたりしながら、のんびりと移動していきます。

豊島にはアートスポットへの案内看板が複数設置されているので、迷子にはなりにくく、ありがたかったです。

やがて、どの駅からもどのバス停からも遠い場所へとやってきました。

この世の果てを思わせる海のそばに、一軒の建物が。

ここが、本日2つ目の目的地「心臓音のアーカイブ」です。

クリスチャン・ボルタンスキーは人々が生きた証として、心臓音を収集するプロジェクトを2008年から展開しています。
「心臓音のアーカイブ」は、これまで氏が集めた世界中の人々の心臓音を恒久的に保存し、それらの心臓音を聴くことができる小さな美術館です。ご自分の心臓音をここで採録することもできます。

ベネッセアートサイト直島

私は二度目の訪問となる「心臓音のアーカイブ」。自分の心臓音もすでに採録済みでアーカイブされています。なので、今回は夫の心臓音を録音することにしました。

録音はセルフサービス方式。事前に受付で録音したい旨を伝えると、完全個室の録音室に案内されます。お部屋にはモニター画面と聴診器みたいなマイクが用意されていて、あとはモニター画面の表示に従えば録音できちゃうのです。簡単ですね。

それにしても、私達夫婦、二人ともいずれ死んじゃうんですね。私が先に死ぬのか、夫が先に死ぬのか、それとも事故で二人一緒に死ぬのか。
どうなるかは誰にも分かりませんが、もし夫が先に死んでしまった時に彼の心臓音がここにアーカイブされている、という事実が何か気持ちの支えになるかもしれません。

彼の心臓音を聞きに行こう、というモチベーションがわずかながらの頼りになれば。

なんてことを考えているうちに、録音は無事に終了しました。

録音した心臓音は、CDにしてその場で渡してくださいますので、自宅でも心臓音を聞くことは可能です。わざわざ、この場所を訪れる必要はない訳です。

でも、多分、ここに聴きに来ると思います。

どの駅からも、どのバス停からも遠い場所に建てられたこの施設へ、今はいない誰かの心臓音を聞くために旅をする。そして、海を見つめながらドクドクと脈打つ鼓動の音に耳をすませる。

ボルタンスキーさんは、この施設への道のりに「巡礼」のイメージを重ね合わせていたそうです。まさに、私も「巡礼」の旅をすることでしょう。

島キッチンで昼食を食べよう

時間はお昼どき。そろそろお腹も空いてきました。
事前に調べておいたレストランへ向かいます。

たわわに実る柿

「島キッチン」です。

島キッチンは、瀬戸内国際芸術祭2010に、豊島の集落の空き家を建築家 安部良さんが設計・再生した「食とアート」で人々をつなぐ出会いの場です。東京・丸ノ内ホテルのシェフのアドバイスのもと、豊島のお母さん達の笑顔と豊島の豊かな食材を使った独創的なメニューで、お待ちしております。外のオープンテラスでは、GWや夏休みなどを中心に、ワークショップやイベントが行われます。みんなが会話と食事を楽しみ、歌って踊って交歓できる、美味しい楽しい島キッチンです。

島キッチンWEBサイトより

メニューは、島キッチンセットとキーマカレーセットの二種類。
どちらもかなり美味しそうで迷ってしまいます。

おいしそー!

最終的に夫も私も、キーマカレーセットを注文しました。
カレーが美味しいのはもちろんのこと、素揚げされたお野菜もとっても美味しかったです!一つ一つのお野菜の味がしっかりと感じられました。

あと、豊島で採れる旬の果物を使ったオリジナルドリンクもおすすめです!柑橘系のジュースは酸味が残っていて、体の疲れが浄化されていくようでした。

夫「あー、お腹いっぱい!さぁ、次はささやきの森だね?」
私「そうね・・・ささやきの森・・・行くか!」

若干悩んだのですが、ささやきの森へ行くことに決めました。

行くか否か悩んだ理由は、Googleに寄せられていた口コミの内容です。

躊躇ポイントその1:結構な山道を歩く必要があるらしい。
私も夫も体力がある方ではありません。ささやきの森を訪問することによって、体力切れになるのを心配していました。
ですが、この時点で残す訪問先はささやきの森とストームハウスだけだったので、休憩もしたし行けるだろう!と踏みました。

躊躇ポイントその2:風が吹かなかった場合、ささやかない可能性がある。
ささやきの森は、沢山の風鈴が野外に設置された作品です。風が吹かなかった場合、山道をしっかり歩いたにも関わらず、ささやかないまま下山する可能性があります。
ですが、ささやかなかったとしても、それだって立派な作品体験の一つだ!と踏ん切りました。

ちなみに、夫はささやきの森がどんな作品なのか知りません。

私は「できればささやいてくれますように」と心の中で手を合わせて、歩きはじめました。

いざ、ささやきの森へ

はたしてささやきの森への道は、結構しっかり山道でした。

しっかりと森

前半は舗装された道だったのですが、後半に差し掛かるに従って未舗装の道が増えてきました。

緩やか、だけど太ももにしっかりダメージが蓄積される上り坂が続きます。

しっかりと山

「この道で合ってる?」

夫が不安そうにたずねてきます。

「合ってるよ。看板が出てたでしょ」
「こんなところに作品があるの?」

事前に山道を歩くことくらいは伝えておけば良かったですね。
不安がる夫をなだめつつ、モクモクと山道を登り続けていきます。はぁはぁと吐き出す息で、マスクの内側が結露していくのを感じました。

そして、いよいよ作品が近くなってきました。

植物のアーチ

植物によって形作られたアーチが、私達を迎え入れてくれます。

「もう少しだよ、頑張って!」
「作品って、どんな作品なんだろう?」

私の心に不安がよぎります。なぜなら、もう作品は間近なはずなのに、何の音も聞こえないからです。

無音

・・・今日は、ささやかないかもしれない。

ある程度の覚悟を決めて歩みを進めます。

いよいよ、目の前に風鈴が見え始めました。やはり風鈴はなんの音も立てていません。

「あ、あれだよ!」
「え?あれは、なに・・・?」

そう言って二人で作品も目前へ近づこうとした時。

チリン・・・
チリリリリン・・・

弱い風が吹いて、風鈴が少しだけ鳴りました!

チリン・・・チリリリリン・・・チリリリリリリリリリッ・・・・!!

驚いたことに、到着した直後から風が吹き始め、風鈴が一斉に鳴りだしたのです!

目には見えない人々がそこにいるように感じられました。

数人がボソボソと耳打ちながら囁いていた声が、さざなみのように全体へ広がっていくように。
私達夫婦という突然の訪問者にたいして、噂話をされているような。

二人、作品の前に設置にされたベンチに座り込み、見えない人々の声をぼうっと聴き続けました。

なぜか心が少し寂しくなって、両親のことを思ったりしました。

最終目標地、ストームハウス

ついに今回の旅の目的地、ストームハウスへ向かいます。
(ちなみに、下りの山道は上りよりもダメージが大きかったです。膝がガクガクになりました)

ついに来た

ずっとずっと来てみたかった場所、ストームハウス。

閉鎖する前に訪問することが出来た、という安堵と喜びが胸にこみ上げてきます。

こみ上げすぎてろくすっぽ写真を撮っていません。興奮しすぎると、写真撮影とか出来ないですね。

受付をされていたスタッフさんからも「閉鎖前に来られて良かったですね」とお声がけいただき、古い民家の中へ入りました。

入った途端、雨の日になりました。
窓の外に目をやれば、さっきまで晴れていたはずの空はどっしりと重い雲に覆われているように見えます。部屋の中は薄暗く、よくよく目をこらしても部屋の隅が暗くて見えません。

私達が入室できる和室の部屋の他にも部屋があるらしく、その部屋にはオレンジ色の明かりが点いています。ですが、部屋を仕切る障子にはくもりガラスがはめられており、中の様子はうかがい知れません。

「なんだろう・・・なんか、怖い・・・」

夫がそわそわと落ち着かない様子で歩きまわります。
一度は畳に腰掛けた私も、言いしれぬ不安に襲われて立ち上がりました。

『ゴホ!ゴホゴホッ!!』
「え?!誰かいる?!」

くもりガラスの嵌められたドアの向こうから、咳き込む男性の声が聞こえます。他には誰もいないはずなのに、姿の見えない人の気配がより一層、心細くさせます。

ザーーーーーーーー!!
ゴォーーーーーー!!!

窓を叩く雨の音がどんどん強くなります。
天井のあちこち雨漏りの水滴が、ポタポタと落ちてきます。
風が強く窓をガタガタと揺らします。

やがて、雷が鳴り始め、ひときわ大きな雷鳴とともに、他の部屋に灯っていたオレンジの灯りも消えてしまいました。

私と夫は部屋の真ん中で、手を握ってじっと嵐が過ぎ去るのを待つしかありません。

鑑賞後に分かったのですが、この時、夫も私も、いつかどこかでこういう体験をしたような感覚を覚えていました。
祖父母の家で一人留守番をした時のような、台風の日に寝室を揺らす風雨の音をずっと聞いていた時のような。
幼いころの心細かった記憶が全部ミックスされて、蘇ってくる感覚でした。

やがて雨風は弱まっていき、電力が復旧したのかオレンジの灯りが再び灯りました。作品の終わりです。

私と夫は子供の頃に戻ったようなフワフワとした心持ちで、外へ出ます。すると、外は元の晴天でした。

「あれ?晴れてる??」
「体験された方は、皆さんびっくりされるんですよ」

受付の方が笑いながら、そう教えてくれました。
中はあんなに雨だったのに。認知がぐらぐらして、めまいがしそうです。

閉鎖する前に体験できて、本当に良かったです。この体験は、この作品でしかできなかったでしょうから。

旅を終えて

帰ろう

こうして私達の旅は終わりを迎えました。

とても楽しい素晴らしい旅でした。

あの日に体験したことは、私達の夫婦の輪郭となって残り続けるでしょう。

自分たちでも意識しないどこかに、この体験が影響を与えていることは確かです。

もしくは、もっともっと歳を重ねてから、ふと「あぁ、あの作品はそういうことか!」と急に腑に落ちる日が来るかもしれません。

それを楽しみに生きていこうと思います。

皆さんも、一度は豊島を訪問してみてください!おすすめですよ!

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