見出し画像

こころの安寧がパフォーマンスを上げるということ

 前回、仕事を行っている時のプレッシャーが実行している行為だけではなく、中枢神経系へ影響を及ぼして、最悪の場合には非可逆的な変化を招くということを見ました。

 そして昔は圧迫をかけるようなマネジメントや教育が通用してきたけど、生産人口の低下とその中でさまざまな特質やメンタルケアで生活を保っている人たちに合わせた仕事の仕方を提供することが重要になってくることをみました。

 さて続いて「心理的安全性」についてみてゆきたいと思います。

 心の不安定さを招く最も大きなものは恐怖と不安だと思います。

 恐怖は環境からやってくる一時的な危険な刺激に対する生理的、行動的、認知的、主観的な反応が総合したものと神経科学では考えられています。

 そして長期にわたり、有害な結果をもたらすことかも知れないけど、はっきりしない状況が続くことに対する反応が不安と考えられています。

 不安に対して人間は常に高い覚醒を維持して、警戒を続けて、身体的にも準備を整えているのですが、長い間にわたってこの状況が続けられるわけもないです。

 中枢神経系では、恐怖や不安に対して反応するのは扁桃体と呼ばれる大脳のずっと下の方にある組織です。

 ここは感覚刺激に対して感情的にどのくらい重要かを測ったり、何かをするための動機づけの順位をつける領野です。

 また心拍や呼吸の変化、瞳孔が拡大するなんかの恐怖に対しての意識していない反応や意識的な感情の知覚もコントロールしています。

 そしてこの組織は血糖値の低下など、空腹の際に食べる物に対して注意を向けさせるような人の行動に影響を及ぼし、注意や気分、記憶にも影響します。

 ここで戻ってきたと思いますが、注意機能や記憶にも影響を及ぼすため、人は相手の意図がわからない指示や高圧的な指導に対して扁桃体を中心に過剰に働きすぎてしまい、平常時よりも疲労状態が続いたり、注意機能の過剰反応や作業記憶やワーキングメモリーが低下することになります。

 ビジネスや仕事のタスクをこなすためには避けたい不安や恐怖ですが、現代社会で一人で生きてゆくことは難しく、人と関わりを持って行かざるを得ないと言ったところでしょう。

 その中で、対人関係上のリスクというものがあるそうです。

 たとえば自分の発言が上司から叱責を受けるきっかけになったり、同僚たちから何もわかっていない人、できない人として軽んじられるなどネガティブな反応を受ける可能性のことらしいんですが、これは人が社会性動物である限り、小さい頃から高齢になっても常に晒されるリスクであり、公共の場でもプライベートな場でも変わりなく存在します。

 多分、上記の場面で扁桃体はかなり活動しているものと考えています。

 「沈黙は金」という言葉もありますが、沈黙しすぎて、仕事の中でちょっとした違和感やあからさまにおかしい文脈で会議が進んでいる際に発言や行動を控えてしまいミスが出る結果になれば、本末転倒ですよね。

 ハーバード・ビジネス・スクールのエドモンドソン教授が提唱した「心理的安全性」は沈黙しないこと、ミスを報告しても叱責を受けない、上司や特定の影響力を持つスタッフが抑圧的ではないこと、ハラスメントがないなどを挙げています。

 たとえば医療現場でのチームの研究では、優秀なチームほどミスの報告が多いとか、高圧的なリーダーが不安を招くような指示と脅迫めいた文言でチームを支配し、結果を最速で出そうとした結果、不正を招くとかが挙げられています。

 前者ではミスをしても責任を取らされたり、懲罰的な対応をされるのではなく、ささやかなミスを率直に話すことができる雰囲気やそれをカバーできるチームであるのに対して、後者では上司はミスを許さず、短期間の納期を守らせるためにクビを匂わせる発言や罵倒、チームメンバーに対して屈辱を与えるような扱いを常に行うなど抑圧的なチームマネジメントを行うといった真逆な運営をされていたとのことです。

 恐怖のないチームは一見すると場違いかも知れない発言を許容して、初歩的な質問も尋ねることができることにより、学習する機会を多く持つことができます。これはチームの中で会話する機会が多く、互いに尊重する雰囲気で職場のチームにいることが安心できます。

 それに対して絶え間ない罵倒や抑圧的な空気、何か発言することで屈辱的な対応が返ってくるようなチームは上司やチームメンバーと話すこと自体が恐怖であり、不安が常に付き纏うことで本来持つパフォーマンスを出すことができないのは見てきた通りだと思います。このような組織はスタッフの定着率も悪いでしょう。

 前者のような組織の企業に働きたいのはやまやまですが、外部からは見分けることは難しいかも知れないですね。

 ですが、今後数年のスパンでこのような会社や組織は非雇用者に選ばれないことで変革や最悪なくなるとの見通しを語る人もいます。

 もしどのようにリサーチをしてもそのような組織だった場合は余程の事情でない限りは逃げることが自身のメンタルヘルスにとって有益です。会社はあなたの代わりはいますが、自分自身や家族、大事な人にとってあなたの代わりはいないです。

 やめても、意外とどうにかなるもんです。

 次回はコミュニケーションについてを考えています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?