見出し画像

孤独な育児が一つのきっかけだったかもしれない

地域で活動されている方のご紹介を通じて、京都市東山区エリアで活動をされている方にお話を伺う企画「iINA」。活動に至ったきっかけや活動を通じての変化感など「いいな」と思えるストーリーをお聞きし、新しいことに踏み出したい人が、まちの「いいな」につながるアクションに踏み出すきっかけとなるような発信をしていきます。

ー今回取材させていただいたのは、フリーランスで仕事をしながら、2児のお子さんの育児をされている小原亜紗子(こはらあさこ)さん。2020年6月に『東山区まちじゅう図書館プロジェクト』という活動を始められました。プロジェクトを始めたのは、初めての育児に孤独感を抱いていた際、近所の方から絵本をいただいたことがきっかけだったそうです。立ち上げの思いについて、詳しくお話しをうかがいました。

子育てを楽しむきっかけをくれた一冊の絵本

ー東山区との関わりを教えてください
東山区に住みながら、『東山区まちじゅう図書館プロジェクト』という活動をしています。生まれてからずっと京都住まいで、7回引越しを経験しましたが、子どもが生まれたタイミングで引越してきたのが東山区でした。少子高齢化がダントツの区ですが、意外と子どもがいるし、近所のおじいさん、おばあさんもみんな親切で、とても住みやすいまちだと感じています。

ー東山区まちじゅう図書館プロジェクトとは、どのような活動なんでしょう
家庭の庭先やお店の前にちいさな図書箱を設置して、地域の人たちが自由に本を貸し借りできる暮らしをつくっています。現在は、東山区の東林町という地域に3つの図書箱があり、それぞれ個性豊かな本が置いてあります。例えば、黒が好きな陶芸家の方は、図書箱を真っ黒にアレンジして設置しておられます。

まちじゅう図書館1

陶芸家の方の図書箱

ー始めたきっかけを教えてください
一人目の子どもが生まれたあと会社に復帰したんですが、子育てとの両立が難しく、会社員を辞めることになりました。フリーランスを細々としながら子育てと両立していましたが、初めての育児で毎日緊張していて、息抜きもあまり得意ではなく、苦しさを感じていたんです。

そんなとき、近所に住む女性が「これすごく面白い本やから、お子さんに読んであげて」と、谷川俊太郎さんの『もこ もこもこ』という絵本をくださいました。子どもに読んでみると、すごく喜んでくれて。それまで絵本の読み聞かせがあまり得意ではなかったんですが、その絵本をきっかけに育児するのが楽しいと思えるようになったんです。

絵本をいただいたことで、安心感が生まれたんですよね。夫はいますが、どこか一人で育児をしているような孤独感があったんですけど、その方から声をかけてもらった嬉しさから、近所の人も実は応援してくれてるんだと思えるようになって。この喜びを、私一人で独り占めするのはもったいないなと感じていました。

小原さん素材3-2

そんな折にコロナが広まり、将来への不安や何も挑戦できない状況に物足りなさを感じていました。その物足りなさをママ友に話すと、「分かる分かる」と共感してくれて。そのママ友とは絵本の貸し借りをしていたのですが、地域の人と本の貸し借り出来たら楽しそうという気持ちが湧き上がってきて、そのママ友と『もこ もこもこ』をくれた方と話して、3人でプロジェクトを始めることになりました。


ープロジェクトを始めるにあたって、不安はなかったですか
あまり迷いはなかったですね。夫が材木屋に勤めているので、木の図書箱を作ってくれたり、一緒にやろうと言ってくれる方がいたり、手短に出来る環境が揃っていたことが大きかったかもしれません。コロナの第2波で緊急事態宣言が出た時期だったので、日々の楽しみがなく、「やるなら今しかない」という極限状態だったこともあります(笑)

ー実際に活動初めて変化などはありましたか
地域の人とお話しする機会が増えましたね。図書箱を置いている東林町は、東部と南部がある広い地域なんですが、部を超えて何度も本を借りに来てくれる子がいたんです。たまたまその子がお父さんと本を借りているところを見かけて、「もしかして、〇〇さんですか?」と声をかけたら、お子さんが「いつもウサギの絵本が好きで借りてるねん」と返事してくれました。そのことがきっかけで、子ども同士でも喋るようになって、休みの日に一緒に遊んだりすることもあります。

他にも、京都新聞に取材いただいた記事を読んで「見たで!」と声をかけてくれたり、読まなくなった本をいただいたりと、今まですれ違っていた方々とお話をするようになりました。子どもがつないでくれた縁だと感じますね。私はあまり意識高く能動的に行動するタイプではないんですけど、絵本に助けてもらって、図書箱ができて、子どもたちが仲良くなって。こんな風にゆるくつながっていく出会いに、一歩踏み出せたのは良かったなと思います。

まちじゅう図書館2

11月オープンに向けて準備している、ルーミー図書館DIYの様子

ー子育てをされている方や何か始めたいと感じている方へ、メッセージをお願いします。
人によるかもしれませんが、私は一人目の育児のとき、おママごととか、お散歩とか楽しめなかったんですよね。子ども目線で一緒に遊ぶのがしんどくなってしまって。もちろん子供は愛らしいし、成長を見守るのは楽しいんですが、買い物したり友だちと飲みに行ったり、大人の楽しみの時間が少ないなと感じてました。絵本を読み聞かせたり、本を借りるためにお散歩にいくことで、子どもと一緒に大人の私も楽しめる方法が見つけられたのかなと思っています。

私はもらった絵本がきっかけで育児を楽しめるようになったのですが、もし子育てで同じ悩みを持っている方がいたら、少しでも自分の楽しみを見つけて楽になったらいいなと思います。『東山区まちじゅう図書館プロジェクト』は、そういう本の楽しみを他の方とも一緒に楽しめたらという想いで始めた活動なので、子どもと散歩に行くついでに本も借りてこようと、大人の方も楽しんでもらえたら嬉しいです。

もしこの話を聞いて、少しでも関わりたいと思うことがあれば、一緒にやれることを模索できればと思います。例えば、「図書館司書をやっていて本のセレクトがしたい」とか、「仏陀が好きだから、それに関する本ばかりの図書箱を置きたい」とか、何かしら「本」というつながりがあれば、ご一緒したいと思っています。

■東山まちじゅう図書館プロジェクト
Facebook:https://www.facebook.com/higashiyama.machitosho/
Instagram:https://www.instagram.com/higashiyama.machitosho1/

おすすめの記事

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?