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【創作小説】永遠の終末(57)
(57)
何処かで、聴いた音楽が、遠くの方で流れている。
――何という曲名だったっけ。
曲は、止まることなく流れ続けていた。
――頭が、痛い。
カーテンの隙間から朝の陽光が差し込んでいた。
翔龍は、ソファの上で目が覚めた。
曲は、次第に大きな音になって、翔龍の耳に響いた。
――携帯電話の呼出音だ。
テーブルの上に腕を伸ばして、携帯を取り上げた。
「もしもし……」
「生きてるか?」
板垣主任の声だった。
「生きていますが、……どうしたんです?」
「今、何時だと思ってるんだ?」
言われるままに、テレビの横に置いてある時計に目をやった。
「10時です」
「どうして、この時刻に家に居るんだ? と言うより、松永刑事、酔ってるな」
「酔ってる?」
――そうか。だから、頭が痛いんだ。
「生きているなら、それでいい。酔いが醒めたら出勤して来いよ。いいな」
一方的に電話が切れた。
ソファから立ち上がって、水を1杯飲んだ。再度、リビングに戻って床を見渡すと、チューハイの空き缶が5本転がっていた。
空きっ腹に一気に流し込んだ。急性アルコール中毒にならなかったのは運が良かった。
頭痛薬を飲んで、「ふー」と息を突いたら、理奈の顔が浮かんだ。失恋したことを思い出して、また辛くなった。
ベッドに潜り込んで横になったら、また眠った。
目が覚めたら、午後1時を過ぎていた。
理奈の顔を思い出したら、涙が出て来た。
――何もなかったと思って、生きていくしかない。
思い切って、本当に思い切って、布団から出て、顔を洗って、着替えて、出勤した。
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