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【創作小説】永遠の終末(61)

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(61)

翔龍と鹿子田が対峙している間に、夜空に浮かぶ月の明かりに姿を晒されないように、音を立てずに、田んぼの畦畔の法面を滑らないように、細心の注意を払って、板垣を中心とした警察部隊が学校の周辺に潜んでいた。

翔龍が撃った銃声音を合図に、一斉に運動場になだれ込み、鹿子田を逮捕した。肩を撃ち抜かれた鹿子田は、パトカーとともに待機していた救急車に乗せられて安佐中央病院に搬送された。

板垣と久美に連れられて、理奈はパトカーへと導かれ、後部座席に俯いて座っていた。

その理奈に向かって、「吉本理奈さん、あなたを窃盗容疑で逮捕します」と久美が真顔で言っていた。

「はっ?」

 驚いたのは、理奈本人だけではない。板垣も唖然としていた。

「私、何も盗んでなんかいません」と気丈に理奈は反発した。

「誰かの台詞をパクッたようで心苦しいのですが」と前置きをしてから、「あなたは、松永刑事の心を盗みました」と言った。

「えっ?」

理奈は、窓ガラスを透して翔龍を見た。

遠くからではあるが、「それは、本当ですか?」とその目が翔龍に問うていた。

その様子を見ていた久美が理奈に、「容疑者になったような気がしません?」と笑って話し掛けた。

「止めんか」

そんな久美の冗談を呆れ顔で板垣が制した。

久美は、どこまで真剣な思いを込めて話しているのか慮ることはできないが、それが久美らしさだと翔龍は思った。

パトカーの後部座席に理奈と久美が座り、前の座席に運転手役の池田、助手席に板垣が乗った。

翔龍はと言えば、「ご苦労だった」と板垣に慰労されてからは自分の車の横で、理奈の様子を見つめていた。

これから署に帰って、ひとしきり事情を板垣に説明をすることになるだろう。そして、明日の朝、理奈に鹿子田の行動を聴取したら、それで世間を騒がせた一連の殺人事件が終わる。

三宅ひとみが殺害され、捜査の過程で吉本理奈に出会い、命を懸けてささやかな夢を見た小峯桜子が殺された。

大切な2つの命が奪われた大きな事件だった。ここまで来て振り返ると、あっという間の出来事のようにも思えた。

「……終わった」

車のドアを開け、運転席に乗り込んでエンジンを掛けた。

 ブルルン――快適な音を響かせて、エンジンが始動した。

 


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