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12月よりメニュー構成が変わります

東京・白金のフレンチレストラン「ラ クレリエール」のオーナーシェフ、柴田が日々、何を考えているかを綴ります。
2020年10月にスタートした連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」では、柴田の料理人人生を振り返りつつ、なぜ今ミシュラン三つ星に挑戦するのかを綴りました。そして現在は「ラ クレリエールの料理集」と題し、クレリエールでお出ししているお料理を切り口に、料理人として、シェフあるいは経営者として、考えていることや思っていることをお伝えしています。

最初の連載「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」はコチラからどうぞ
 → 第一章 レストランのシェフになる
 → 第二章 プロの世界へ
 → 第三章 「料理長」を見据えて
 → 第四章 レストラン ラ クレリエール
 → 第五章 オーナーシェフの「仕事」
 → 第六章 ミシュラン三つ星を目指す

現在連載中の「料理集」のバックナンバーです。
 → 「ラ クレリエールの料理集1(第一皿~第五皿)」

レストラン ラ クレリエールでは、オープン以来、オーナーシェフである柴田がその日の仕入れの状況や召し上がるお客様に合わせてお料理を決め、コースを組み立ててきました。そして6年目を迎え、今ではそれが一つの“クレリエールらしさ”として多くのお客様に好評をいただいています。
しかし僕は、敢えて12月からメニュー構成を一新し、「月替わりコースでのご提供」とすることにしました!

このnoteを始めた当初の連載タイトル「ミシュラン三つ星レストランへの挑戦」の通り、僕は独立を決めた時からミシュランの三つ星を取りたいと思っていました。もっと正確に言えば、料理人になろうと決めた時から、です。とはいえ、僕にとって「三つ星を取る」こと自体は、あくまで通過点。「三つ星シェフ」になってからやりたいことがたくさんあるのです。三つ星がゴールならともかく、そこからやりたいことを実行し実現するためには、体力や創造力、新しいことに挑戦する胆力があるうちに駆け上がらなくてはいけません。
現在クレリエールがいただいている星は、一つ。日々お迎えするお客様の満足と最高のひと時のために、スタッフ全員常に全力を尽くしています。しかし、今のままでは三つ星はおろか二つ星も難しいだろうと僕は思っています。お料理もサービスも店の設えも、まだまだレベルアップしなくてはならない。そのためには僕を始めスタッフ一人一人が向上し、チームとしての力も強化すると共に、僕はオーナーとして経営力も磨く必要をヒシヒシと感じています。
来年4月にはオープン7周年を迎えます。その前にまず一歩踏み出そう!ということで、メニュー構成の変更を決めました。

さて、構成を変えることで何が変わって、どう「レベルアップ」に繋がるのか?
一番大きいのは「チームの力が上がること」です。月ごとにお料理が固定されるため、工程を何度も繰り返すことになります。そして回数を重ねることで個々の技術は安定していきます。もちろん臨機応変な対応で得られる技術もありますが、技術向上に継続は欠かせません。すると、調理の面でスタッフの手に新たに委ねられる部分が増えていきます。僕の手を離れることでお料理の質が下がったりしないか心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、大丈夫です。実際、今の時点で僕が手を出さずに任せられるスタッフが既にいてくれます。
また、一人では無理でもチームでなら可能な場合もあるでしょう。いえ、可能だと思ったからこそ僕は決断することができたのです。そしてチームの中で持てる力をフルに使って励むことで、個々が実力をつけ、対応力も高まるはずです。僕以上の成果が出せる個が出てくるかもしれません。
もちろん、僕が厨房からいなくなる訳ではありませんから、スタッフがちゃんと成長できるようポイントを押さえてサポートやアドバイスをしますし、僕しかできない工程のあるお料理もお出ししていきます。
さらに僕自身のレベルアップとして、日々の料理に関わる度合いが減ることを活かして、料理以外のことにもっと目を向け、勉強し、新しいことにも挑戦して力をつけるつもりです。もう料理人は料理さえしていれば良いという時代ではないですし、三つ星シェフともなればなおさらですから。その素地をしっかり作っていきたいと思います。

食材やコストをより緻密に管理できるようになることも大切な要因です。管理できる=ケチになろうという訳ではありません。適正に管理することで無駄がなくなり、お客様からいただく金額は同じでも、より豊かにお返しできるようになる、ということです。クレリエールとしても、二つ星、三つ星に相応しい設備や環境を得るために資金力は必須なので、そういった面でも管理能力は高める必要があります。

そうそう、今年はいわゆるクリスマスメニューは作りません。12月のメニューそのものが、特別な日を織り込んだ「12月だからこそ」の内容になっています。クレリエールが守ってきた「フランス料理をちゃんと楽しんでいただけるクリスマス」になるための
*回転制にせず、ゆっくり過ごしていただく
*「この時期に美味しくて特別なもの」をご用意する
*シャンパーニュをロゼでご用意するなど、ハレの気分をより感じていただく工夫をする
*フランス料理の魅力を感じていただき、楽しんでいただく
というルールも健在です。「普段も良いけど12月はクレリエールに行きたくなるね」と言っていただけるよう厨房とサービスと心を合わせて全力でお客様をお迎えいたします。

皆さまのお越しをクレリエール一同、心よりお待ちしております。

※新型コロナ感染症対策のため例年より席数を減らしており、すでに満席のお日にちもございます。
 ご予約はお早めにお願いいたします。

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このnoteを初めて読んでくださった方へ
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はじめに初めまして。ラ クレリエールの柴田です。
白金でフレンチレストランのオーナーシェフをしています。
2020年のコロナ自粛の間、レストランのあり方や自分が今後進むべき道など色々と考えました。その中で「ミシュランで三つ星を獲得すること」を一つの指標として強く意識するようになりました。
そして、どのようにすれば三つ星を獲得できるのか、三つ星にふさわしいと皆様から認めていただけるのか、日々、考えたことや行動したことを記録に残そうと考えました。
ご興味を持っていただけたら幸いです。

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