中小企業で働く魅力と注意点① 業務の上流から下流まで見れる
中小企業での仕事内容について、私が転職エージェントとして企業の採用担当者や配属部門の責任者に取材をした時、
「ウチは上流から下流まで全てできるよ」
「一から十まで全部見てもらうよ」
「ウチは人数が少ないから、幅広く何でもやってもらうことになるよ」
という言葉を、何度も何度も聞いてきました。
転職活動をしたことがある方(今、されている方も)も、中小企業系の求人票で、上記のような文言を見たことがあるのではないでしょうか。
私が人材業界に20年以上携わる中で様々な企業とご縁を頂き、私自身も大手、ベンチャー、外資、中小企業(現在はココ)と様々な会社で仕事をさせていただく中で、
▶ 仕事の幅が広い
▶ 業務の上流から下流まで見れる
というのは、まさに中小企業での仕事の特徴と言えると思います。
そしてこのことは様々な魅力がある一方、課題点として考慮しておいた方が良い点もあると考えております。
この記事では、中小企業での仕事の特徴である「業務の上流から下流まで見れる」が、どうして求職者にとって魅力になるのか?
また、このことが引き起こす課題点について、解説をさせていただきます。
これからの職業選択や、中小企業での働き方について考える上で、一つの参考になれば何よりです。
※なお、中小といえども全てが幅広いという事ではありません。よくある傾向としてとらえて頂ければ幸いです。
① 業務の上流から下流まで見れることの魅力
1-1 業務全体がわかるようになる
一から十まで、全て自分で手掛けるため、当然ですが一つの業務全体の流れが分かるようになります。
たとえば、
何人かで分業をしている場合(上記の機械設計であれば協力会社。最近の営業については、アポ獲得は営業代行などの協力会社がある)、自分が担当している工程の仕事の都合だけを優先して、次の工程の事を考えなかったがために、後工程でトラブルなどが発生する場合があります。
1人が全体を見れることで、その業務本来の目的を理解し、各工程が何のためにあるのか?次の工程にスムーズに入る為に何をしなくてはいけないのか?などを考えられるようになります。
結果、業務全体に対する理解度が高くなり、その仕事を一人で完結できるスキルを身につけることができ、労働市場においても高い付加価値が出てきます。
中小企業で経験を積むことの、非常に大きな魅力であると思います。
1-2 自分のペースでできる
社内で分業をしていると、別担当の人は、自分が期待するペースで仕事をしてくれる事のほうが少なく、阿吽の呼吸で仕事が進むようになるのには相応の時間と信頼関係の構築が必要です。
自分一人で手掛ければ、こうした労力やフラストレーションは起こらず、自分が考えるペースで仕事を進められるのも大きな魅力になります。
1-3 分業で起こる、業務上の齟齬がなくなる
分業をしている中でよく起こるのが、「言った言わない問題」「言った通りのことをしない問題」ではないでしょうか。
ビジネスパーソンとしては、こうした業務上の齟齬が起こらないように丁寧にコミュニケーションをとっていくのは必須スキルではあります。
とはいえ、齟齬が起こらないのであればそれに越したことはありません。自分一人で手掛けていれば、当然こうした悩みは無くなります。
1-4 こだわりをもって、自分で全部できるやりがいがある
モノづくりをしている人であれば、自分のこだわりを余すことなく形にしてお客様に納品したい。
営業であれば、お客様のことは自分が一番よく知っているという自負をもって、自分が最後までお客様への対応をしたい、と思う人もいると思います。
自分のこだわりをもって全部できる事は、スキルを身につけることと同じくらい中小企業で働くことの魅力として挙げられると思います。
② 業務の上流から下流まで見れることの課題点
ここまでは、中小企業で働くことの魅力について挙げましたが、ここで挙げた内容は課題点とも表裏一体の面があります。
2-1 一つ一つの工程のスキルが浅くなる可能性がある
全ての工程をマスターするというのは、なかなか大変な事です。
大手メーカーの機械設計者であれば、ある家電製品の特定の部品設計だけを10年以上やってきた、という人も実際にいます。
その方は、その部品設計のスキルに特化しており、その部品のスタンダードについては幅広くやってきた技術者を超える引き出しがあるでしょう。
営業においても、例えば新規アポ獲得に特化した営業代行会社であれば、アポ獲得のためのテクニック、トークの引き出し、メンタルの強さなど、広くやっている営業と比べると非常に高いスキルがあります。
一から十まで自分で手掛けていると、一つの業務を完結できるという点でのスキルは高くなりますが、一つの工程を深める時間が取りにくい懸念があります。
下手をすれば、一人でできる人は一通りはできるけど、一つ一つの仕事は結構雑で、各工程のクオリティはそんなに高くない、という事に陥る可能性もあります。
2-2 一つの仕事に集中できないなる可能性がある
多くの仕事において、一つ一つの工程は動き方、頭の使い方などが異なるものです。
人の仕事は、同じ作業を続けると効率が上がり、色々すればするほど集中できず、効率が下がったりします。
特に人数が少ない中小企業では、本来自分の主担当ではない仕事が急に振られたり、人手が足りないからといってやらざるを得ないことも少なくありません。
色々なものが降ってくることにストレスを感じやすい人であれば、一つの仕事に集中できないことに悩む可能性があります。
2-3 負担が増える
一から十まで全てやるというのは、純粋にやる事が多くなるため物理的な負担が増します。
様々な工程、仕事を効率よくこなしていくことが求められるため、それなりに忙しさを感じることになりますが、それを苦痛に感じる方ですと、負担が大きいと感じる可能性があります。
2-4 業務が俗人化する恐れがある
一つの仕事を何人かで行い、業務内容を全体で共有していれば、いざ誰か一人が抜けた時でも、他のメンバーでカバーができます。
しかし一人で全てやっていると、その仕事を自分以外の誰かにお願いすることが難しくなり、急に休みを取るようなことがしにくくなります。
普段から自分一人でやっている分、いざ、自分が抜ける時に他の人間に共有しようとしても、うまく内容が説明できなかったり、細かなことを含めて引継ぎのハードルが上がったりする。
結局休みの日でも仕事の陽の携帯電話が手放せない、合間を縫って自分でやらなくてはいけない、という事になります。
自分一人でやる事で担当している業務が俗人化し、いざという時の対応が難しくなる懸念があります。
③ まとめ
私自身、現在は中小企業で仕事をしている中で感じるのは、
自分のこだわりを仕事で実現できている
自分というブランドをその仕事で作れている実感がある
そんな実感を得ております。
様々な会社を経験させていただく中で、潜在的に自分のこだわりをもっと表現したいという思いがあって、今こうした実感が得られているのだと思います。
大企業での仕事も、中小企業での仕事もそれぞれに魅力があり、どちらが優れているという話ではないと思います(大企業での仕事については、また後日開設できればと思います)。
中小企業に上流から下流まで見れるスタイルの仕事を、どこか自分が欲しているのであれば、解説した魅力や課題点を想定した上で、一度挑戦してみるのも良いと思います。
この記事が、中小企業での働き方を考える一つのきっかけになれば何よりです。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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