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ハード系技術者の平均年収はいくら?〈勤続10~14年のケース〉

人材獲得競争が過熱する中、獲得が難しくなっている職種の一つが技術者。

優秀な技術者を確保しようと、年収条件を上げている会社も多く出てきています。

一方、技術の道は一日にして成らず。一定以上の時間をかけて実務経験を積むことで、技術者として成果が上がり、市場価値も付いてきます。

今回は、勤続10~14年の日本の技術者について、厚労省よりリリースされている「令和3年賃金構造基本統計調査」から技術者の平均年収を取り上げます。

技術者は、いわゆるハード系関連(機械、電気など)とソフト系関連(IT、情報など)と分かれますが、ハード系を取り上げます(ソフト系は別日に解説いたします)。

対象技術者
・機械技術者(集計対象6079人)
・電気・電子・電気通信技術者(集計対象6017人)
・輸送用機器技術者(集計対象2068人)
・金属技術者(集計対象543人)
・化学技術者(集計対象1258人)

なお、本統計調査は最新版ながら2021年のデータとなります(調査は2022年に実施)。
2023年2月現在とは少し傾向が変わっている可能性があります。一つの参考指標としてとらえていただければと思います。

① 機械技術者

集計対象:6079人
企業従業員数別平均年収(カッコは対象の技術者数)
・1000人~(2669人)  604万9600円(月給35.86万円/賞与174.64万円)
・100~999人(2096人) 518万7500円(月給32.49万円/賞与128.87万円)
・10~99人(1315人)  484万8600円(月給32.84万円/賞与90.78万円)

1000人以上の会社と999人以下では、月給では3.5万程の差があります。
ただ、月給以上に差が大きいのは賞与。
1000人以上では年間約4.87か月に対して、100~999人で約3.97か月。10~999人で2.76か月

いわゆる大手企業の年商規模、収益の大きさが、そのまま技術者の報酬にも反映。特に賞与で色濃く出ていることがうかがえます。

一方、999人以下の中堅以下の企業は、技術力は秀逸な企業も多く、いわゆる「ニッチトップ」企業も多く存在し、長年に渡り安定経営をしている会社、無借金経営を続けている会社も多くあります。

しかし、数多くの下請け、協力会社を使ってモノづくりを進めている大手・準大手と、そうではない中堅以下とでは、大手・準大手の方が、大規模な取引額を獲る、効率よく稼ぐという点では上手といえます。

そのことから、技術力と報酬が必ず比例するとは限らないという実態も見えてきます。

② 電気・電子・電気通信技術者

集計対象:6017人
企業従業員数別平均年収(カッコは対象の技術者数)
・1000人~ (3765人) 593万7200円(月給37.24万円/賞与146.84万円)
・100~999人(1454人) 558万4600円(月給34.57万円/賞与143.62万円)
・10~99人(799人)    448万5700円(月給29.59万円/賞与93.49万円)

1000人以上と10~99人以下の会社で特に月給差が大きく、8万近く差がついています。賞与では約0.8か月の差ですが、月給差が賞与額の差にも影響しています。

一方、1000人以上と100~999人では、月給こそ2.7万円程度差がありますが、賞与はほぼ差がありません

電気・電子・電気通信においては、大手・準大手と中堅ではあまり差がなく、中小以下で大きな差が出てきます。

また、100~999人については、同規模の機械技術者よりも待遇が上回っています。技術力、稼ぐ力という面で、中堅クラスであっても大手・準大手企業に匹敵する会社が多数存在していることが考えられます。

③ 輸送用機器技術者

集計対象:2068人
企業従業員数別平均年収(カッコは対象の技術者数)
・1000人~(1510人)   611万2000円(月給35.94万円/賞与179.92万円)
・100~999人(467人) 459万9900円(月給30.68万円/賞与90.83万円)
・10~99人(91人)     389万5500円(月給26.98万円/賞与65.79万円)

1000人以上と100~999人では、既に月給5万以上、賞与も1000人以上で約5.0か月、100~999人で2.96か月と約2か月の差。

1000人~と10~99人では、月給差約9万円、賞与も10~99人で約2.43か月。2倍以上の差がついています。

これは、自動車産業に代表されるようなピラミッド型サプライチェーンの元、トヨタ自動車などメーカー群とサプライヤー群で収益に大きな差があり、特に2次請け3次請けと下がっていくほど厳しい収益の下で事業をしている現状がうかがえます。

④ 金属技術者

集計対象:543人
企業従業員数別平均年収(カッコは対象の技術者数)
・1000人~(123人)     542万9700円(月給33.25万円/賞与143.97万円)
・100~999人(265人) 480万3300円(月給30.61万円/賞与113.01万円)
・10~99人(155人)     410万0700円(月給29.59万円/賞与54.99万円)

1000人以上と10~99人では、月給差3万円近くだが、賞与は約4.32か月と約1.86か月で2.3倍以上の差。
100~999人と10~99人では、100~999人の賞与は約3.7か月。1.9か月近くの差だが、月給差は1万円程度。

金属技術者は、大手であっても年収が500万円台と、他の技術者ほどの水準ではありません。
特に10~99人規模になると、月給もさることながら賞与額が相対的に低い

中小零細業者の割合が、他の技術者領域と比べて多いこの領域では、廃業を余儀なくされる企業も多い。
秀逸な技術があっても、利益として付加価値を取りにくく、後継者も不足している現状がうかがえます。

⑤ 化学技術者

集計対象:1258人
企業従業員数別平均年収(カッコは対象の技術者数)

・1000人~(493人)    727万4200円(月給42.93万円/賞与212.26万円)
・100~999人(593人)532万4500円(月給32.78万円/賞与139.09万円)
・10~99人(172人)  521万5100円(月給32.93万円/賞与126.35万円)

1000人以上と100~999人では、賞与は1000人以上で約4.94か月、100~999人で4.24か月と0.7か月の差ながら、月給は10万円以上の差がついています。

100~999人と10~99人では、月給は10~99人が僅かながら上。賞与も100~999人が約0.4か月上回っている程度です。

化学系技術者の1000人以上における年収だけが、他の技術者と異なり700万円を超えています
一方、この領域では、999人以下の企業で差があまりなく、拮抗している状況もうかがえます。

半導体など多くの産業で世界の後塵を拝しているのとは異なり、素材系産業は日本は未だ強く、世界で見ても日本メーカーは大きなシェアを持ち、高い収益性を確保している状況を反映していると思われます。

まとめ

一般的に大手企業ほど待遇が良いといわれますが、統計上、確かにその事実は存在します。
特に賞与で差がついている領域が多くみられます。

一方、技術者としての仕事のやりがいという面でみると、組織化され、下請け、協力会社のハンドリングをメインにしてものづくりをする大手(特に機械、電気系)では、技術者としてのやりがいが満たされないという意見が根強く存在します。

転職を考えるのであれば、

  • 自分が本当に必要とする報酬を明確にする

  • どういうエンジニアライフを過ごしたいか

この2点から検討をしていくことが必要でしょう。

最後までお読みいただきまして有難うございました。


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