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DXの意味を正しく捉えれば「DX人材に何をさせるか」や「リスキリング」についての考えが整理できるのでは?という話

はじめに

以下のような記事がありました。

DX白書は「人材像が明確になっていないことが人材の獲得・確保において『必要なスキルやそのレベルが定義できていない』『採用したい人材のスペックが明確でない』などの課題につながっている」と指摘する。まさにその通りなのだろうが、私にはもっと大元の問題があるように思える。一言で表せば、DX人材に何をさせるのかが明確になっていないということだ。
例えば今、社内でDX人材を育成しようと、従業員に対してノーコード/ローコード開発やデータ分析手法などの教育研修を実施する企業が増えている。「DXを推進するために従業員のリスキリング(学び直し)を促し人的資本を厚くする」などと、投資家らの関心を集めるキーワードが並ぶこともあり、DX人材の育成はちょっとしたブームといってよい状況である。
しかし、DXに必要なツールや手法などを学んでもらうといっても、学んだ内容を現実の業務で生かせるのだろうか。もちろんローコード開発などのスキルを磨いて、DXプロジェクトに参画する人もいるだろう。だが、多くの人はこれまでと同じ部署で、同じ業務を続ける。「全従業員をDX人材に」といった威勢の良い目標を掲げる企業もあるが、全従業員が学んだことを業務に生かせるとは思えない。

日本企業のDX人材像は曖昧すぎる、リスキリングの前にやるべきこと | 日経クロステック(xTECH) https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00849/00100/

DX人材の議論になると、たいてい「AIを使ったことはあるか?」「Pythonが書けるのか?」「統計学は知っているか?」といった個別の項目の話になる気がします。そんなことより先に

彼らに何をさせるかを決めないと、スキルやレベルが決まらないのでは?

という点で今日は深掘りを行います。

「DX推進スキル標準」の人材類型

そもそも、DX推進人材のスキル標準というのは、わかりやすいものが経済産業省から公開されています。

「DX推進スキル標準」の人材類型の定義
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/skill_standard/main.html より

この図は非常にわかりやすいです。特に

デザイナーとサイバーセキュリティが追加されている

のがこの図のポイントで、いわゆるプログラマ・システムエンジニアに相当する「ソフトウェアエンジニア」や、統計学などを理解しているとされる「データサイエンティスト」以外にも、多くの職種がDXには必要であることを示しています。

詳しくは、以下の記事もご覧ください。

転職市場でもすでに気付かれ始めている

このような傾向は、転職市場で顕在化しています。

採用が増えているのはエンジニアだけではありません。最近ではマーケティングやプロダクト企画、新規事業開発といった職種の求人も増加中です。IT業界に知見のある企画職を求める企業が増えているのです。
人材を確保するため、採用ターゲットの幅も広がっています。例えばシステムインテグレーターや技術者派遣企業はここ数年、未経験者の採用を継続しています。また、家庭の事情などの理由で職歴にブランクのある人の採用も進みつつあります。
例えばもともとITに素養のある「産休・育休中」「産休・育休明け」の人を採用し、リスキリング(学び直し)によって新しい知識を身につけたうえで活躍してもらうといった動きが出てきました。こうした企業では在宅勤務、フルフレックスなどの制度を整えていることが多く、働く時間や場所に制限がある人も応募しやすくなっています。

活況続く2023年のエンジニア転職市場、企業による個人のキャリア支援も重要に | 日経クロステック(xTECH) https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00577/012000050/?

DXの本来の意味は、デジタルを使って新たな売り上げを立てることですから、そもそもソフトウェアエンジニアだけでなく、デザイナーやサイバーセキュリティ担当にも貢献してもらう必要があるのです。

おわりに ~ リ・スキリングとDX人材を正しく定義する

ここまで書いてきたように、これからのDX人材とはプログラミングができる人だけを指すのではないので、ITエンジニアが「コンサルタント方面に進む」「デザイナー方面に進む」「セキュリティ方面に進む」といった

別の方向性のスキルを身に着けることがむしろDX人材育成を意味する

と考えるべきでしょう。ChatGPTの活用を考えても、これからのITエンジニアはITの知識だけで食べていくのは超一流のスペシャリストしか無理となっていくでしょう。

そうした時に、コンサルタント方面に行く、デザイナー方面に行く、セキュリティ方面に行くために、新たなスキルを身に着けることが必須になっていき、

それを「リ・スキリング」と呼ぶ

という理解の仕方が一番正しい理解である気がします。ともすれば、リスキリングとは「ミドル以降のローパフォーマンス社員を社内でどうにかするためのeラーニングとか」のことをまろやかに言うためのフレーズと化しています。そうではなく、ここで本来のDXを改めて見つめ直すことで、DX人材育成の文脈の中で「DX人材育成」や「リスキリング」という言葉をもう一度捉えなおす必要があるのではないでしょうか。

(おわり)

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