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工場における熱中症防止の施策について

はじめに

昨今は「工場のスマート化」「工場DX」などと言われることが多くなりました。皆さんは、工場関係者が関心あることといえば「工場内のあらゆるデータが見える化されている」とか「AGVによる自動搬送」とか、そういった「デジタル化」とか「自動化/無人化」だとかをお考えかもしれません。

しかし、実際に現場の方が関心を寄せるテーマは、むしろ「工場の安全管理」だと思います。実際、「安全はすべてに優先する」という標語は、昔から日本の製造業のどこでも聞かれるフレーズで、現場のいたるところに掲示されています。

「安全は全てに優先する!」の看板(https://www.sumitomo.gr.jp/act/visits/04/ より)

安全というと、プレス機のような大型の機械に挟まれ・巻き込まれが起きたりとか、工場内の車両・フォークリフトなどに轢かれたりとかを想像されると思います。もちろん、工場ではそういった事故にも気を付けており、そちらに関しては以前別の記事にまとめましたのでこちらもご覧ください。

今回は、それらとは別に、工場内での「暑さ」の問題にフォーカスを当て、工場で取っている具体的な熱中症防止の施策について述べていこうと思います。

製造業の職場における熱中症の死傷者数

ここ数年、夏になると毎年「猛暑」の文字を見ている気がします。特に、今年はラニーニャ現象で夏が暑い、酷暑だという話も出ています。

今年の夏(6月~8月)の見通しです。6月は湿った空気が流れ込みやすく、梅雨入り早々、大雨に警戒を。7月は太平洋高気圧の北への張り出しが強まるため、早い梅雨明けの可能性も。厳しい暑さになりそうです。8月はゲリラ雷雨に注意。

早い「梅雨明け」 夏は「酷暑」か 今年の夏はラニーニャ現象続く 3か月予報
https://tenki.jp/forecaster/t_yoshida/2022/05/24/17551.html

東・西日本では、7月にかけて、梅雨前線や湿った空気の影響を受けにくく、梅雨明けが早まる可能性が高くなりました。さらに、北・東・西日本では、6月末~7月上旬の気温は平年より高いでしょう。今年は、いつもより早い時期から、熱中症の危険度がアップしますので、警戒が必要です。

東・西日本 早い「梅雨明け」の可能性が高まる 熱中症の危険度アップ 1か月予報
https://tenki.jp/forecaster/keiko_mochizuki/2022/06/23/18018.html

このように、もはやここ数年は日本全体的に暑いのですが、では具体的に工場では何人くらい熱中症の被害に遭っているのでしょうか?

厚生労働省は毎年統計を発表しております。令和3年(確定値)を見ると、

令和3年における職場での熱中症による死傷者(死亡・休業4日以上)は、561人(前年比398人・41%減)であり、全体の約4割が建設業と製造業で発生しています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25950.html

令和3年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25950.html

とあります。ここ10年で見ても、死傷者は毎年400人以上で、多い年は1000人を大きく超えることもありました。

職場における熱中症の死傷者数(厚生労働省の統計より)

WBGT

WBGTとは、熱中症の話題になると必ず出てくるキーワードで、「暑さ指数」を指しています。

WBGT値とは
気温に加え、湿度、風速、輻射(放射)熱を考慮した暑熱環境によるストレスの評価を行う暑さの指数。

令和3年「職場における熱中症による死傷災害の発生状況」(確定値)を公表しますhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_25950.html

WBGTは、温度と湿度が分かれば簡単に算出できるので、簡易的な熱中症危険度判定に使えます。明確なソースはありませんが、ここ数年で工場などでも「WBGT」という単語の認知度はだいぶ高まってきていると感じます。

ここまで述べた通り、製造業では多くの被害が毎年出ているわけですが、ここからは、それに対して具体的にどのような対策を取っているのか?をご紹介しましょう。

熱中症が起こりやすい現場の例

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