見出し画像

会社をつくってからいちばん苦労したこと

絵本ナビは、サービスとしては順調に成長し続けてきましたが、いわゆる「死の谷」を越えるまで(キャッシュフローがプラスになるまで) のファイナンスには苦労しました。一方で逆説的ではありますが、いちばんうまくいったことでもあります。また、ベンチャーと子育ての似ているところについても少し述べたいと思います。

ベンチャー特有の課題

ベンチャー特有の課題とは、これまでにないサービスであればあるほど、世の中に受け入れられるまでに時間がかかること。それゆえ、キャッシュフローがプラスになるまでの資金が必要になることです。

画像1



絵本ナビも例外ではなく、「絵本のクチコミサイト」は、あれば便利かもしれないけれど、なければないで世界はまわっているわけです。

さらに絵本ナビのような情報サイトの場合、

① サイトを使ってもらえるようになるハードル
② そこから利益を得られるようになるハードル


と、二つのハードルを越えていく必要があります。

例えば世の中に受け入れられて、無料のサービスだからと使ってくれるユーザーが増えていった(一番目のハードルを超えた)としても、何らかの形で運営費用に見合う収入が入ってこなければ事業としては成立しないわけです(二番目のハードルは「マネタイズ」と呼ばれます)。

ベンチャーファイナンスの最大のテーマ

そこで、「死の谷」を超えるまでに不足する資金をどう調達するか、という課題が必ず発生します。これがベンチャーファイナンスの最大のテーマです。

画像2

(実際はこれは「生き残るベンチャー企業にとって最大のテーマ」であって、「そもそもキャッシュフローがプラスになる日が来るのか」という本質的な課題が存在します。キャッシュフローがプラスになることが確実なら話は単純ですが、それが不確実なまま資金調達しなければならないのが難しさでもあります。創業者は最も自社の成功を信じている人間ですが、未来は常に不確実なものです。)

さて、このテーマについて、間接金融(融資など)と直接金融(出資など)の両面で様々な資金調達を行い、クリアしてきました。
これまで絵本ナビに出資いただいた株主はざっと以下の通りです。

(2005年)ベネッセ/双日/個人投資家
(2006年)オリックスキャピタル/日販
(2010年)グロービスキャピタルパートナーズ(GCP)/個人投資家
(2013年)電通(DIP)
(2015年)イード
(2020年)サスケハナ・インターナショナル・グループ(SIG)他
(2022年)日本テレビ/SIG/KADOKAWA/講談社/ポプラ社
※INITIALの定義によれば現在シリーズBということになります。
(出資いただいた株主の皆さんにはとても感謝しています)

実は、これらのファイナンスの経緯については、ケーススタディとしてまとめられており、グロービス経営大学院のベンチャーキャピタル&ファイナンス講座のDay1で受講者の皆さんが「絵本ナビの財務戦略」を学ぶことになっています。

さらっと書いてはいますが、ファイナンスに関してはまったくもって「HARD THINGS」(とっても大変なこと)の連続でした。まさに、本が一冊書けるほどです。

ただこれを「お金で苦労した」と言うと世知辛いのですが、「ベンチャーとしてお手本となるようなファイナンスをして死の谷を乗り越えた」というと、ちょっとカッコいいわけです。

両者の違いは、そもそもどちらが「普通」なのか、です。
ベンチャーが資金調達に苦労するのは「普通」で「合理的」なことなので、冒頭で、「いちばん苦労したことである一方で、いちばんうまくいったこと」と書いたのは、つまりそういうことなのです。

ベンチャーと子育ての似ているところ

わかっていれば「そういうもの」として対処できるけれども、知らないとわりと大変なことになる、というところが似ていると感じていて、僕はよく引き合いに出すことにしています。大変なのは普通のことで、苦労しながらも着々と育っていく、というところも似ていますね。

例えば2歳くらいでイヤイヤ期が来る、とわかっていれば「来たな...これが...そうか...」と思える(大変なのは大変だけれど)のですが、知らないと「うちの子どこかおかしいのでは?!」と焦ってしまったりします。

子育てはどうでしたか?と聞かれて、「小さいころ熱を出したり、トイレトレーニングが大変で・・・」なんて答える人はあまりいないかな、と思います。
なぜならそれは「普通」だから。

そういう意味で、僕は人から「事業はどうですか?」と聞かれるときまって「順調です」と答えてきました。
なぜならベンチャーが苦労するのは「普通」だから、です。

先輩経営者やキャピタリストの方々から、ステージ毎に起きる重要な課題について教わりながら、着々と課題をクリアして前に進んでいく、ということは(大変ですが)実に楽しいことです。

そしてふと立ち止まって見てみると、「ああ、ずいぶん大きく育ったんだな」と充実感が感じられるところも似ていると思っています。

ここからの課題

さて、絵本ナビは、時間がかかりながらも、着々とJカーブをたどってきています。

画像3

ここからは、このカーブをどれだけしっかりと上がっていけるかが課題になります。

そして、このカーブを共に進めていってくれる仲間を求めています。

<絵本ナビでは、一緒に働いてくれる仲間を求めています>

・現在の採用情報については下記のコーポレートサイトをご覧下さい。

▼twitterでは毎日何かつぶやいています。

▼こちらもぜひ合わせてお読みください!

あとがき

※実はもうちょっとリアルに苦労話を書こうと思ったのですが、このエントリーはあくまでこれからのことをメインにしつつ、これまでをざっと知っていただくものとして位置づけていますので、一般化した書き方にしました。もうちょっとリアルな話しは直接聞いていただくか、過去にベンチャーイベントでお話しした以下の記事をお読みいただければと思います。

※「ベンチャービジネスのJカーブ」「死の谷」といった言葉は一般的に使われていますが、明確に定義されているとは限らず、あくまでイメージとして書いています。
※「HARD THINGS」は、ベンチャー経営者に人気の書籍です。また紹介する機会があればと思いますが、興味があれば読んでみてください。

(2021/1/24追記)2020年の増資の記載を追加しました。
(2022/5/1追記)最新情報で更新しました。
(2022/5/10追記)2022年の増資の記載を追加しました。
※「INITIALの定義によれば現在シリーズB」というのは、2015年の株式異動時がM&Aで一旦優先株式がリセットされていることによるものです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?