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教室のアリ(前書き)

オレはアリだ。長年、教室の隅にいる。オレの生活はみんなが落とした大きな給食を食べ、寝る。それだけだ。のんきに見えるが二日ごとに、オレの身に危険が迫ってくる。それは、そうじの時間だ。死んでしまうのではないかと思ったのは一度だけではない。オレの何倍も何十倍もあるホウキに捕まえられ、引きずられ、ちりとりに流し込まれたんだ。ラッキーなことにそこからオレの足の速さをいかし逃げ切ることができたが、あの時、子供に見つかり、オレの体よりもでかい目で睨みつけられたら、怖くて動けなかっただろう。

 でもアリには、人間とは全く違う視点で物事を考えられるんだ。オレは小さい。人間が使っている消しゴムも、筆箱も体の何倍もある。ものさしはときどき道路にもなるぞ。

 オレの楽しみ、悲しみ、苦しみ、いろいろ全部をいまから話すぞ。


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