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私のサポーター感

INDEX
■サポーターに送った「私のサポーター感」
■サポーターは「利他の塊」
■「生きていることの証」を得るために

 プロスポーツビジネス界に来て20年目に入った。早いものでそれまでの日産自動車サラリーマン生活22年とほぼ同じ長さにまでなった。3年間の限定出向の予定で横浜マリノスに来たのだから、この長さには当の本人が一番ビックリしている。正直に申し上げると、プロスポーツ業界に出向を命ぜられた時は、一瞬左遷かと思ったくらい車屋としてのプライドを傷つけられたものだった。それが自ら転籍を志願し、幾つかのクラブで経営の一翼を担い、曲がりなりにもプロスポーツ経営のプロとして今日に至っているのには幾つかの理由がある。ここでその些細を詳らかにするつもりはないが、私をこの業界に留め置いた大きな理由の一つである「サポーターの存在」について、少し深掘りすることを目的としたコラムをここに記しておきたい。また、ここのところ少し重めの内容が続いたので、今回は肩肘張らずにお読みいただけるものをということも心がけたい。

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■サポーターに送った「私のサポーター感」

 過日私のTwitterからかつて私が在籍していた清水エスパルスのサポーターに「私のサポーター感」というメッセージを送ったことがある。おちゃらけているものもあるが、概ね真面目に感じていた私の本音である。先ずはそのメッセージを見ていただければと思う。ここでは臨場感も大事なので、写真を多めに使うことにしよう。(文章は私の本音をより忠実に表せるよう、多少の微修正を施した。また使用している写真は過日私のTwitterで使用したもの。)

★負けて凹もうが荒れようが、必ず次の試合には来てしまう。
★勝つと概ね真っ直ぐ帰らず、大概は祝杯にはしる。
★アウェイ勝ちでは、帰路も誇らしげにユニフォームのまま。

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★遠路ゲーム参戦ほど愛情の証と気合を入れて乗り込んでくれる。
★コンビニや駅フォーム、信号待ちで目が合うと明るく優しい。
★降格時の悲壮感とは裏腹に、観光にグルメに結構アウェイJ2を楽しんでいた。(多分一年限定)
★かなりの確率で、徳島北九州あたりまでは車で来てしまう。
★J2アウェイでは相手ホームサポ数を凌ぐことも少なくなく、先方に大金を落としてくれるので、相手フロントにも大変ありがたがられた。
★「勝化試合」などダジャレが上手くチーム愛もある。

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★一度ワラジを脱いだ選手には、どこに移籍しても基本優しい。
★TV観戦<現地参戦で気合を入れ、お金も落としてくれる。
★敗戦翌日出社時には、同僚に「申し訳ない」と謝ってしまう。
★衣類等の装身具には、自然とオレンジ物に目が行ってしまう。
★相変わらず長い私の話に、ほぼほぼ静か?に聞いてくれた。

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★チームやサッカーだけでなく、業績も気にかけてくれる。
★グッズ評価云々問わず、お布施と称して散財を惜しまない。
★勝った時は、頼めばグッズ売れ残りのないようノリ買い、義理買いをしてくれる。
★新スタジアムは勿論欲しいが、思い出の詰まった日本平も大事にしたいと思っている。

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★私生活中は、基本そっとしておいてくれる。
★「左さん」でいいからと言っても、かなりの人が未だに社長と呼んでいる。
★降格した直後にもかかわらず、私の長い話を黙って聞いてくれた。そして信じてくれた。
(https://youtu.be/7TDFT2PrqPE)
★私の一番の戦友久米GMが逝ってしまった時に、一緒に泣いてくれた。

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■サポーターは「利他の塊」

 私のサポーター感は、皆さんにはどう映っただろうか。また、もし皆さんがひいきにしているプロスポーツチームがあるとしたら、どの位私のサポーター感に当てはまるだろうか。書かれていることを通じて、サポーターが「お客様」というよりどれも「愛すべき同志、戦友、仲間、身内」のように思っている私が見えてくると思う。愛するチームの勝利のために、それを支えるクラブのために、自らの時間と財、労力まで投げ打ち、支え盛り上げようとする集団は、最早ただのお客様と呼ぶには失礼だろう。更に、チームの勝利だけでなく、フロント幹部の訃報に際し、共に涙してくれたり、突然の移籍で去っていく選手のために、徹夜で作った横断幕で精一杯の送り出しをしてくれたり、もっと言えば、本来敵となる相手チームのサポーターのご不幸を我が事のように悲しんだり等々…自分を犠牲にしてまで愛する者に寄り添おうとする姿勢は、身内も同然だとしか私には思えない。

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 時には、愛するチームのためにフロントに牙を剥くこともあった。半端な仕事をしていれば叱られることもしばしば。だが、自らを犠牲にしながらサポートしてくれていることは重々承知しているので、皆んなに喜んでいただくことが叶わなかった時のお叱りから逃げようなどという気持ちは全く湧いてこない。むしろ、それで気が済むのならサンドバッグになることも、身内への仁義のうちとも思ってしまう。2015年に降格した際のホームラストゲーム後にゴール裏に行って長々と降格のお詫びと一年で復帰することについてお話しさせていただいた時も、バッシング止むなしと腹を括って行ったものだ。その後も敗戦でもツイートし続けたり、期待を裏切る状況の時ほど、極力何らかの発信をし続けたのも、皆んなの心の痛みを受け止めたい一心からであった。それは何故か、サポーターが「利他(自分の利益より、相手の利益を思う心)の塊」だから。自らを犠牲にしながら愛する者を後押しし、時には守り、助けてきたことを知ってしまったからだ。皆んなが身を切り続けてきてくれたからには、こちらも如何なる時も身を切らねば寝覚めが悪かろう。まさに私とサポーターは利他の塊として一つになっていると、誠に勝手ながら私はそう思い込んでいるのである。

■「生きていることの証」を得るために

 少し大袈裟な話になるが、「仕事をする」ということは、食うため、生きるためではあるが、もっと深いところを煎じ詰めれば「自分が生きていることの証」を得るためだということを、サポーターとの関わり合いを通じてしみじみ感じることが出来た。「アイツらは利他でそこまで身を切ってくれた。ならばオレは自身のクビをかけてでも同じように利他でここまでは身を切ろう」と、これまでの自身の身の丈を超えたエネルギーを出す。このことの繰り返しをしていると、知らぬ間に今までの自分を常に超えていく自分が出来ていく、そのさまは正に自分が豊かになっていく、「生きていることの証」そのものだという充実感に到達し、同時にそれを成さしめたサポーターに深い感謝の念を覚えるのである。

 サポーターがいて、私は利他的に自己の成長がなされ、サポーターがいて、私を支えてくれる全ての人に尽くすことが出来、サポーターがいて、喜怒哀楽の増幅が叶い豊かな人生を得ることが出来た、私はそうとまで考えている。この一点だけでも、日産に帰らず、この業界に骨を埋めるに足る充分過ぎる理由であろう。

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 エスパルスを去る際、あるサポーターグループからこう言われた。「社長、ありがとうございました。これからはエスパルスだけじゃなく左伴さんも応援していきますから^ ^」恥ずかしながらこの時ばかりは不覚にも涙腺が緩み、感無量となったものである。さて、来年早々スタートするB3リーグで、今度はブースターさん達と同じように「生きていることの証」を積み上げていけるのかどうか、今から楽しみでならない。

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