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「堤防と水辺空間」①現状 にぎわい創造に地域の声反映

 石巻市の沿岸部は東日本大震災の津波で被災したが、「活力ある街の再生を」と行政や有識者、住民が協議を重ね、災害に強い新しいまちづくりに奮闘してきた。その一つが旧北上川河口部に整備された河川堤防。川と共に歴史を紡いできた石巻の復興の象徴でもあり、特に中心市街地にはにぎわいと憩いの場となる「堤防一体空間(通称・石巻かわまちオープンパーク)」も完成した。

 河川堤防は津波や高潮、洪水から地域を守る重要な防御線として平成25年から国が整備し、両岸計約15キロ(曾波神大橋近くまで)にTP(東京湾平均海面高)7.2ー4.1メートルの堤防を築き、今年3月に完工した。

 地震や津波に耐えうる粘り強い構造とし、堤防空間をにぎわいあるものにするため、日常的に散策できる居心地の良い場作りや歴史と文化の尊重などを基本方針に据えた堤防作りを実施した。川湊として栄えた石巻の良さを残すため、計画段階から住民の声も反映。140回以上も地域と協議し、川と人のつながりを重視した。

 これまで無堤防地区だった中心市街地周辺は、津波で被災した用地などを買収して堤防を新設。堤防の高さでは「檻のような堤防はいらない」「高い堤防を作るより、川を眺めながら気持ちよく過ごせるようにしては」との声が多かった。これらを踏まえ、まちに圧迫感を与えないよう、勾配のある盛り土形式の堤防にし、景観に配慮したことも特徴。高所作業車を使った高さ体験会も催し、認識のずれが出ないよう、地域と足並みをそろえた。

 こうして令和元年に右岸側の中心市街地周辺に完成したのが堤防一体空間。かわまち交流センターから下流200メートル区間で市民や観光客が集えるにぎわいと憩いの場とし、いしのまき元気市場と堤防をつなげるなど市街地との連続性を意識した。雄大な川を望む景観と居心地よく滞在できる堤防空間が評価され、昨年11月に土地活用モデル大賞で、「都市みらい推進機構理事長賞」も受賞した。

 時折イベント開催や移動販売車の出店もあり、休日は市民が飲食を片手に川辺を歩く光景も見られる。現在はコロナ禍のため積極的に人を呼び込みにくい状況だが、地域活性拠点として使わない手はない。ここから楽しさを享受できるまちになれば人も自然と集まる。今後考えるべきはその方策と使い方だ。






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