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「困窮者支援」 ①課題 見えぬ家計 早期対応の壁

 「生活困窮」―。個々の事由や社会情勢など、多種多様な要因が絡み合うことで、時に日々の生活が立ちいかない状態に陥ってしまう。近年はコロナ禍による離職、収入減、借金、学校・保育施設の閉鎖などで従来からの困窮者はその度合を増し、新たな家計急変世帯も生じている。生活の破たんは命に関わる。早期に専門機関とつなぎ、各種支援で改善を図るべきだが、家計の内情は見えにくく、困窮者の相談を受けるまで誰が支援対象か分からない視認性の悪さが発見を遅れさせている。

 コロナ禍の不安定な社会情勢において、金銭的な生活困窮は決して他人ごとではない。生活に困窮している人の多くは、以前まで普通の生活を送っていた。日常の暮らしは複数の柱で維持されている。とりわけ「収入」「健康」「家族」の役割は大きく、この3本の柱が傾くことは暮らしの基盤の傾きにつながってしまう。

 社会は核家族化が進み、家計を支えるため共働き世帯が主流。それがある時、事故や病気といった想定外の出来事で、どちらかの一方、あるいは双方が働けなくなった場合に今の生活を維持できるだろうか。

 70代の親の介護をしながら家計を支えてきた40代の息子が事故や病気で働けなくなる。母子・父子家庭で、子どもの預け先を確保できなくなり、仕事に出られない。こうした不測の事態に、震災前後の借金や家族関係のもつれ、心身の病が加わると個人の力では解決が難しい事態となる。

 困窮者を早期に見つけ、専門機関につなぐことで要因、課題の解決に導ければよいのだが、肝心の困窮者を把握するのが難しい。理由はさまざまで「困窮を表に出したくない」「家庭の内情を言えない」という声もあれば、外に助けを求められない状況の人もいる。

 もともと地域とのつながりが強い高齢者であれば、見守りや訪問活動などアウトリーチで発見や気付きにつながることもあるが、震災後に引っ越してきた人、地域とのつながりが希薄な若年層の実態は見えにくい。結果的に、困窮者自らが生活に限界を感じて相談窓口を頼った際にようやくその存在を専門機関で認知する状況だ。この相談への一歩を踏み出すことも勇気が必要で、救いの手を求める力を失い、命を絶つ人も実際にいる。

 家庭は見えても「家計」が見えない。命に関わる問題でありながら、誰が支援対象なのかもわからない現状をいかに改善していくか。繰り返すが、収束の見えないコロナ禍は、一層家計をひっ迫させており、地域の支援対象はさらに拡大中。支援の手を確実に届けるためには、対象者の掘り起こしが急務である。


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