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「地域の養殖業と陸上養殖」 ③対応 奮闘する漁業就業者

 若い世代が水産業に挑戦する取り組みにより、漁業協同組合では世代交代だけではなく、他地域から移住した若者が組合員になるケースも見られている。石巻市から委託を受けた一般社団法人フィッシャーマンジャパンが行う「水産業担い手センター事業」により、沿岸部に全国から若者が集まり、漁業者の門をたたく。その数は約40人。中には正組合員となり区画漁業権を取得する例もある。

 石巻市雄勝町小島でも、大阪府出身の三浦大輝さん(27)が雄勝湾支所の正組合員となり、新たな一歩を踏み出した。三浦さんは平成29年に漁師体験に参加し、水産業の魅力に気づいた。その後、小島で養殖業を営む佐藤一さんに弟子入りし、ギンザケやホタテの養殖に携わってきた。

 三浦さんが正組合員となったのは今年2月。養殖を営める漁場を与えられ、新たな一歩を踏み出した。5月には佐藤さんのもとで自ら育てたカキを使い、地元の末永海産㈱の作る「牡蠣の潮煮」とコラボレーションし、商品を展開。三浦さんは実際に売り場に立ち、買い物客らに商品の魅力を伝えた。「消費者の人たちに生産したものを直接販売できることは、とてもうれしかった」と話す。

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正組合員となった三浦さん。漁師の真価が問われるのはこれから

 カキの養殖をスタートさせるにあたり三浦さんは、ロープなどの資材で200万円ほど費用がかかったという。それなりに大きな投資であり、ホタテやホヤ、ギンザケになるとさらに設備投資を要す。

 「長く漁師をしている先輩方は、費用をしっかりとかけて養殖業を営んできたのが分かる。積み重ねの重さを感じる」

 カキも出荷するまでには数年がかかり、現在の規模では独立するまでの収入も得られない。親方のもとで働きながら、徐々に規模を拡大していく考えだ。

 海面養殖は世襲によって親子で漁場や設備を引き継ぐ場合は比較的容易だが、新規就業となると金銭的負担はかなり大きい。正組合員として認められても、元手が無ければ養殖業を始めるのは難しい。浜によっては子世代への引継ぎが進んでいるが、多くの地域では10年後、20年後に漁師の数がさらに激減する未来が待っている。【渡邊裕紀】

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