就農第一歩は体験から 担い手センター・石巻百姓塾 男女5人特産セリ収穫
石巻市農業担い手センターは29―30日、農業者の担い手確保に向け、北上町の同センターで「石巻百姓塾」を開いた。県内外から就農希望者や農業に興味を持つ人が集まり、旬を迎えたセリの収穫体験や農業者を交えたセミナーに参加した。同センターは農業者や関係機関との連携で、これまでも農産物の収穫や地域文化、暮らしを体験するイベントなどを催し、就農情報を提供しながら、アプローチしている。【渡邊裕紀】
同センターは一般社団法人イシノマキ・ファームが運営。石巻市は農業者の高齢化による担い手不足が課題の一つであり、同センターでは就農を希望する人たちへさまざまな農業形態を紹介し、支援を行っている。
「石巻百姓塾」もその一環。今回は県内青果物で初めて地理的表示(GI)保護制度に登録された、同市河北町の伝統野菜「河北せり」に着目した。登録で知的財産としてブランドの保護につながるため、競争力も高まるという。
河北町では昭和35年ごろから栽培体系が統一され、57年には出荷規格を見直すなど伝統野菜の継承に力を注いできた。生産者は23人いるが、やはり高齢化などで担い手不足が深刻という。
百姓塾には仙台市や埼玉県などから男女5人が参加。セリは隣の北上町でも栽培されており、約600平方㍍のセリ田で収穫体験に臨んだ。水温5度の水に腰まで浸かり、泥を掘りながらセリを引き抜いた。収穫後は流水で泥を落とし、商品価値を高めるため、葉の色などを確認しながら選別した。
昼食ではこのセリを使った天ぷらが提供され、参加者は舌で味も確かめた。その後は現役農業者から就農について学ぶセミナーがあり、セリ栽培を一から学べる貴重な機会となった。
川崎町から来た自営業、宮川卓士さん(30)、絢絵さん(27)夫婦は「冷水に浸かっての作業はとても大変なことだと痛感した。普段何気なく食べているセリの生産現場を体験できるのはとても貴重」と話した。埼玉県から参加した会社員桑野毅さん(30)は「石巻に移住を考えていて仕事の選択肢として農業を体験したいと思った」と語った。
同センターは今後も就農体験を通じて担い手確保や育成に力を注いでいく。イシノマキ・ファームの石牧紘汰さん(27)は「地域の農業者と連携することで、伝統を絶やさないことも重要。農業に携わる自分も含め、若い世代をさらに巻き込んでいければ」と思いを込めた。
最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。