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石巻圏摂食嚥下研究会「食べる輪」presents 食べる喜び いつまでも ⑤

食べる輪Q&A 

このコーナーでは、読者の皆さんからお寄せいただいた質問について、「食べる輪」の会員さんに返答をいただきました。

 今までは摂食嚥下障害や誤嚥性肺炎について症状や原因を踏まえて、ケアや対処・訓練方法などを紹介してきました。今回は薬の内服についてQ&Aを交えてご紹介いたします。

Q1.薬の上手な飲ませ方について教えてください

A.経口投与の場合 錠剤の場合は、服薬ゼリーの中に埋めて飲んでいただくと良いでしょう。食後よりも食事中に内服すれば、咽頭や食道で止まってしまっても、続いて入ってくる食物におされながら胃まで運ばれるので安心です。

 粉薬を直接口に入れると、口の中に広がりむせることがありますので服薬ゼリーなどに混ぜて内服する方法があります。錠剤を砕いたり、カプセルの中身を出したりして食事に混ぜる場合もありますが、この方法は、食べ物の味が変わってしまったりして、かえって服薬や食事をいやがられてしまう場合があります。

A.  経管投与の場合 錠剤を砕いたり、カプセルの中身を出したりせず、錠剤・カプセルをそのまま温湯に入れて崩壊・簡易懸濁させる「簡易懸濁法」があります。薬剤によっては「簡易懸濁法」に適さないものもあり注意が必要です。

Q2.飲み込みやすさを考慮した薬にはどんなタイプがありますか

A. ゼリータイプや、小さな錠剤にしたタイプ、また水を含むと速やかに崩壊するタイプなど、飲み込みやすさを考慮した剤形の薬が発売されています。

 嚥下障害を伴った方にも、またそうでない方にも「服薬のしやすさ」を求めて多くの製剤が開発されています。

 例えば、OD 錠は唾液(少量の液体)で崩壊し、水なしでも服用しやすい製剤として開発された剤形です。しかし、口腔が乾燥していたり、嚥下機能が低下している状態で水なしで服用すると、崩壊せずにそのままの形で口腔内や咽頭などにとどまることがあります。錠剤が口腔や咽頭などに長期残留すると刺激で局所の炎症や潰瘍を形成することが問題となります。特に高齢の患者さんではOD 錠であっても確実に嚥下され、口腔内や咽頭に残留がないことを確認することが必要です。

Q3.誤嚥性肺炎の予防に効果のある薬剤などはありますか?

A. 嚥下反射や咳反射が鈍ると誤嚥を起こしやすくなりますが、嚥下と咳の反射を司っている神経伝達物質にはドパミンとサブスタンスPとがあります。したがって、ドパミンやサブスタンスPを増やす、あるいは分解を抑制する成分は、嚥下と咳の反射を改善させ、誤嚥予防つまりは誤嚥性肺炎の予防につながると言われています。

 例えば、降圧剤の中には、サブスタンスPの分解を阻害する作用を有し、嚥下や咳の反射を改善させる薬剤があります。

 また、大脳墓底核でドパミン量を増やすことにより嚥下反射を促進させる作用を有する薬剤などが知られています。詳しくは医師、薬剤師にご相談ください。

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 最後になりますが、「欠かさず服薬しています」と言っている患者さんについても本当に「薬が飲みこめているか」に十分注意してください。嚥下機能を確認し、服薬に嚥下機能の壁はないかをよく検討し、必要であれば剤形の変更や服薬の工夫をすることが出来ます。薬剤師がお手伝いしますので、いつも行っている薬局で気軽にご相談ください。


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嚥下リハビリ体操 その5
のど仏を鍛える「あご持ち上げ体操」

◎効果…のど仏を上下させる筋肉を鍛え、咽頭残留(のどに食べ物が残ること)を少なくする。

【方法】
① 下を向いて、力いっぱいあごを引く
② ①の状態のまま、あごの下に両手の
  親指をあて、力いっぱいあごを押し返す。
  (あごは下に向かって、両親指は上に
  向かって力を入れ、押し合う状態)
③この状態を5秒間保持する
④毎食前に10回ずつ行う

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★あごと親指が押し合っている状態のときに、口を大きく横に広げて『いぃーーーー』っと発声してみましょう。
★下線部の運動を、のどE体操といいます。あご持ち上げ体操と、のどE体操を併せて行うとより効果的です。

■監修

食べる輪_菅あゆみ_筆者プロフィール-01

疑問・質問受け付けます

〒986-0874 石巻市双葉町8-17
(株)石巻日日新聞社 摂食嚥下障害質問係 メール media@hibishinbun.com


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