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避難支援アプリ実証実験 約2分で100人受付完了 女川原発重大事故を想定

 県は22日、東北電力女川原発で重大事故が発生した際の住民避難に活用できるスマートフォンアプリの実証実験を県庁で行った。職員100人が住民役となり、避難所に貼られたQRコードをスマホで読み取るなどし、混雑が懸念される避難所での受け付けがどれだけ迅速化できるのかを検証。従来の避難受付方法と比較しつつ有用性を示した。県は年度内に行う原子力防災訓練でもアプリを活用し、結果検証した上で運用を始める考え。

鍵はマイナカード取得率

 現状の広域避難計画では、避難所設置自治体が「避難所受付ステーション」を設け、原発30キロ圏内の住民を避難先に振り分ける。ステーションでは避難者が個人情報を登録する必要があり、名簿記入に時間を要すなど課題があった。

 この解消に向け、県が独自開発したのが今回のアプリ。スマホにダウンロードし、個人情報を登録しておくと、重大事故時、個々のスマホに具体的な避難先が指示される。避難所到着後、会場のQRコードを読み取ると県のシステムで「避難完了」とみなされる。受付用紙の手書き記入時間を省くことで迅速な避難につなげ、職員負担も軽減できる。

避難所に貼られたQRコードをスマホで読み取り、受付を済ませる県職員

 実証実験では村井嘉浩知事が市町村長らにアプリの使い方や利点を説明。訓練はアプリを使用するか否かの2通りで各10分間検証した。使わない手書きでの受付は100人中32人しか手続き完了できなかったが、アプリ使用時は約2分で100人が完了した。

 村井知事は「昨年度の訓練ではステーションでの交通渋滞が浮き彫りになったが、アプリを使えば非常にスムーズな避難が可能」と述べた。開発を手掛けたポケットサイン=東京都=の塩谷明達社長は「住民の半数がアプリを持てば、避難時間短縮に劇的な変化が期待できる」と語った。

 訓練を見守った須田善明女川町長は「有用性が確認できたのは前向きに捉えたい。今後はいかに住民に周知していくかが鍵」、齋藤正美石巻市長は「驚くほどの速さ。石巻で(アプリに関する)勉強会なども催したい」と話した。

 ただしアプリはマイナンバーカードと連携して使うため、住民はマイナカード取得が必須。8月末時点の取得率は石巻市39.4%、東松島市42.7%、女川町47.6%と半数にも満たない。村井知事も取得率向上を「これからの大きな課題」とした。

 アプリには原発事故避難支援のほか、デジタル地域通貨やタクシー割引など複数の機能を備えることを想定している。【山口紘史】





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