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中心部観光地化でにぎわい創出 女川町 「楽しい、面白い」詰め込む

 震災後、女川町は原状復旧にとどまらない新しい港町再生に公民連携で臨み、「身の丈に合う」独自の地域づくりを推進してきた。駅前や海岸広場など作り上げた空間を生かし、町民も観光客も「何だか楽しい、面白い」を享受できるまちを目指してきた。これを後押しするかのように、今年は国の重点道の駅に指定された駅前商業エリアが「道の駅おながわ」として開業した。今はコロナ禍のため難しいが、いずれ交流人口拡大のさらなる起爆剤になりそうだ。

 町内にはJRや国道398号、離島航路ターミナルなどさまざまな交通機関があり、町はこれらを生かし、町中心部を観光地化することを国に提案し、重点道の駅に登録された。既存の商業観光施設が道の駅になるのは全国的にも珍しい。

 駅前は、道の駅に指定される前から活気があった。飲食店では旬の魚介類を使った飲食物を提供し、休日の昼時は長蛇の列。海が見える景観も相まって家族連れがこぞって訪れる人気スポットだ。道の駅となった今後は新たな観光客が足を運ぶ契機になる。

今年4月、既存の駅前商業エリアが「道の駅おながわ」として開業した

 親子で訪れる理由の一つには、魅力的な「子どもの遊び場」がある。今夏、海岸広場にオープンした「マッシュパーク女川」はウミウシなど海の生き物をイメージした彩り豊かな遊具が並び、休日平日を問わず、子どもたちの楽しそうな声が響く。

 魅力的なまちづくりは観光客に限らず、町民にとっても暮らしやすいものでなくてはならない。今年は住民の命と財産を守る女川消防署が、旧女川小体育館裏の高台に移転復旧したほか、同じく女川小の旧校舎校庭跡地には町立「しおかぜ保育所」も新設。0-5歳児まで最大150人受け入れ可能で、子育て環境の充実が図られた。

 交通事情では、国道398号で石浜と桐ケ崎を結ぶ「崎山トンネル」が開通。日常的な交通はもとより、災害時も安全な避難が可能となった。一方、早期着工が望まれているものの依然、具体の工事日程や事業費が見えないのが、町と石巻市を結ぶ398号石巻バイパス沢田工区。女川原発で重大事故が発生した場合、避難路になり得る道路であり、町は県や国に早期着工、整備を求め続けている。

 避難路整備は原発2号機再稼働の賛否に関わらず、住民の総意と言える。町民の命を守り、安心安全を高めるためには欠かせず、引き続き、国や県の動向を注視する必要がありそうだ。

 来年は社会人サッカーチーム、コバルトーレ女川の拠点にもなる女川スタジアムの供用開始も控えている。町一丸で主体的に「楽しい、面白い」まちを目指す気概を持ち続ければ、コロナ収束後のにぎわいも作っていけるだろう。未来を開く鍵は建物でもシステムでもなく、それを動かす人が握っている。【山口紘史】


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