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石巻が育てた天才彫刻家たち 第1部 英吉と達⑫ 私の願い 未来を拓く英吉の道

 私の手元に海の三部作(黒潮閑日、潮音、漁夫像)のポストカードがあります。

 これと同じものが石巻市指定文化財旧観慶丸商店の2階にも展示されています。さらにその横には、第4話で紹介した市制施行50周年記念の潮音のレプリカ像があります。石巻文化センターにあった英吉作品が宮城県美術館に保管されている今、写真や複製ではありますが、石巻で英吉を感じることができる貴重な展示物です。

①旧観慶丸商店

旧観慶丸商店に展示している潮音レプリカ

 この施設では、英吉作品を展示する構想があったようですが、実現には至りませんでした。令和3年に開館する石巻市複合文化施設では、海の三部作をはじめとする英吉作品が常設展示されます。英吉作品と同様、昭和初期に人々の注目を集めた旧観慶丸商店に、海の三部作の等身大パネルのような新たな展示物を置き、複合文化施設と連携すれば、英吉のことをより多くの人に知ってもらえると思います。

差し替え 海の三部作

捕鯨船時代の英吉を伝える「海の三部作への序章」

 つながってほしい施設がもう1か所あります。鮎川の「おしかホエールランド」です。

 なぜ英吉と鮎川?その答えは「海の三部作への序章」(鈴木多利雄著)にあります。

 英吉は捕鯨船日新丸で南氷洋に行きましたが、その前段階として鮎川で捕鯨関係の仕事をしていたのです。英吉と著者の鈴木さんが出会ったのもこの仕事場でした。

 歴史に「もしも」はありませんが、2人が鮎川で親しくならなかったら、「鮎川―南氷洋―海の三部作」の詳細なエピソードが、世に知られることはなかったでしょう。ということで、ここでも海の三部作のパネルや船上でかいたスケッチ等を展示し、南氷洋での捕鯨について紹介してほしいと思います。

 さらに「複合文化施設―市街地―鮎川」の3か所だけでなく牧山市民の森の海の三部作のレリーフ、石巻市総合体育館と大門崎公園の潮音のブロンズ像、石巻駅前の母子像などともつなげれば、「天才彫刻家高橋英吉」のことを多くの人に知ってもらえる英吉の道ができると思います。

駅前母子像 (10)

石巻駅前にある母子像レプリカ

 最近、橋本晶資料(本間英一さん保管)で英吉と達に関する貴重な資料を発見しました。

 英吉の手帳の住所録に小室達の名前とかつて潮音が特選になり挨拶に行ったあの場所、「東京府永福町」(当時)の住所が書かれていたのです。英吉の筆跡を目にして2人の絆の強さを改めて感じました。

 これを含む英吉関係の資料は昭和58年に見つかり、一部が「青春の遺作」に掲載されました。今後、その他の資料から新たな英吉像や交友関係が見つかるかもしれません。その時が来たら、この続きを書きたいと思います。 

※第2部「小室達の足跡」の連載は10月に始まる予定です。

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