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石巻圏摂食嚥下研究会「食べる輪」presents 食べる喜び いつまでも ④

いつまでも元気で食べ続けるために

 皆さん、「誤嚥性肺炎」という言葉を聞いたことがありますか?誤嚥性肺炎とは、飲み込んだ食物が誤って気管内に入ることで引き起こされる肺炎です。

 厚生労働省が発表した人口動態統計月報年計(令和元年)によると、日本人の死因の第5位は肺炎、第6位は誤嚥性肺炎であり、誤嚥性肺炎を年齢階級別に見ると8割は70歳以上の方が占めています。そのことから私たちに身近な病気であるともいえます。

 誤嚥性肺炎の原因となるのが、「摂食嚥下障害」です。ここからは、摂食嚥下障害について話をさせて下さい。摂食嚥下は食物を認識し、口の中で噛み砕き、飲み込める形にまでまとめ、ゴクンと飲み込み胃まで運ぶ一連の動作のことを指します。この一連の動作がうまく機能しないことを摂食嚥下障害といいます。

 摂食嚥下障害になると、窒息や誤嚥、また誤嚥性肺炎を発症して最終的には死に至る危険性があります。摂食嚥下障害の原因となるのは、脳卒中や認知症などの脳の病気やパーキンソン病などの神経の病気が代表的ですが、実は加齢によっても出現します。加齢による筋力低下や食欲不振によりオーラルフレイル※という状態になりやすいからです。また、歯の欠損や唾液量の低下、薬の副作用等も影響を及ぼします。

 このように摂食嚥下障害は誰にでも起こりうるものです。口から食べることを維持していくためには、原因となる病気を予防することや筋力を維持していくことがとても大切です。ぜひ紙面下にある毎月の嚥下リハビリコーナーをご覧頂き、やってみて下さい。また、前回までの記事でお伝えしたように口の中を清潔に保つことや歯を治療することも予防の観点からはとても有効です。

 今後は摂食嚥下障害者への食事や内服の工夫等を様々な職種の視点から紹介する予定となっていますのでご参考にして頂ければと思います。

※オーラルフレイルとは、オーラルは「口」、フレイルは「虚弱」という意味です。つまり、口の機能の低下を意味します。

食べる輪_髙橋優_筆者プロフィール-01

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「言語聴覚士(ST)」って?

 「言語聴覚士」という職業をご存知ですか?ST(Speech-Language-Hearing Therapist)ともよばれる、リハビリ専門職です。1997年に国家資格となり、2020年3月には、全国の有資格者は約3万4千人となっています。

 その名の通り、主に、言葉(話すこと、聞いて理解すること、文字を読み書きすること)や聴覚に問題を抱えた方のリハビリを行いますが、もう一つの大切な仕事が、「摂食嚥下機能」(かんだり、飲み込んだりする機能)のリハビリを行うことです。なぜ、“言語”“聴覚”と名が付いているのに摂食嚥下機能のリハビリを行うのでしょうか?

 実は、話す時と食べる時は、ほとんど同じ部分を使うからなのです。私たちは、のどを使って声を出し、舌やあごを動かすことで様々な音を発音します。食べる時も同様で、舌やあごを使って食べ物をかみ砕き、のどを使って飲み込みます。そのため、舌やあご、のどを使いにくくなることで生じる、「話しにくい」「飲み込みにくい」といった症状に対して、STがリハビリや助言を行います。

 この石巻地域でも、病院や介護施設、訪問リハビリなどでSTは働いています。もし、言葉や嚥下についてお困りのことがあれば、かかりつけ医やケアマネージャーにご相談ください。

食べる輪_山形美怜_筆者プロフィール-01


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食べる輪 Q&A

このコーナーでは、読者の皆さんからお寄せいただいた質問について、「食べる輪」の会員さんに返答をいただきました。

Q. 夫が軽い脳梗塞で入院し、最近退院しました。物を食べさせるがつかえてしまう。総入れ歯で痛がるし、食べさせたいがどうすれば良いでしょうか。(石巻市70代女性から)

A. 食べたいのにつかえや痛みがあり、満足に食べられない。大変なことと思います。はじめに、総入れ歯で痛がるとのことですが入れ歯は合っていますでしょうか?

 食べたいのにつかえや痛みがあり、満足に食べられない。大変なことと思います。はじめに、総入れ歯で痛がるとのことですが入れ歯は合っていますでしょうか? 入院して普段の生活から離れるだけでも筋力は低下します。口の中の筋力が落ちて、入れ歯が合わなくなっているのかもしれません。一度、歯科を受診して頂くと良いかと思います。入れ歯は、咀嚼(食物を噛むこと)以外に発音の明瞭さにも大きく影響します。

 食べる時につかえてしまうことについては、入れ歯が合っていないことで十分に咀嚼が行えず、比較的大きな形のまま飲み込んでいるからかもしれません。対応としては、舌で押し潰せるくらいの軟らかさのご飯やおかずを提供して頂くと良いかと思います。

食べる輪_塩野将大_筆者プロフィール-01

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嚥下リハビリ体操 その4 
嚥下圧※1を高めるトレーニング
前舌保持嚥下訓練

◎効果…嚥下圧が強くなる(=飲み込む力が強くなる)と、ノドに食べ物が引っ掛かりにくくなります。
※1…嚥下圧とは“ゴックン”と飲み込む力のことです。

【方法】
 ① 口をあける
② 舌を軽く出して、前歯で軽く噛む
③ ②の状態のまま唾液を飲み込む
④ 上記を6~8回 3セット実施する

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★唾液を飲み込むのが難しい場合は、飲み込もうとするだけでもノドの筋肉が鍛えられますので、まずは数十秒間、飲み込もうとしてみてください。
★慣れてきたら、舌を少し長く出してみましょう。

■監修

食べる輪_菅あゆみ_筆者プロフィール-01

疑問・質問受け付けます

〒986-0874 石巻市双葉町8-17
(株)石巻日日新聞社 摂食嚥下障害質問係 メール media@hibishinbun.com


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