「老舗の底力と創意工夫」 ③対応 復興策の光明と貫く信念
開発から4年、「金華茶漬け」が年内にも100万食達成といううれしいニュースが入ってきた。明治36年創業の老舗「丸平かつおぶし」=石巻市門脇=の4代目社長阿部真也さん(61)は「今はこれだね」とほんのちょっと笑みをこぼした。
もともとは震災後の復興を模索する中で生まれた仲間との事業。水産加工の10社が共同で「うまいもの株式会社」を立ち上げ、商品を開発してきた。その最大のヒット商品が金華茶漬け。
コロナ禍で、これらの商品が売り上げに貢献している。「今は人との接触が禁じられているから営業にも行けない。だから通販に力を入れている。近くサイトをリニューアルする予定」と阿部社長。
今年新発売したレトルトカレーのシリーズも好調。今後、パスタソースやパエリアも手掛ける予定で、コロナ禍が一気に事業を推し進めるエネルギーに見えるのが皮肉だ。
震災前には東京都内に自社製品のほか石巻の産品をそろえた〝アンテナショップ〟的な店舗を出し、繁盛していた。本社復興優先で撤退せざるを得なかったが、先を見据えた経営戦略は、コロナ後にも生かされるはずだ。
一方、同じ物販でも呉服となると趣が違ってくる。今年創業155周年の「かめ七呉服店」=同市中央=は震災後、廃業の危機から復活。2年前に再開発された新ビルの1階に収まった途端コロナ禍に。
経営者の米倉純一さん(72)、絹枝さん(72)夫婦は「じっと我慢」と笑a顔を絶やさない。5年前に「イシノマキモノブ」を立ち上げて着物ファンを増やす活動を続けてきた。今も20人以上が参加する。地道に着物ファンを育てようとの信念は、コロナ対策にもつながる。
着付けの先生でもある絹枝さんは「みんな着物を着て出かけたいのよ。作った人はなおさら」という。石巻最大のイベント「川開き祭り」が中止になった今夏には、浴衣パーティーを開催した。
かめ七と言えば「かめタオル」が有名。震災直後、大量に余っていた七色ある「かめタオル」をボランティアに配ったことから火がついた。今やヒット商品となり「これで生計たてている」と笑う絹枝さん。夫婦の人柄を慕って人の出入りが多く、アクセサリーや照明器具の展示販売などのスペース貸しが日常化して、コロナ禍の暗いムードはない。
純一さんは「常に遊び心がないと」と屈託がない。「華やかさはなかったけど、ほんとに亀のようにノロノロときた155年」(絹枝さん)。老舗なればこその泰然自若である。【本庄雅之】
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