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海洋異変 資源転換期か 水産この1年 全国行事で魚食普及発信

 今年の水揚げは2年連続で春漁の主役であるコウナゴの漁獲が皆無となり、秋はサンマが振るわず過去最低を更新。コロナ禍で飲食店の消費減も響き、魚価も下がった。一方でイワシやサバは好調となったが、海水温の上昇で暖水性のタチウオなど「新顔」が目を引き、取れる魚は明らかに変化してきた。石巻市では全国豊かな海づくり大会、全国鯨フォーラムがそれぞれ開かれ、全国に魚食文化を発信するなど注目を集める1年となった。

 コウナゴ漁は4月7日に解禁されたが、石巻魚市場への水揚げはなく、同26日には漁の打ち切りが決定。2年連続で漁獲ゼロの異常事態となった。

 コウナゴ漁は3月下旬ごろから仙台湾近郊で始まるが、平成27年に1800トン、29年には2460トンとこれまで数千トン単位であった石巻魚市場での水揚げは令和元年が25トンと急激に落ち込み、昨年と今年はゼロだった。

女川でのサンマ水揚げは過去最低となった

 秋漁の主役となるサンマも水揚げの異変は続いている。全国的に年々漁獲量は減少しており、「サンマの町」である女川町でも9月27日の初水揚げから低調が続いた。11月末までの女川魚市場での水揚げは約1200トンと昨年の半分以下。三陸沖ではほとんど魚群が見えず、遠方の公海上が主な漁場となった。

 どちらも近年問題視される地球温暖化と密接に関係し、海水温の上昇が魚類の来遊に大きな影響を与えているという。近年順調なイワシ、サバに加え、タチウオ、カマスなど暖水性の漁獲が増えており、漁業者や水産加工会社は海の変化に対応を迫られている。

 一方、石巻市が主会場となった全国豊かな海づくり大会は、コロナ禍による1年先送りを経て10月3日に開かれた。「よみがえる豊かな海を輝く未来へ」とテーマに、震災から復興してきた沿岸部、水産業の姿と宮城の魅力的な魚介類を発信。式典はマルホンまきあーとテラス、海上行事は石巻魚市場であり、オンラインで天皇皇后両陛下も臨席された。

 11月17日には鯨文化への理解と捕鯨業の将来を考える「全国鯨フォーラム」が、14年ぶりに石巻市で開かれた。令和元年に日本が国際捕鯨委員会(IWC)を脱退してから、捕鯨基地を有する同市鮎川浜では沿岸の商業捕鯨が再開されている。

 まきあーとテラスであったフォーラムでは全国から捕鯨に関わる人たちが集まり、鯨文化による地域振興、低迷の続く鯨肉の消費拡大で意見を交わした。

 海況変化で水産業を取り巻く環境が大きく変化してきた今年、予測などを見ると今後もこうした状況は続きそうだ。加えて鯨肉を含めた「魚食離れ」も進む中、魚種の転換やそれに伴う加工品の開発など、地域の新しい取り組みも動き出している。【渡邊裕紀】


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