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住民100人のありがとう 支援に感謝 震災十三回忌ミュージカル 犠牲忘れず前を向く

 東日本大震災のあった石巻地方の市民らによる公演「心の復興13回忌ミュージカル100通りのありがとう」が4日、東松島市コミュニティセンターで開かれた。未就学児から80代までが舞台に上がり、12年前の多くの犠牲を忘れず、前を向いて生きていく決意を歌や踊りを交えて表現。スタッフ合わせて100人以上が、世界中から寄せられた支援に対して十人十色の感謝の気持ちを発信した。

 舞台ではそれぞれの被災体験が語られたほか、芝居で消防団の犠牲と活躍を演じ、災害に負けない気持ちを歌と踊りで表した。後半では世界中の言葉でありがとうを伝え、70歳以上の女性たちは楽しく生きることを誓って、小学校以来のスキップを披露。最後は出演者全員が上がって「私たちみんな、俺たちみんなここで生きています」と決意を述べた。

半年余りの練習成果を発揮し、12年の思いを伝えた

 午前と午後の2回公演で、約400席の会場はいずれも満席。涙あり、笑いありの舞台で、多くの人の心を揺さぶった。来場した石巻市北村の佐藤咲子さん(56)は「地元の人たちが力を合わせて行ったミュージカル。前を向いて頑張ろうという力強さに感激した」と話し、東松島市矢本の遠藤芳恵さん(59)は「今日は震災で亡くなった父の誕生日。生きていれば88歳だったと思い、涙が流れた」と言い、震災を忘れない気持ちを改めて心に刻んだ。

 震災から1年後の平成24年3月、東京都の銀座で石巻地方の被災者約100人が披露したミュージカルの流れをくむ公演。当時舞台に上がった人を含む市民有志の実行委員会が十三回忌に合わせた再演を企画し、ゼロから出演者を募って昨年8月に練習を始めた。

 引き続き、各地で数多く市民ミュージカルを手掛けてきた寺本建雄さん(76)=東京都小平市=が演出や作曲など一切を担い、出演者に被災体験談を聞き取りして台本に仕上げた。

 出演者全員が素人の舞台であり、客の多くは震災を知る地元の人たち。せりふに詰まった場面では、客席から「がんばれ」の声が飛んだ。妻や長男を亡くした実行委員長の菅原節郎さん(72)=東松島市新東名=は、公演後、「感謝し、これからも生きていく誓いができた。皆と共有したかったことを伝えることができ、これ以上にない十三回忌になったと思う」とやり切った表情を見せた。

 公演は6月に石巻市内でも予定している。【熊谷利勝】





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