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活動10年やっと石巻で 「地球は円い」コンサート 被災着物再生これからも

 ステージや客席に飾られた色とりどりの布切れで、会場がパッと華やいだ。東日本大震災の津波で泥だらけになった着物を再生したタペストリー2千枚が石巻市に寄贈された2日、チャリティーコンサートがマルホンまきあーとテラスで開かれた。

 コンサートのテーマは「地球は円い 3・11への想い 未来へ」。トップは大道芸人のチャックさん。平成23年8月に東京からリヤカーを引いて石巻にたどり着き、たまたま知り合った「かめ七呉服店」のおかみ、米倉絹枝さんから津波で汚れた着物を渡された。「大道芸の衣装なら使えるんじゃない?」。それが、被災着物を50センチ四方のタペストリーにしてつなぐプロジェクトに発展した。

 チャックさんと旧知の「できることをできるだけプロジェクト」(東京・立川市)の代表しおみえりこさんが、被災着物のアレンジを考案。日本中から、そして世界46カ国から2800枚のタペストリーが集まった。

フィナーレで合唱する出演者

 これまで都内などで開いた支援のコンサートに出演してきたクラリネットの橋爪恵一さん、詩人の谷川俊太郎さんの息子でピアニストの谷川賢作さんらはみな被災した着物生地を使った衣装で登場。活動10年でやっと石巻で実現したコンサートに200人近い観客は、1曲ごとに熱い拍手を送った。

 出演者の中で唯一の石巻市出身者、鈴木佳奈さんは、東京のオペラシアターこんにゃく座を退団後、埼玉県を中心に音楽活動中。以前から知り合いのしおみさんに誘われ、自らもタペストリーを制作した。

 震災当時元気だった父の徳雄さんは4年前に他界。客席では石巻で一人暮らしの母、敏子さん(77)と娘の姿媛さん(13)が見守った。「緊張するといつも父が助けてくれた。きょうも来ていると思う」。そう言って、古里のステージで美声を響かせた。

 最後は、病気のため降板したシンガーソングライター庄野真代さん作詞の「小さなくつ」を全員で合唱。しおみさんは「これで終わりじゃない。タペストリーはまだまだ届く。これからの石巻を見ていかないと」。プロジェクトは次のステージに進む。

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 46カ国から2000枚 被災着物で復興応援旗作製
石巻市に贈呈「震災伝承活用」

 東日本大震災の津波で泥だらけになった着物の生地を2千枚のタペストリーにした作品の贈呈式が2日、マルホンまきあーとテラス=石巻市開成=で行われた。額縁に入った記念のタペストリーと目録を受け取った石巻市の齋藤正美市長は「応援旗として、震災の伝承に役立てたい」と感謝の言葉を述べた。

 寄贈されたタペストリーは、これまで寄せられた約2800枚のうちの2千枚。被災着物をアレンジした50センチ四方の布が安全ピンでつながれ、大ホールのステージや客席に飾られ、観客の心を浮立たせた。

タペストリーの目録を受け取った齋藤市長

 運動を主導したのは東京・立川市に本拠を置く「できることをできるだけプロジェクト」(しおみえりこ代表)。平成23年、被災地の学校に楽器を届ける活動をしていたしおみさん、東京から16日間かけてリヤカーで来た大道芸人のチャックさん、「かめ七呉服店」の米倉純一、絹枝夫妻が石巻市内で偶然出会って、被災着物の再生の物語が始まった。

 運動は瞬く間に広がり、日本全国はもちろん世界46カ国からタペストリーが寄せられた。ホールのどん帳にとの案もあったが、まきあーとはどん帳のない設計だったため、活用方法は市に委ねた。

 日本料理屋「八幡家」のおかみで、受け入れ態勢を整えた「石巻チクチク倶楽部」の阿部紀代子さん(60)は「たくさんの方の思いを受け止めることができた。交流人口が増えるきっかけになればいい」と話していた。【本庄雅之】



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