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当たり前の幸せ感じて はなちゃんのランドセル 大川小から門脇に出張展示

 東日本大震災から12年4カ月となった11日、石巻市の大川小学校を襲った津波で行方不明となった〝はなちゃん〟のランドセルの展示が、民間の伝承交流施設「MEET門脇」=石巻市門脇町=で始まった。震災遺構大川小敷地内の大川震災伝承館に展示されていたもので、「多くの人に見てもらいたい」と家族が出張展示を希望した。

 展示されたのは震災当時4年生だった鈴木巴那さんの赤いランドセル。中に入っていたノートや教科書、図書室で借りた本もそのまま展示している。

 6年生だった兄の堅登さんは遺体で見つかり、巴那さんは行方不明のまま。泥だらけのランドセルは震災直後に大川小の屋根の上にあった。本やノートもきれいな状態なのは、いつでも使えるように、祖母が1枚1枚、丁寧に洗って乾かしていたためだ。

ランドセルを見つめる母の実穂さん

 大川小では児童70人が犠牲になり、4人が今も見つかっていない。ランドセルに並べて展示してある日程や読んだ本の名を記すカードには、巴那さんが10歳を迎えるはずだった3月22日に丸がついていた。

 「いってきますと出かけて二度と会えなくなったとしたら」。出張展示に当たって両親は「このランドセルを通じて、当たり前の生活がいかに幸せで奇跡的なことであるのか、わずかな時間でも自分事として感じていただければ」とメッセージを寄せている。

 ランドセルはMEET門脇で年内まで展示し、大川に戻る。出張展示には、いろいろな所に行ってみたかったであろう子どもたちの思いも形にした。初日にMEET門脇を訪れた母の実穂さんは「校外学習のつもりでの出張展示。亡くなった子どもたちの命が意味のないものになってしまわぬよう、大川小に足を運び、命に向き合ってほしい」と願った。【熊谷利勝】





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