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命の大切さ 私が伝える番 石巻専修大 小指さん 10年前、寄り添う教員に憧れ

 本年度の県教員採用試験に合格し、春から小学校教員として教壇に立つ石巻専修大学人間学部人間教育学科の小指有沙さん(22)は18―20日、母校の石巻市立大街道小学校で教職体験し、心構えを学んだ。東日本大震災が起きた当時は同校6年生だった小指さん。「私の震災経験も伝えながら、命の大切さを教えていきたい」と話していた。【山口紘史】

 小指さんは大街道小の教室で同級生とともに大地震を経験。家族は無事だったが、南浜町にあった自宅は流失した。市外で仕事をしていた母親が迎えに来るまでの3日間、教室で避難生活を余儀なくされた。

石巻専修大4年小指さん 春から小学校教員に 母校で教職体験 (1)

教員の心構えを学ぶため母校・大街道小で教職体験した小指さん

 そこで幾度と目にしたのは、不安を抱える児童たちの話を親身に聞き、心のケアに奔走する教員の姿。小指さんは「先生たちが『大丈夫だよ』と私たちに優しく寄り添う姿が目に焼き付いている。教員の仕事に憧れを抱くきっかけになった」と振り返る。

 蛇田地区の復興公営住宅に移り住んだ小指さんは蛇田中、石巻好文館高を卒業後、石巻専修大に進学。教員になるための勉強に精を出した。「教授や友人との出会いに恵まれ、支えられ、充実した時間を過ごせたと思う」と語った。

 4年次はコロナ禍で思うような授業が受けられず、教員採用試験の実施見通しも立たないなど不安の日々を過ごしたが、自主学習は怠らず続けた。県の教員採用試験は無事に昨年7―9月にあり、小指さんは合格を手にして夢を実現した。

ノート用石巻専修大4年小指さん 春から小学校教員に 母校で教職体験 (2)

 そして今月、教員の心構えを養うため母校で教職体験し、全学年の授業風景を見学したほか、教材作成の補助にも携わった。「教壇に立つことを想像しながら指導法を学べて有意義な日々だった。子どもたちから『小指先生』と呼ばれたのがうれしかった」とはにかんだ笑顔を見せた。

 あの日から間もなく10年。復興するまちとともに学生時代を歩んできた小指さんは「育んでくれた地域と支えてくれた多くの人がいたからこそ、今の私がある」と感謝。その上で「経験した10年間を子どもたちに伝えながら未来を担う人材を育てたい。それが、私ができる地域への恩返し」と話した。


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