見出し画像

休漁期にキクラゲ栽培 石巻市小渕浜 阿部水産 漁師の挑戦

販路拡大へ2年目の夏

 石巻市小渕浜にある阿部水産(阿部祐二社長)は、ワカメやカキなどの休漁期を利用して昨年からキクラゲの栽培と販売を展開している。市内では初の取り組みであり、全国的にも漁業者のキクラゲ栽培は珍しい。今年で2年目となり、水産業の閑散期となっていた夏季にできる副業として注目を集めている。【渡邊裕紀】

 同水産でのキクラゲの栽培は、主軸となるワカメやカキの繁忙期が過ぎる7-9月にできる仕事としてスタートした。同市小渕浜は、震災の津波で大きな被害を受け、同水産でも壊滅的な打撃を受けた。ボランティアの支援を受ける中、栃木県那須郡でキクラゲを栽培する「ともちゃん農園」とつながりができたことがきっかけ。

小渕浜の金華キクラゲ 地域の特産品目指して  1

阿部水産の阿部祐二社長(上段左)と従業員

 小渕浜では、夏場にアナゴ漁などを行って生計を立てている同業者が多いが、高齢化率が高く重労働となる漁の代替として比較的簡単な作業のキクラゲの栽培に目を付けた。

 石巻市では唯一の栽培場であり、漁師が作る「金華キクラゲ」として販売。希少価値の高いアラゲキクラゲの菌床を取り寄せて栽培し、コリコリとした食感とクセのない味から刺身や天ぷらで食される。完全無農薬の品質で特に白色のキクラゲは流通量が少なく、関東圏を中心に人気が高い。石巻市ではウジエスーパーやいしのまき元気いちばなどで取り扱っている。

小渕浜の金華キクラゲ 地域の特産品目指して 2

キクラゲの菌床は温度や湿度の管理が品質を決定する重要な要素

 昨年は1千個の菌床で生や乾燥キクラゲを生産。今年は菌床を1300個に拡大したが、新型コロナウイルスの影響で試食販売会が行えず、アピールの場が失われた。

 事業の継続に暗雲が立ち込めたため、阿部社長はインターネットを通じて資金を募るクラウドファンディングに着目。支援の目標額を達成し、同時にキクラゲを通じた交流の輪も広がった。

画像3

おすすめの食べ方はコリコリ食感が楽しめる刺身

 阿部社長は「採算性を高めていくことが今後の課題。まだまだ販路が狭いので栽培を継続し、地域の新しい特産品として定着させたい」と話す。妻の幸恵さん(53)も「牡鹿半島を盛り上げ、観光につながっていけばうれしい。おいしさを多くの人に伝えていきたい」と郷土愛をにじませる。


現在、石巻Days(石巻日日新聞)では掲載記事を原則無料で公開しています。正確な情報が、新型コロナウイルス感染拡大への対応に役立ち、地域の皆さんが少しでも早く、日常生活を取り戻していくことを願っております。



最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。