見出し画像

トラヴィス現役引退へ 若山さんと最後の講演 女川小 盲導犬授業

 「盲導犬とふれ合おう」と題した特別授業が20日、女川小学校(熊谷雅幸校長)の3年生39人を対象に行われた。石巻市市民公益活動団体「一歩を楽しむ会」代表で視覚障害者の若山崇さん(54)=同市桃生町寺崎=が、パートナーの盲導犬トラヴィス(9)と共に同校を訪れ、盲導犬の役割や視覚障害者との関わり方を説明した。トラヴィスは年齢に伴い11月で盲導犬を引退するため、若山さんと共に講演の舞台に立つのはこの日が最後となる見通し。

 国内では3月末現在で836頭の盲導犬が活躍しており、県内は21頭。石巻市内はトラヴィスが唯一で、若山さんとは平成27年から共に生活している。

 若山さんは10年前、視力低下や視野狭窄(きょうさく)が伴う難病「網膜色素変性症」と診断され、徐々に目が全く見えない状態となっていった。

若山さん(左)やトラヴィスと交流を図る児童

 「盲導犬が貸与されるまで外出もできなかった」と若山さん。トラヴィスの役割は「屋外では曲がり角や障害物、小さな段差も行動で教え、ハーネスを通じて伝わってくる。私も頭の中に〝地図〟を描きながら歩き、目的地にたどり着くことができる」と話し、強い信頼関係で結ばれていることを強調した。

 白杖を持った視覚障害者をまちで見かけた際の声掛けの方法も伝授。「何かに困っているようだったら『どうかしましたか』『お手伝いしましょうか』などの優しい声掛けをしてほしい。誘導する際はひじの上をにぎってもらったり、肩の上に手を添えてもらったりして、声掛けしつつ一緒に歩いてほしい」と説明した。

トラヴィスと共に若山さんの歩行誘導を体験する児童

 実際に代表児童がトラヴィスと共に若山さんを誘導し、歩きまわる体験を行った。八巻英久君(8)は「目の不自由な人を見かけたら、今日習ったことを思い出して優しく接したい」と話していた。

 盲導犬は10歳前後でパートナーと別れ、引退することになっている。トラヴィスも11月9日で10歳(大型犬の場合、人間換算で70歳以上)になるため、同6日で引退。貸与元の仙台訓練センターに戻った後、引退犬飼育ボランティアの家で余生を過ごす。若山さんの元には同センターから別の盲導犬が貸与され、新しい生活を始める。

 他から依頼がなければ、トラヴィスと共に講演するのは今回が最後。若山さんは「トラヴィスがいてくれたからこそ、私はいろんな経験ができた。何気ない道を共に歩いた8年間という時間が宝物。きっとお別れの日は大泣きしてしまうだろうが、それをトラヴィスへの感謝の証しにしようと思う」と話していた。【山口紘史】




最後まで記事をお読みいただき、ありがとうございました。皆様から頂くサポートは、さらなる有益なコンテンツの作成に役立たせていきます。引き続き、石巻日日新聞社のコンテンツをお楽しみください。